衆院島根1区補選で落選し、支持者に頭を下げる自民・錦織功政氏(右)。「国民は“自民ノー”で固まってきてるから、ボロ負けする」(泉氏)(写真・共同通信)

 2023年4月30日、私は12年間務めた明石市長の任を終え、直後の5月からこの連載をスタート。それからちょうど1年がたち、私なりに思うところが出てきた。そこでいったん、今回をもって休載させていただくことに決めた。

 読者の方々は「えっ、なんでやめるの?」と驚くかもしれない。だが、私にとっては普通のこと。大学を卒業して入ったNHK、その後入社したテレビ朝日と、いずれも1年で退社。恩師・石井紘基さん(後に衆議院議員)の秘書も1年でやめた。私にとって1年は、次のステージへ移るための区切りになっている。

 私の連載への思い入れは強い。「冷たい街を優しい街に変えたい」という10歳の誓いを50年かけて実現し、市長をやめて次の目標を探しているときに、「FLASH」に声をかけてもらった。そして自由に時事問題を論じてきた。

 すでに述べたように、私は今後の政治への関わり方について、3つのプロセスを考えている。すなわち「横展開」「縦展開」「未来展開」。

「横展開」とは、明石で実現した政策や選挙をほかの街に広げること。「縦展開」とは、それを「県」や「国」に波及させること。「未来展開」とは、子供たちに受け継ぐこと。

 なかでも「横展開」は、相当進んだと思う。明石で実行した、子育てにおける5つの無償化や、児童手当の所得制限撤廃と18歳までの支給などの施策を、全国の自治体がどんどん取り入れている。

 また、選挙でも組織に頼らず結果を出した。2023年4月の明石市長選で私の後継者を勝たせると、兵庫・三田市長選、東京・立川市長選、岩手県知事選、埼玉・所沢市長選と、推薦候補が連勝した。

 こうした横展開のための発信ツールとして、SNSとともに、連載が果たした役割は大きかったと思う。

 横展開は2023年10月の所沢市長選挙で一度区切りとし、今は縦展開に専念している。目標は「救民内閣設立」であり、そこまでのステップは誌上で示してきた。それは「東京新聞」の一面で取り上げられるほど注目を浴びた。

 たしかに、連載は第1のステップ「世論喚起」の一助になったと思う。そして今は、第2のステップ「大同団結」が近づきつつある状況。

 この間、世論の変化でいちばん大きかったのは、岸田内閣に対する評価。連載が始まった2023年5月は、G7広島サミットが開催され、ウクライナのゼレンスキー大統領が来日するなどのサプライズもあり、内閣の支持率は急上昇。

 しかし、当時から私は「異次元の少子化対策」がまやかしだと主張し、その後も増税路線、そして自民党の裏金問題など、岸田内閣を批判し続けてきた。結局、岸田内閣の支持率は一気に落ちた。

 5月の外遊後、支持率は上がったが、国民からソッポを向かれた状況はもう変わらん。岸田総理以外の古い政治家に対しても、国民としては飽き足らなさを感じている。「自民党ノー」の世論が固まっているから、4月の衆院補選でもボロ負けした。

「ポスト岸田」報道は権力との癒着

 自民だけやない。「第2自民党」を自称する日本維新の会は、1年前はどんどん伸びていたが、その後の万博問題や相次ぐ不祥事、馬場伸幸代表の言動などから支持を失ってきている。補選の結果から明らかなように、野党第1党なんてもはや夢のまた夢。

 立憲民主党やほかの野党も同様、さほど期待は高まっていない。それでも、世論は現状維持よりも、政権交代を望んでいる。JNNが5月4日、5日に実施した世論調査では、「政権交代」を望む人が前回から6ポイント増えて48%。「自民・公明による政権の継続」の34%を上回った。

 今こそ“国民の味方チーム”が結集すれば、一瞬で日本の夜明けはやってくる。私の読み以上の速さで、時代は動いていると感じる。

 政権だけでなく、権力を検証すべきマスコミの体たらくに対しても指弾してきた。

 最近も、政治部の記者の報道姿勢を批判した。国民は「古い政治」を拒否しているのに、マスコミは「ポスト岸田」報道ばかりしている。これはある種の権力との癒着。報道が的外れだと指摘したら大炎上した。

 連載では多くの人と“ケンカ”もした。ジャーナリストの田原総一朗さんにかつて私は憧れ、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)のスタッフをしていたこともあったけど、最近の『朝生』はつまらなくなったと書き、田原さんに「今が去り際」と訴えた。しかし、田原さんは「おもしろい」と言ってくれ、それがきっかけで対談することになり、書籍にもなった。

 財界人からの“返答”もあった。経団連の十倉雅和会長による「消費税から逃げるな」発言を受け、「経団連に解散命令を」と提言した回。国民生活の逼迫がわからないという意味で、「財界のお偉いさんたちは、スーパーで買い物をしたことがない」と書くと、経済同友会の代表幹事であるサントリーHDの社長が「失礼なことを言うな。スーパーにも行くし、コンビニにも行く」と言い返してきた。行ったことがあるかどうかではなく、「スーパーでお金の心配をしたことがあるのか」という意味で言ったのに、論点がずれているのは庶民の感覚がわからない証拠。

 今、私のところにいろいろな新しい仕事の話がきている。ファッションショーに出る企画やクイズ番組、ものまね番組への出演……。さすがに、ファッションショーの依頼にはびっくりしたが。

「泉、何ふらふらしとんねん」と怒る人もいるかもしれんが、馴染みの層だけに向けた発信では世の中は変わらん。

 政権交代の実現のためには、これまでの常識や思い込みから脱しないとあかん。「えっ、そんなのあり?」みたいな驚きが必要や。

 この連載では好きなことを書き、反響も得られて本当に楽しかった。読者の皆さまには心から感謝申し上げる。