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(MCU)『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』 の予告編に、ハリソン・フォードが登場していると話題だ。『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』の大スターがついにMCU入りを果たすとあって、映画ファン注目の大作となりそう。この記事では、ハリソンが演じるキャラクターとその背景、日本語字幕予告編と原語版との違い、ストーリーの考察についてまとめる。

ハリソン・フォードが演じるのはサディアス・“サンダーボルツ”・ロス。公式の日本語プレスリリースでは、「これまではアメリカ軍将校だったロスが、本作では遂に大統領にまで上りつめ、“キャプテン・アメリカ”と対峙する」と紹介されている。

冒頭の対面シーンから注目してみよう。日本語字幕版ではサムのセリフが「正直 新しい自分にまだ戸惑ってます」と、ロスが「気にするな すぐに慣れる」との訳で表示されるが、これは原語とは少し差異がある。忠実に訳すと、サムは「正直、新しい見た目にまだ慣れません(I have to admit, I'm still gettin' used to the new look)」と言っており、「新しい見た目(the new look)」が自分のことであるとは明言していないのだ。

これを受けてのロスの「気にするな すぐに慣れる」は大きな違いがあって、原語では「ヒゲを失うか、選挙で負けるかだと言われてね(They said lose to mustache or lose the election)」と言っている。要するに彼は、ヒゲを剃った方が見た目の印象が良くなり、大統領選に有利ですよと、側近にでも助言されたのだろう。

つまりサムの言った「新しい見た目」とは、新しくキャプテン・アメリカを襲名した自分自身への戸惑いではなく、久々に再会したロスがヒゲを剃って別人のようになっていたことに対するものである。

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無論、これはメタ発言でもある。これまでロスを演じたウィリアム・ハートが2022年に逝去したことによって、本作からはハリソン・フォードが代役を務めている。「新しい見た目」にはこれもかかっている。物語内では、ヒゲを剃ったことでイメチェンを果たした、ということで処理しているのであろう。

これから合流するデッドプールのような例外を除いて、最近のMCUではドラマ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」(2022)でも役者交代に関するメタ発言が見られた。ハルク/ブルース・バナー役が映画『インクディブル・ハルク』(2008)のエドワード・ノートンから現在のマーク・ラファロに交代になったことについて、同シリーズの第2話では「今の僕は別人だ、完全にな(I'm a completely different person now. Literally.)」と言及される。

ロスはでアメリカ陸軍将軍として初登場。実験によって予想外のうちに誕生したハルクを追い詰めたが、これは自ら主導したスーパーヒーロー計画の実験失敗の事実を隠蔽したかったからだ。

続く『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)では国務長官に出世。アベンジャーズを“国境を侵し、後先考えずに自分の正義を押し付けている危険集団”と見做し、国連委員会の管理下に置く「ソコヴィア協定」を持ちかけた。

『 シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で独占配信 © 2024 Marvel

つまり彼の人生にとって、スーパーヒーローとは常に厄介ごとの種なのだ。このことは、ソコヴィア協定を持ちかけた際に彼が言い放った「ソーとバナー博士は今どこにいる?30メガトンの核爆弾が二つも行方不明なんだぞ」というセリフによく現れている。彼は地球のために戦ったヒーローたちを、危険な兵器か何かとしか考えていないのである。

この時サムは、自由意志を尊重するスティーブ・ロジャースと共に反協定派についた。サムは一時的に逃亡者にまでなり、ロスによって難攻不落のラフト刑務所に収監されるまで至っている。

このような経緯があるのだから、本作予告編で「キャプテン・アメリカを再び軍に迎えたいと思っている」と持ちかけられた際、サムは「今更、一体どういう腹づもりだ」と疑っただろう。すぐさま「意見の相違があった場合は?」と尋ね返しているが、これは『シビル・ウォー』のことがあったからだ。

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「軍に迎え入れる」とは聞こえがいいかもしれないが、米大統領として国家権限の全てを手にしたロスは、キャプテン・アメリカを再び管理下に置きたいということであり、これは要するに「ソコヴィア協定」を再び結ぶようなものである。これまでアメリカは、(2010)のウォーマシン(アイアンパトリオット)、「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」(2021)のU.S.エージェント/ジョン・ウォーカーと、政府主導のスーパーヒーロー管理にことごとく失敗している。

スティーブのサイドキック(相棒)であったサムにとって、初めて経験する重責がのしかかる。キャプテン・アメリカ襲名の際にも相当悩んでいたが、それは半ば個人的なこともでもあった。一方、今回の大統領からの打診は個人を超越した判断が求められる。こういう時に、彼はもうスティーブを頼ることはできないし、盟友のバッキーも本作には登場しない。

これからロスはサムを散歩に誘い出し、この協定の概要を話すのであろう。続くシーンを見る限り、サムは大統領の提案をひとまず受け入れるようである。果たして大統領の狙いは?

ヒントとなるのは、したように、日本政府の関与。政治スリラー要素も期待される本作では、日米関係が一つの鍵となりそうなのだ。

『エターナルズ』(2021)で描かれたように、MCUの正史世界でもアメリカ軍は日本に原子爆弾を落としており、その後の日米関係は基本的に現実世界と同じように進んだと考えられる。しかし、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)サノスの指パッチンによって世界情勢は大きく様変わりしており、日本の立ち位置が劇的に変化している可能性もある。

映像では、日本の総理大臣と思しき人物(平岳大が演じている)が、キャプテン・アメリカを挟んでロス米大統領と並んだスリーショットもある。なぜ日米は、キャプテン・アメリカを通じた和親をアピールしているのか?そしてロスは、毛嫌いしていたはずの超人に、レッドハルクとしてなぜ自ら化すことになるのか?

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『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は2025年2月14日(金)全国劇場公開。

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