「全身のかゆみ」の原因・考えられる病気はご存知ですか?医師が徹底解説!
全身がかゆいとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
神戸大学大学院(腫瘍・血液内科学講座)にて血液悪性腫瘍の研究に従事。医学博士号を取得。
赤穂市民病院、亀田総合病院、新宿アイランド内科クリニック院長などを歴任後、2023年2月いずみホームケアクリニックに常勤として着任。現在は内科全般の疾患を幅広く診療している。
「全身がかゆい」症状で考えられる病気と対処法
「全身のかゆみがひどいんだけど、これって何かの病気かな?」と全身のかゆみが気になっている方も多いでしょう。そこで今回の記事では、「全身のかゆみ」について深掘りしていきます。何科を受診すればよいかなども説明していますので、かゆみがひどい人はぜひ参考にしてください。
全身がかゆい症状で考えられる原因と対処法
発疹や湿疹があると、かゆくなるのはよく知られていますが、そのような皮膚疾患がなくてもかゆくなることがあります。発疹を認めないにもかかわらず全身のかゆみを訴える疾患を、汎発性皮膚搔痒症(はんぱつせいひふそうようしょう)と呼びます。汎発性皮膚掻痒症は、ドライスキン(乾燥肌)が原因である可能性が高いです。他にも肝臓疾患や腎臓疾患などの内臓疾患や、糖尿病などの基礎疾患による可能性も指摘されています。薬で皮膚掻痒症が引き起こされる場合もあります。
かゆみが発生するメカニズムに関しては完全に解明されているわけではありません。緊急性があるわけではありませんが、反発性皮膚掻痒症は長期間かゆみに悩まされる疾患です。また、市販薬で一時的にかゆみを抑えられたとしても、原因を解決できるわけではありません。汎発性皮膚搔痒症の可能性がある場合は、まず皮膚科で診察を受けるとよいでしょう。
全身がかゆくて発疹がある症状で考えられる原因と対処法
では、発疹を伴う全身のかゆみはどのような原因が考えられるでしょうか。発疹は皮膚に見られる変化の総称で、細かく分けると、湿疹や蕁麻疹、水疱などが挙げられます。全身がかゆくて発疹がある症状を総称して痒疹(ようしん)と呼びます。
発疹の原因はさまざまです。例えば、蕁麻疹は外からの刺激(外的要因)とアレルギーなどの体質、疲労、乾燥肌などの内的要因が複雑に絡み合っておこります。花粉アレルギーや甲殻アレルギーなどアレルギーの原因物質が分かっている場合などは、その物質との接触を避けることが大前提です。ただし、自分では気づけないところにアレルギーの原因があるかもしれません。皮膚科ではアレルギー検査を行うこともできますので、皮膚科を受診するとよいでしょう。
生理前に全身がかゆい症状で考えられる原因と対処法
生理前になると全身のかゆみがひどくなる場合は、どのような原因が考えられるでしょうか。生理前になると、「生理が重たい、つらい」と感じる女性は多く、このような現象を月経前症候群(PMS)と呼びます。月経前になると、女性ホルモンのバランスに乱れが生じエストロゲンの濃度が急降下します。エストロゲンは、角質の保水機能を保持する機能があるため、角質水分が低下します。その結果、皮膚バリア機能の回復障害が生じ、かゆみが出やすくなるといわれています。この場合、生理が終わると症状が落ち着くことが多いため、急いで受診する必要はありません。
ただし、あまりにかゆみがひどい場合は皮膚科にいって処方薬を出してもらうとよいでしょう。また、PMSの他の症状も重いようなら、婦人科の受診も検討してください。
ストレスで全身がかゆい症状で考えられる原因と対処法
体が疲れたり、精神的につらくなったりすると体がかゆくなったりする場合には、皮膚瘙痒症や蕁麻疹などが考えられます。これらは心理的なストレスによって増悪することが知られています。症状がひどい場合は、まずは皮膚科を受診してみるとよいでしょう。生活環境の見直しや皮膚科で症状が改善しない場合は、心療内科や精神科の受診を検討してください。
突然、全身がかゆくなる症状で考えられる原因と対処法
突然、全身がかゆくなる場合は注意が必要です。薬や食物によるアレルギー、アナフィラキシーの可能性があります。この場合、全身性の発疹や蕁麻疹が発生し、ひどいかゆみが発生します。かゆみだけでなく、気道も浮腫んでしまい呼吸困難を引き起こすことがあります。重篤な場合は、死に至る危険な状態です。
突如発生する全身性の蕁麻疹や息苦しさを感じた場合は、皮膚科の受診では間に合いません。救急受診もしくは救急車を呼び、早急に病院へ搬送してもらいましょう。
全身がかゆくて眠れない症状で考えられる原因と対処法
