この記事をまとめると

■アメリカの警察がよくやる行為にどんな意味や秘密が隠されているのかを解説する

■パトカーが逃走車両に体当たりする行為や職質時にトランクを触る理由などに触れている

■背景を知ることで今後アメリカのカーチェイスを見るときにちょっとしたスリルを味わえる

体当たりで容疑者のクルマをスピン……はガチで行われている!

 国内でペダルの踏み間違いによる事故と、アメリカのPITマニューバによる逃走車両の阻止って、もしかしたら同じくらい頻発しているのではないでしょうか。ご存じのとおり、PITマニューバとは警察車両のフロントに取り付けられたプッシュバンパーでもって犯罪車両を激しくアタック! 当然、当てられたクルマはあらぬ方向へとスピンして「観念しろ!」ということに。いまでは、毎日のように動画サイトにアップされているので、決定的瞬間をご覧になった方も大勢いらっしゃることでしょう。

 このPITマニューバですが、アメリカのパトカーがすべてプッシュバンパーを付けているわけではありません。日本でいうところの交通機動隊のような部隊、あるいはハイウェイパトロール的な法執行機関が用いており、ついでにいうと動物避けのアニマルバンパーに似ているも、素材や剛性などまったくの別物だそうです。

 ちなみに、法執行機関むけプッシュバンパーの最大手、セティナ社からは数種の製品がリリースされており、「環境に配慮した塗料を使用」とか「プッシュしても変形しづらい、塗料もはげない」といったアピールがされています。また、バンパーに加えフェンダーラップと呼ばれる防護パーツもラインアップし、こちらはスピンした逃走車両が自社に接触した際のプロテクターとして役立てるとのこと。

 なお、セティナ社はこのほかにも鋼鉄でできた後席とのセパレーターや、犯人護送用リヤシート(身体拘束のしやすい形状)、トランク内の武器収納セットなどを用意しており、ワンストップでアメパトを仕上げられると評判なのだそうです。

職質の際はトランクが閉じているかを確認!

 ただし、このPITマニューバは警官なら誰でもプッシュできるわけではなく、州ごとに定められた訓練や資格試験があるのだそう。たしかに、ぶつかり方に関しても力任せに体当たりしているわけでもなく、逃走車両の左右どちらかのリヤクオーターパネル部に接触(プッシュ)しゆっくりとハンドルを切るという動作は一朝一夕でできる技でもないでしょう。

 また、接触時の速度は50mph(およそ80km/h)以下であることなど、レギュレーションは厳密に定められているのです。これ以上のスピードだと、スピンでなくロールオーバーや車両同士の二次被害も想定されるためなんですが、50mph以上でのマニューバも動画で散見できるんですがね……。なお、日本に導入されないのはアメリカみたいに道幅が広くないから、というのがいちばん大きな理由でしょう。

 さて、アメリカの警察動画でもうひとつよく見るのが路上で車両を停めての職質シーン。で、この際に警察官が対象車両に近づいて、まずはリヤトランクが閉じているか確認しているところご覧になった方もいるでしょう。これは「トランクから賊が出てこないか」を確認しているわけで、また車両に手で触れることによって「警察官の指紋を残す」ことが奨励されているのです。

 これは「警官が車両とのコンタクトを取っている最中に、クリティカルな事象(銃撃、交通事故度)が起こって、警官が重篤な怪我を負ったり殺害されたりなどした場合に、調査官が物理的な接触の事実を確立できる」という理由。また、トランクというのも「リヤフェンダーは逃走時の事故などでもっとも破損しやすい箇所」とされているためだそう。

 ドラマでは止めたクルマに警察官が近づいていくだけでなにかのフラグを感じてしまうものですが、こんなトリビアを知っているとリアルな動画でもちょっとしたスリルを味わえるのではないでしょうか。