「FAV gaming」所属、プロゲーマー・ボンちゃん選手

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2024年1月13日、シリーズ最新作「ストリートファイター6」(以下、スト6)のカプコン公式大会「ストリートファイターリーグ:Pro-JP 2023」グランドファイナルにて日本最強チームに輝いた「FAV gaming」。来る2月25日(日)には世界最強チームの座をかけて「ストリートファイターリーグ: ワールドチャンピオンシップ 2023」に挑む。

【画像】カプコン公式大会「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023」で優勝した「FAV gaming」。シーズンを通してMVP級の活躍を見せたボンちゃん選手

今回、日本最強となった「FAV gaming」においてMVP級の活躍を見せたプロゲーマー・ボンちゃん選手に、激闘となったストリートファイターリーグ(以下、SFL)の舞台裏や、格闘ゲーム業界の未来について、そして「ワールドチャンピオンシップ 2023」への意気込みを聞いた。

■格闘ゲーム「ストリートファイター」とは?

1987年に業務用ゲーム機として第1作目「ストリートファイター」を発売。1991年に投入された「ストリートファイターII」では、革新的な対戦システムが話題を呼び大ブームに。以降、シリーズ累計販売本数は5000万本を超え世界中でロングセラーを記録している格闘ゲームの金字塔。近年では、eスポーツにおける対戦格闘ジャンルのけん引役としても存在感を高めている。

■最強×最狂のプロゲーマー・ボンちゃんとは?

レッドブルのスポンサードを受け、2015年よりプロゲーマーとしての活動をスタートさせたボンちゃん選手。2019年に行われた世界最大の格闘ゲームトーナメント「EVO 2019 ストリートファイターV部門」での優勝をはじめ数々のタイトルを獲得し、“最強”格ゲープレイヤーのひとりと謳われている。また、火曜日21時から「勝ちたがりTV」にレギュラー出演する他、ボンちゃん選手自身のTwitchチャンネルの視聴者数も急増中で、ストリーマーとしても活躍中だ。

■「今年は絶対に勝たないといけない!」

――所属する「FAV gaming」が日本最強のチームとなりました。勝利の瞬間、涙をこらえるような表情がみられました。

【ボンちゃん】「僕が負けたら優勝できない」という状況のなか、「取りこぼさなくてよかった…」という安堵の気持ちが一番強かったです。

――今シーズン、MVP級の活躍でした。その秘訣は何だと思いますか?

【ボンちゃん】皆よりも危機感を持っていたことだと思います。

――その“危機感”がどう作用したのでしょうか。

【ボンちゃん】自分のプロゲーマーとしてのスタートは「スト4」でした。その後、「スト5」「スト6」とプレイし続けたなかで、実は「スト5」の1年目が一番勝てなかったんです。

というのも、「スト5」の1年目はまったく新しいゲームなので「スト4」で培ったスタイルがまったく通用しないうえ、ゲームの理解度もまったく足りない状況でした。もちろん、「時間が経てば絶対に勝てる!」という自信はありましたが、プロゲーマーは毎年結果を求められる職業なので、「勝ちたいのに勝てない」というストレスを強く感じた初年度でした。

そうした苦い経験があるなかで、「スト6」のデモ版が発売の1カ月前に出ました。デモ版で使えるのはルークとリュウの2キャラ限定で、僕はルークを徹底的にやり込みました。すると、プレイをし続けるなかで「ルークが自分に合っている」と感じ、デモ版、そして製品版でもルークをプレイし続けた結果、「これだけ一途にルークで向き合っていたら、誰にも負けない」という感覚にまで行きつきました。

――「スト5」の1年目の失敗を繰り返さないため、「スト6」のスタートダッシュにこだわったわけですね。

【ボンちゃん】これまでのタイトルでは「長期スパンでは絶対勝てるようになる」…みたいな気持ちがありましたが、「スト6」に関しては、「今年は絶対に勝たないといけない!」そんな気持ちが強かったんです。

■sakoさんの熱戦がチームにさらなる火をつけた

――製品版の発売後まもなく、SFLが開幕するスケジュールでした。ここを意識していたのでしょうか。

【ボンちゃん】「SFL」での出場機会(スケジュール)は多いですし、大会の規模的にもプロゲーマーとしてのメインになりうる大会です。だからこそ、“SFLで勝つための練習”にフォーカスしました。チームメンバーも実績のある「ときど、sako、りゅうせい」の3名なので“強いチームになる”という確信もありました。りゅうせいに関しては「新作はまだ厳しいかも…」という心配もありましたが、序盤のキツイ時期をベテラン3人で乗り切るという長期戦プランで動いていました。

――グランドファイナルは非常に緊張感がありました。どの瞬間が一番印象深かったですか?

