中国ディスプレーパネル大手「TCL」の業績上向く
TCLはテレビ用の大型パネルで世界第2位のシェアを持つ。写真はアメリカのテクノロジー見本市「CES」に出展した同社ブース(TCL華星光電技術のウェブサイトより)
ディスプレーパネル市場の需給バランス改善とともに、パネルメーカーの業績が上向きに転じている。
中国第2位のパネルメーカー、TCL華星光電技術(CSOT)の親会社であるTCL科技集団は4月30日、2023年の通期決算を発表。それによれば、同社のディスプレーパネル事業の売上高は836億5500万元(約1兆8092億円)と前年比27.3%の増収を記録した。
TCL科技集団は、ディスプレーパネルのほかにも太陽光パネルやシリコン材料などの事業を傘下に持つ。今回発表した通期決算に関しては、ディスプレーパネル事業の復活が業績全体を押し上げる格好になった。
同社の総売上高に占めるディスプレーパネル事業の比率は、2021年には約5割を占めていたのが、2022年は39.5%に急低下。しかし2023年は48%に上昇し、2年前の水準に戻りつつある。
需要に見合った生産堅持
2022年の業績悪化は、スマートフォン、パソコン、テレビなどの需要が世界的に伸び悩む中でパネルメーカーの生産能力が増大し、需給バランスが崩れたためだった。
市場価格の大幅な値下がりが響き、TCL科技集団のディスプレーパネル事業は2022年の売上高が前年比25.5%も縮小。損益は赤字に転落した。
それが1年で復活を遂げたのは、市場全体の底入れに加えて、無理な生産拡大に走らなかった経営判断も大きい。
「2023年は需要に見合った生産を堅持した。その結果、CSOTの業績は四半期ごとに改善し、7〜9月期には黒字に転換した」。TCL科技集団の高級副総裁(副社長に相当)を務める廖騫(りょう・けん)氏は、決算説明会でそう述べた。
CSOTはもともと、テレビ用の大型液晶パネルに強みを持つ。TCL科技集団の決算報告書によれば、同社の市場シェアはテレビ用パネルでは世界第2位、55インチと75インチのパネルでは世界首位だという。
スマホ用の小型パネルでは、CSOTは有機EL(OLED)を主力にしており、2024年1〜3月期の市場シェアは世界第3位だった。
TCLはパソコン用の中型パネルでもシェア拡大をもくろむ。写真は同社が開発した14インチのOLEDパネル(TCL華星光電技術のウェブサイトより)
同社はさらに、パソコンやタブレット用の中型パネルでもシェア拡大の機会をうかがっている。TCL科技の経営陣は決算説明会で、「この分野で世界の上位2社に入りたい」と意気込みを示した。
太陽光パネル事業は苦況に
ディスプレーパネル以外の事業を含めた2023年のTCL科技集団の総売上高は1743億6700万元(約3兆7710億円)と、前年比4.7%の伸びにとどまった。しかしディスプレーパネル事業の黒字化により、純利益は22億1500万元(約479億円)と前年の8.5倍に増加した。
同社の2022年の決算では、ディスプレーパネル事業の落ち込みを太陽光パネル事業の成長が補った。ところが、今や状況は真逆になっている。
太陽光パネルの中核子会社、TCL中環新能源科技の2023年の売上高は591億4600万元(約1兆2791億円)と、前年比11.7%減少した。その主因は、中国の太陽光パネル業界が需要の伸びを上回るペースで生産能力を拡大し、過当競争に陥ったことだ。
「太陽光パネル業界はサプライチェーンの川上(の原材料)から川下(の完成品)に至るまで、どこを見渡しても赤字だ」。TCL中環新能源科技の責任者は決算説明会で、目下の厳しい実態をそう語った。
(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は4月30日
(財新 Biz&Tech)