毎日ひどいかゆみで睡眠障害を引き起こす場合は、今までご紹介した病気の他、原発性胆汁性胆管炎(PBC)や肝硬変の可能性があります。PBCは、肝臓の中の小さな胆管が破壊され、胆汁がたまり肝機能が低下する病態です。厚生労働省により指定難病に指定されています。ひどいかゆみが現れることが多いです。
実際に、アメリカではPBCや肝硬変になった患者でかゆみと睡眠障害に関する調査を行いました。その結果、PBCや肝硬変の患者は、明らかに眠りにつくのが遅れているという結果が報告されています。
まずは皮膚科を受診し、血液検査で肝機能異常が見られたら、消化器内科などのしかるべき診療科に紹介してもらいましょう。
すぐに病院へ行くべき「全身のかゆみ」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
突然発疹があり、全身のかゆみがひどいだけでなく、胃腸障害や呼吸困難などの症状をともなう場合は、救急外来へ
突然発疹があり、全身のかゆみがひどく、苦しそうにしている場合はアナフィラキシーの可能性があります。この場合は、救急受診もしくは救急車を呼ぶ等の対応が必要です。アドレナリンの筋肉注射や、心肺蘇生やAEDの使用などの救命措置が必要になります。アナフィラキシーショックは時間との勝負です。発疹によるかゆみだけでなく、呼吸困難や血の気が引く、失神した、激しい嘔吐などをともなうような場合は、救急要請し病院へ早急に搬送してもらいましょう。
受診・予防の目安となる「全身がかゆい」症状のセルフチェック法
全身のかゆみ以外に呼吸困難などの重篤な症状がある場合
全身のかゆみ以外に黄疸症状がある場合
全身のかゆみ以外に鼻炎症状がある場合
「全身がかゆい」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「全身のかゆみ」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
蕁麻疹
蕁麻疹は、皮膚の一部が赤く盛り上がる病気です。その多くがかゆみをともないます。発症の原因が全て解明されているわけではありません。薬物や食物によるアレルギー症状であったり、疲労などによることが多いです。また、急激な体温上昇などを契機として発症することもあります。
対処法には、明らかに刺激となるアレルゲンがわかっているのであればそれらとの接触、接種を避けるという方法があります。原因が不明の場合は予防は難しいですが、症状が出た時には抗ヒスタミン薬が効果的です。蕁麻疹は一過性の症状であることが多く、自然と治癒していきます。ただし、数日間続いたり、かゆみがひどくて処方薬が必要という場合は速やかに皮膚科を受診しましょう。
皮脂欠乏性湿疹
皮膚欠乏性湿疹は、皮膚の水分保持機能が失われ、皮膚のバリア機能が低下することで生じる湿疹です。皮膚の乾燥は、加齢による皮膚の老化、冬場など湿度が低く乾燥しやすい環境などが原因となります。
ご自身でできる対策は、保湿を行うことです。市販のハンドクリームや皮膚科で処方される保湿剤をこまめに使用するとよいでしょう。多くの皮脂欠乏症は、一過性であり、適切な保湿を行なうことで症状を軽くすることができます。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎はかゆみをともなう発疹が繰り返される病態で、日常生活に影響を及ぼします。アトピー性皮膚炎の患者は、皮膚のバリア機能が低下し、慢性的に炎症を起こしていることが多いです。
皮膚のバリア機能が低下しやすいため、日常的に保湿を行うことがのぞまれます。また、湿疹の悪化を防ぐため、内服薬、外用薬によって皮膚の炎症を抑えます。したがって、アトピー性皮膚炎では皮膚科に定期的に受診し、症状の悪化を未然に防ぐことが大切です。
水疱瘡
水疱瘡(水痘)で全身にかゆみが出ることもあります。水疱瘡は、水痘帯状疱疹ウイルスに感染することで発症します。感染後2週間程度の潜伏期間を経て発疹があり、やがてかさぶたになり剥がれ落ちる事で治癒します。ただし、一部は重症化することもあるので注意が必要です。患者の多くが子供で、9割以上が9歳以下であることも水疱瘡の特徴です。
対処法(予防)として最も重要なのはワクチン接種です。水痘ワクチンは定期接種が行われており、生後12か月から生後36か月の間に2回受けることになっています。1回の接種で重症化を防ぐことができ、2回の接種で軽症の水痘も防ぐことができると言われています。ただし、ワクチンを接種していても、発症してしまうこともまれにあります。症状が出た場合は、皮膚科もしくは小児科を受診しましょう。
