知らず知らずのうちに「老害化」してしまう人の特徴を解説します(写真:maroke/PIXTA)

「ついつい『いや』と答えることがある」「気がつくと自分の話をしている」「いつの間にか大声になっていることがある」。どれかに心当たりがあるあなたは、立派な「老害」予備軍かもしれません。

ですが、ちょっとした振る舞いや気の持ち方をあらためるだけで、「老害の人」ではなく「幸せな老人」になることができると、医学博士で医師の平松類氏はいいます。まずは、自分では気づきにくい「老害」の兆候をつかむことからはじめてみましょう。

※本稿は平松氏の著書『「老害の人」にならないコツ』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

「同世代の変化」が教えてくれる老害の可能性

「老害」という概念は、イコール世代間ギャップではありません。この記事を読んでいる方には、世界保健機関(WHO)が定義する「高齢者=65歳以上の人」も多いかと思います。

あなたと同世代の配偶者、親戚、友人、同僚、社会コミュニティの仲間などに、「もうろくしてきたな」とか、「年をとって頑固になった」などと切に感じる人はいないでしょうか。それは、あなたがその人のことを「老害」認定しているのと同義になります。

人間というものは、自分の体の機能低下にはなかなか気づけない一方、他人の変化にはよく気づくものですからね。つまりこれは、あなたも同世代の他人から「老害」とみなされている可能性もあるということを意味します。この構図が、時にやっかいな状況を生んでしまうのです。

「〇〇さんも年をとったよな。以前はそんなことしなかったよ(笑)」

同世代の友人から、冗談っぽくこんなことを言われたシーンを想像してみてください。おそらく、「あなたほどではないよ」と心の中で思ったり、「いやいや、あなたのほうがひどいよ」と言い返したくなったりするでしょう。このときの対応次第では、結果的にもめ事に発展したり、最悪の場合は絶縁したりということにつながりかねません。


(出所:『「老害の人」にならないコツ』より)

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

下の世代とは、そもそもかかわる機会が少ないため、溝を埋める努力をしなくても生活に支障はないかもしれませんが、同世代と溝ができてしまったら、そうはいかないでしょう。

年齢を重ねると、参加しているコミュニティが少なくなり、友人関係や仲間関係もかなり限定されてきます。このように、身体的な機能低下が原因で、コミュニティ内のメンバーとの認識になんらかの齟齬が生じることは、できれば避けたいですよね。

そのコミュニティからはじき出されてしまったら、精神的に大きなダメージを受けるでしょう。同世代だから、お互い気持ちをわかってくれている――これは大きな間違いです。高齢者ほど、同世代間に誤解や齟齬が生まれやすいことを、念頭に置いておくようにしましょう。

加齢とともに上がっていく「老害レベル」

年をとると誰もが「老害」と言われるようになる可能性があるということに、気づき、受けとめる姿勢になることが何よりも大切です。

「自分はまだまだ若いから大丈夫」

これは禁句と考えてください。老害力は誰にでも備わっており、加齢とともに老害レベルが上がっていくということを、決して忘れないようにしましょう。

老化は何も悪いことではありません。それをどうとらえ、どう対処していくかによって、あなたの人生は大きく変わっていくのです。行動ひとつで、若い世代からも、同世代からも、きっと老害とは思われなくなるでしょう。

誰もが老害になる可能性があるわけですが、もちろんそれは一律同じではなく、なりやすい人とそうでない人がいます。その違い、知りたいですよね。

エビデンスがしっかりしているわけではなく、あくまで私の経験にもとづく結論ですので、その点はあらかじめご承知おきください。ですが、だいたい合っていると思います。

まず、若いころから対人トラブルをよく起こしてきた人は、老害になりやすいです。とくに、性格がせっかちだったり、怒りっぽかったり、神経質だったりすると、その傾向は強くなります。あと、正義感の強すぎる人も、ここに含まれますね。

年をとると感情的になりやすくなり、このタイプの人たちは相手の行動が気に入らなかったり、間違っていたりすると感じると、すぐに態度や口に出してしまうからです。

年齢を重ねて、もともと持っている性格が先鋭化してしまうんですよね。
自分では「このタイプには該当しない」と思っていても、若いころに誰かと口論をしたり、お店のスタッフや会社の部下を一方的に注意したり、というような経験に心当たりのある人は要注意です。

