市川染五郎

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 市川染五郎が20日、都内で行われた映画『鬼平犯科帳 血闘』(公開中)公開御礼舞台あいさつに登壇。父・松本幸四郎から寄せられたメッセージに感激の表情を見せた。

 本作は時代小説家・池波正太郎の代表作「鬼平犯科帳」シリーズを、十代目・松本幸四郎主演で新たに映像化した時代劇シリーズの劇場版。悪党たちから「鬼平」と恐れられる火付盗賊改方長官・長谷川平蔵(松本)の過去と現在を交錯させながら、鬼平誕生の物語が描かれる。イベントには中島瑠菜に加え、テレビスペシャル「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」に出演した阿佐辰美、菊池日菜子も登壇した。

 主演の幸四郎の息子である染五郎は、本作で若き日の鬼平こと長谷川銕三郎を演じる。染五郎は「小さい頃はリアルタイムで、テレビ放送の時代劇を見る環境ではなかったですけど、一番最初に衝撃を受けた時代劇は萬屋錦之介さんの『反逆児』(1961年)という作品でした」と時代劇との関わりに触れ、「それを見た時にこの熱さは何なんだって思ったんです。今回、あの時代の熱さをお見せしたいということで演じました」と撮影前の心境を振り返る。

 染五郎は撮影が行われた松竹撮影所に思い出があったことも明かし、「約10年前にちらっと父の時代劇のドラマに出させてもらったことがあって、その時に松竹撮影所を伺ったんです。でも10年以上ぶりだし、チームもあの時とは違うし、記憶も断片的で、どういう空気なんだろうって不安でしたが、同じチームではないのに『お帰りなさい』と言っていただけているような温かさがありました。居心地が良かったです」と話す。

 途中、父の幸四郎からのメッセージも紹介され、「銕三郎に愛情を降り注いで演じた染五郎、頼もしかった」という短いメッセージに染五郎は「もうちょっと書いて欲しかった」と照れ笑い。「でも嬉しいですね。父が主役で、父の挑戦に参加させてもらうスタンスで参加していました。父の力になれればと考えていました」と親子そろっての出演に感慨深げ。

 また作品について「人と人の間に生まれる人間ドラマを描いた作品。とにかく映像作品として映像の美しさ、照明、風景の奥行き、日本人ならではの美的感覚、美学が詰まった作品。本当に職人芸の結晶のような作品」と自信を見せ、「どの年齢層の人にも響くと思います。歌舞伎もそうですけど難しいイメージを持たず、まずは見ていただいて、いろんなことを感じていただきたい」と呼びかけていた。(取材・文:名鹿祥史)