統合失調症
統合失調症は考えや気持ちがまとまらなくなる病気です。統合失調症の症状には、幻覚、幻聴などがありますが、全身のかゆみが現れる場合もあります。この場合のかゆみは体に虫が這いまわっているといった幻覚と共に現れることがあります。一般的なかゆみ止めでは効果を発揮しない場合が多いです。抗不安薬などで精神症状をコントロールする治療を受ける必要があります。このような場合は早めに精神科や心療内科への受診を検討してください。
肝臓病
原発性胆汁性胆管炎(PBC)や肝硬変などの肝臓疾患では全身のかゆみが出ることが多いです。この場合は、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎などとは違い皮膚に目立った異常がみられないにもかかわらず、かゆみがあるのが特徴です。ただし、肝臓病がある方は皮膚が乾燥しやすいため、乾燥に由来するかゆみのこともあります。
対処法は、ナルフラフィンという瘙痒症改善薬を使用することです。また、乾燥に対しては保湿を行います。肝臓疾患を放置しておくと命に関わる可能性があります。まず皮膚科を受診し、肝機能に問題があれば、消化器内科を受診するとよいでしょう。
「全身がかゆい」症状の正しい対処法は?
ここまでは、全身がかゆい症状で疑うべき病気について紹介してきました。もちろん、肝臓病などの原因となる病気があれば、速やかに診断・治療すべきでしょう。では、そこまで症状が重くない場合はどのように対処すればよいのでしょうか。
まず、かゆみを落ち着かせることが重要です。かゆいからといって搔きむしってしまうと、皮膚の保護能力が低下し、症状が悪化してしまいます。湿疹などの皮膚症状が出ている場合は、抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬や、かゆみ止めの塗り薬などが有効です。肌が乾燥している場合は、市販の保湿剤やハンドクリームで皮膚に潤いを与えると改善する場合があります。市販薬で効果がない場合は、皮膚科を受診しましょう。正しい診断のもと、適切な薬を適切な量使用することが大切です。
「全身がかゆい」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「全身のかゆみ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
全身のかゆみを引き起こす食べ物はありますか?
今村 英利 医師
そばアレルギーや、甲殻類アレルギーなど、特定の植物がアレルゲンとなって全身のかゆみを引き起こすことはあります。アレルゲンは人によって変わってきます。皮膚科や耳鼻咽喉科、小児科などで血液を採取してアレルギー検査することができます。心配であれば、受診して検査してもらうとよいでしょう。
花粉で全身がかゆくなることはありますか?
今村 英利 医師
スギ花粉やヒノキ花粉などの花粉症では、鼻炎症状や目のかゆみなどがよく知られていますが、皮膚症状も発症することはあります。花粉皮膚炎と呼ばれるため、花粉症を持っている人は皮膚症状にも注意が必要です。
まとめ全身のかゆみはまず皮膚科で相談
全身のかゆみは日中の集中力低下や睡眠不足につながり、日常生活の質をさげてしまいます。肌が乾燥すると、症状が出やすいので、普段から保湿を意識しておくようにしましょう。症状が軽いうちは、保湿剤や市販薬で対応できますが、症状が重くなったり、繰り返したりするようなら皮膚科を受診するようにしましょう。
「全身がかゆい」症状で考えられる病気
「全身がかゆい」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
皮膚科の病気
蕁麻疹皮脂欠乏性湿疹
アトピー性皮膚炎肝臓の病気
原発性胆汁性胆管炎(PBC)
肝硬変精神科の病気
統合失調症かゆみの原因の多くは皮膚の疾患であることが多いですが、全身疾患や精神疾患に由来するものもあります。
「全身がかゆい」に似ている症状・関連する症状
「全身がかゆい」と関連している、似ている症状は2個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
夜になると体が痒い何も刺さってないのにチクチクするかゆみが生じる疾患には様々な種類があります。まずは皮膚科を受診し、必要に応じて内科に紹介してもらいましょう。
【参考文献】・皮膚瘙痒症診療ガイドライン 2020
・蕁麻疹診療ガイドライン 2018
・アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021