特殊な外科処置と「本人の神経系と接続して動かせる義足」を組み合わせることで脚を失った人でも自然な歩行が可能になる
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事故や病気で脚を切断した人にとって、自然に立ったり歩いたりできる義足は生活の質を左右する重要なものです。新たにマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、特殊な外科処置と「自分の神経系で動かすことができ、神経フィードバックも得られる義足」を組み合わせることで、患者が従来の義足よりも自然に歩けるようになったと報告しています。
Continuous neural control of a bionic limb restores biomimetic gait after amputation | Nature Medicine
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A prosthesis driven by the nervous system helps people with amputation walk naturally | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2024/prosthesis-helps-people-with-amputation-walk-naturally-0701
Bionic legs plugged directly into nervous system enable unprecedented 'level of brain control' | Live Science
https://www.livescience.com/health/surgery/bionic-legs-plugged-directly-into-nervous-system-enable-unprecedented-level-of-brain-control
記事作成時点で最先端の義足を使えば、脚を切断した人であってもかなり自然に歩行することができますが、実際の脚と同様に神経系で制御することはできません。その代わりに、事前に定義された歩行アルゴリズムを使用して脚を動かすロボットセンサーとコントローラーに依存しています。
手足の運動は主となって動く「主動作筋」と、それとは反対の動きをする「拮抗筋」が交互に伸びたり縮んだりすることで制御されています。しかし、四肢を切断した患者ではこれらの対になった筋肉の相互作用が中断され、神経系が筋肉の位置や収縮速度といった感覚情報を得にくくなるため、義肢を操るのが難しいとのこと。
この問題を解決するため、MITの研究チームはブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究者と共同で、「agonist-antagonist myoneural interface(AMI:主動作筋-拮抗筋神経系インターフェース)」という外科処置を開発しました。AMIは切断された四肢の主動作筋と拮抗筋の先端を接続し、残った手足の内部で動的にコミュニケーションを取れるようにするというものです。
2021年の研究では、AMIを受けた患者が通常の処置を受けた患者よりも正確に筋肉を制御でき、筋肉の萎縮が少なくなり、患部の痛みも軽減されたことが確認されました。また、残った筋肉が無傷の手足と同様の電気信号を生成することもわかったとのことです。
そこで研究チームは、AMIを受けた患者にみられる電気信号のフィードバックが、神経系と接続して動かせる義足を操る役に立つのではないかと考えました。新たな実験では、AMIを受けた7人と従来の膝下切断手術を受けた7人の合計14人の被験者を対象に、「足首に動力があり、すねとふくらはぎの筋肉からの筋電図信号を感知する電極を備えた義足」を使って歩いてもらいました。
実際にAMIを受けた被験者が義足を使って階段を上り下りする様子は、以下の動画で確認できます。
Helping people with amputation walk naturally - YouTube
義足を付けた被験者が、テスト用の短い階段の前で直立しています。
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一歩踏み出して、まず義足の方を次の段にのせました。
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そのまま義足を踏み出して、次の段に脚を運びます。
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モーター音がする他は普通の人と何ら変わりない様子で階段を上っていきます。
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最上段でくるっとターンする様子にも危うさはありません。
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義足であることを感じさせないスムーズさで階段を下りていきました。実験では階段の上り下り以外にも、平地を歩く・スロープを上るまたは下がる・障害物を避けながら歩くといったテストを行いました。その結果、すべてのタスクにおいてAMIを受けた被験者は脚を切断していない人とほぼ同じ速度で歩き、「障害物を乗り越える際に義足のつま先を上に向ける」といった自然な動きを再現し、健常者と同じ力で義足を踏み出せたとのことです。
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研究チームが注目している点のひとつに、AMIによって提供される感覚フィードバックの量は健常者の20%未満にとどまったものの、義足を用いて自然な歩行が可能になったという点があります。論文の筆頭著者であるヒョンウン・ソン氏は「この研究における主な発見のひとつが、切断された手足からの神経フィードバックを少し増やすだけで、生体の神経制御能力を大幅に回復できるという点です。これにより、歩行速度を直接神経で制御して、異なる地形に適応し、障害物を避けることが可能になります」と述べました。