自分は高いレベルの老害力を秘めていることを認め、警戒を怠らないようにしましょう。

なぜ女性は大きな老害トラブルになりにくいのか

性別で見ると、「老害」と呼ばれるのは女性よりも男性のほうが圧倒的に多いことは間違いありません。おそらく、男性のほうが何かにつけてプライドが高く、「他人の目」を気にするからでしょう。いい格好をしたい。あるいは、馬鹿にされたくない。そういう思いが、すぐにクレームをつけるなど、老害的行動をとる元凶になります。

女性よりも男性に多いというのは、おそらくみなさんの認識と一致するのではないでしょうか。体感的に、誰もがそういう印象を持っていると思います。

私はこの背景に、女性の恐れ知らずなところが男性よりも社会的に許されやすい風潮があることが、大きく影響していると考えます。

懐かしい言葉でいうと、「オバタリアン」がその象徴です。なぜか、中高年女性の"痛い行動"は許容される土壌があるんですよね。だから女性の場合、大きな老害トラブルになりにくい(逆にいうと男性のほうがなりやすい)のではないでしょうか。

とはいっても当然、女性にも老害とみなされる人はいます。お店のスタッフにクレームを入れる場合、男性は大声でまくし立てるタイプが多いですが、それに対し女性は粘着質といいますか、時間をかけて同じ主張を続けるタイプが目立ちます。

男性に多いのは精神的に圧をかける老害のパターン。

女性に多いのは相手の時間を奪う老害のパターン。

同じシチュエーションでも、このような質の違いがあるという印象です。あくまでこれは私見であり、平均的な話になりますが。

現役時代に優秀だった人ほど「老害化」の傾向が

もうひとつ、「とても個人的な経験上の話」という前置きをしつつ、取り上げておきたいのは、現役時代に「先生」と呼ばれる職業に就いていた人は、若い世代からも同世代からも、老害扱いされやすい気がします。

教師、医師、弁護士(をはじめとする士業)、政治家などがそうです。もちろん、全員が全員ではありません。もろに該当する読者は、気を悪くしないでください。全体的な話として、日々多くの高齢者に接している身として、そういう傾向があると感じるのです。

なぜ「先生」と呼ばれていた人(おそらく今も呼ばれている人)は、老害になりやすいのか。

私が考える理由は、優秀な人が多いからです。小さいころから勉強ができて、ものごとを論理的に説明でき、豊富な知識を持っていて、周りから敬われてきた人が大半を占めるでしょう。そしてその経験が、自信と有能感を生みます。

それは決して悪いことではありませんが、万能ではありません。どなたにも、得意分野と不得意分野があります。にもかかわらず、「自分はたいていのことは知っている」となりがちなのです。

それがエスカレートすると、必要以上に自分の持っている知識をアピールしたり、誰彼構わず教えてあげようとしたりすることにつながり、その行動が老害力をさらに高めてしまうのです。

私も"元先生"の患者さんを多く診てきましたが、なかにはこちらが説明するのをさえぎって、「けっきょく、こういうことですよね」と先に結論を述べようとする人がいます。あたかも医学的な知識があるかのようにふるまうのですが、間違っていたり、論理破綻していたりして、対応に困ることもしばしばです。

私がこういう患者さんを老害扱いすることはありませんが、場所と相手が変われば、そうみなされてしまうこともあるでしょう。

重ね重ね断っておきますが、「先生」と呼ばれる職業に就いていた人は、全員が危険な老害予備軍であるといいたいわけではありません。みなさんにとって興味深い話になると思ったので、経験上そういう傾向がありますよ、ということを、こぼれ話的に紹介させていただきました。

潜在的な「老害化」の危険性をチェック!

「私は温厚な性格だし、女性だし、元先生でもない。だから心配する必要はないわね」

ここまで読み進めてきて、このように思った人もいるでしょう。でも、油断はしないでください。


これらがすべてではなく、その人の属性、人間関係、シチュエーション、行動などを細分化していけば、温厚な性格の人でも、女性でも、元先生でなくても、老害認定される可能性はおおいにあります。

そこで、あなたが老害化する(もしくはすでに老害になっている)可能性を測る、簡単なチェックリストを用意しました。

該当する項目が多ければ多いほど、危険(=老害レベルが高い)と判断してください。なんらかの対策を講じないと、周囲の人と良好な人間関係を築くのが難しくなります。

「あ、自分はヤバいかも」と思った人はもちろん、そうでない人も一定以上の年齢になったら誰もが老害になるかもしれないので、他人事ではなく自分事としてとらえていただけると幸いです。


(出所:『「老害の人」にならないコツ』より

(平松 類 : 眼科医/医学博士)