【ボンちゃん】今シーズン、運が悪いことにsakoさんは体調不良もあって出場機会に恵まれず、ストレスを溜めていたと思うんです。そんななかで試合は続き「sakoさんにチャンスが生まれない…」という事態のままグランドファイナルの一戦を迎えました。sakoさんからしたら「いつぶりの勝利になるのか?」というプレッシャーもあるなか、最終ラウンドまでもつれ込む接戦を繰り広げて勝利してくれました。この勝利はチームの士気を一気に上げたと同時に、万が一、自分が大将戦を落としてもイーブンという状況にもしてくれたので、「よくぞ勝ってくれた!!」という思いが強かったです。非常に印象深い一戦でした。

■ワンボタン操作の「モダンシステム」が格ゲーのハードルを下げ“人気爆発”

――「スト6」が格闘ゲームブームをけん引しています。これほど広く受け入れられた要因は何だと思いますか?

【ボンちゃん】まず1つはゲームの入りやすさです。新規に導入された「モダンシステム」はワンボタンで技が出るため、格ゲー特有の複雑なコマンドが不要です。また、見た目が派手でかっこよいドライブインパクトも格闘ゲームの醍醐味として新規の方に魅力的に映っていると思います。

――格ゲーの楽しさが味わえるモダンシステムのおかげで格ゲーのハードルが一気に下がり、20代のプレイヤーが大幅に増えたそうです。

【ボンちゃん】あと、ストリーマーの方たちやVtuberの方たちが参入してきたことは大きいです。「スト6」を純粋に楽しんでくれていて、一緒に練習をして大会に参加したり、我々プロがお手伝いする環境も作ってもらえたり、その相乗効果が「スト6」ブームの要因のひとつだと思います。

――先日(2024年2月11日)も、「スト6」第3回CRカップが開催され大いに盛り上がっていました。

【ボンちゃん】以前、たまたまCRカップを観ていたときに、格ゲーはある程度の知識や技術が必要になってくる“ニッチな世界”というイメージがあって、ハードルの高さが新規参入を阻んでいるんだろうな…と感じていました。だから格ゲーのブームはなかなか起こりにくいと思っていたんです。

そんなジレンマを抱えていただけに、CRカップに「スト6」のタイトルを選んでもらえたのは夢のようでした。2015年にプロゲーマーになりましたが、この9年間を振り返ったとき、格ゲー業界は過去一の盛り上がりを迎えていると思います。

■「プロゲーマー」だと言っても笑われない業界にしたい

――2月25日に控える「ストリートファイターリーグ: ワールドチャンピオンシップ 2023」についてお聞きします。トレーニングや準備において大切にしていることは?

【ボンちゃん】今はチーム内で情報を共有することも多くなってきましたが、自分の中では、「正しい情報をちゃんと理解する」「自分の目で見たものを大事にする」ことを強く意識しています。格闘ゲームにおいて、「相手の情報を知ることが勝率に大きく影響する」ということに重きを置いている人はまだまだ少ないので、動画から感じられる“ひととなり”とか、“プレイの傾向”をしっかりと分析して把握することは重要だと考えています。

実際、これまでのプロ生活を振り返ったとき、勝てていたシーズンというのは「知らないことが何もなかった」状態だったし、何が起きても「そうだよね!」と動じず、「自分の知らないことが起こってはいけない」、それぐらいの知識量で臨んでいました。今もそれは変わりませんし、そこの意識は強いです。

――2024年は格ゲー界が飛躍するための大事な1年になると思います。eスポーツの未来について、どのようなビジョンをお持ちですか?

【ボンちゃん】これまで、「プロゲーマーです」と言って笑われない業界になってほしいと思って活動を続けてきましたし、最終的にメジャースポーツになることが目標だと考えています。僕がプロになったときは「プロゲーマーってなに?」という認識でしたが、みんなの努力もあって今は「ああ!eスポーツね!今流行っているよね!」というところまで認知されてきていて、よい方向に変わってきていると思います。eスポーツがサッカーや野球などのメジャースポーツと肩を並べるというのも、決して夢物語ではないと思います。

■「格ゲーといえば日本!」を世界に知らしめる

――最後に、ワールドチャンピオンシップへの意気込みを教えてください。

【ボンちゃん】昨年は日本代表のGood 8 Squad(グッドエイトスクアッド)が優勝しましたが、世界中の格ゲーファンが納得する強いチームでした。今年は我々「FAV gaming」がそうした存在になれると思います。ただ、格ゲー業界は海外のプレイヤーが実績を残していて日本勢が押され気味なので、「いやいや、格ゲーといえば日本だろ!」と再認識してもらえるよう“完全制覇”を狙います!