するとIは、驚いた顔で「外食しないんですか? 私は、お昼ご飯は外でランチ派ですね」と返されたそうだ。そのときはそれで終わったのだが、翌日にあんなことになろうとは……。

 休憩時間は45分間。近隣に飲食店はなく、いちばん近いラーメン屋でも車で10分はかかるそうだ。そのうえ、職員駐車場は施設に隣接しておらず、往復5分はかかる位置にある。

外食するとなると、食べる時間は10分ほどなので現実的ではないんですよね」

 翌日の休憩時間、近藤さんはIがいないことに気づく。

◆休憩時間が終わっても戻ってこない

「まさか、外にランチに行ってないよなって思いつつ休憩に入りました。45分が経過し休憩時間が終わった頃、Iが戻っていないと報告を受けました。施設内を確認しましたが、どこにもいなかったんです」

 スマホに連絡をするも繋がらなかったため、Iへの連絡は上司に任せることに。そして、Iが戻っていたのは、それから30分も過ぎたころだったそうだ。

「戻ってくるなり、『さすがに食べすぎちゃいました』と笑いながら報告してくるんです。ア然としましたよ」

 Iは上司に呼ばれ、会議室に消えていったという。そして20分後、戻ってきたIは逆ギレ状態だったようだ。

「外にランチへ行くのがなぜいけないのですか!」

◆外でランチしたいから「施設車を貸してください!」

 外にランチに行くことは悪いことではない。しかし、時間を守れないのは悪いと説明するも、「駐車場まで遠すぎるから走らないと間に合わない」と返されたとのこと。さらに翌日、近藤さんは耳を疑うような相談を受けた。

「私に施設車両のカギを休憩時に貸してください」

 嫌な予感がしつつ理由を聞いたが、案の定“外にランチに行くため”だった。

「もちろん、そんな要求をのむわけにはいかないので断りました。すると、『ランチもいけない職場なんて辞めてやる!』『刑務所かここは!』と怒鳴り、自分の荷物を持って帰ってしまったんです」

 その後、上司からIが退職したことを報告された。近藤さんは、「施設車両であれば施設内にあるため、そのぶん移動時間を減らせるという考え自体が異常だ」と憤りを隠せない様子だった。

<取材・文/chimi86>

―[すぐに辞めた新入社員]―

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。