「てんかん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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高次脳機能障害の症状とは?Medical DOC監修医が高次脳機能障害の症状・原因・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)

医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

「高次脳機能障害」とは?

高次脳機能障害とは、病気や事故などによって脳が損傷を受けた結果、言語や記憶、思考、学習、注意などの脳機能に障害が起こった状態のことを言います。顔や手足の麻痺症状もない場合には、一見すると何も問題ないように見えますが、これまでできた仕事ができなくなったり、日常生活を満足に過ごせなくなったりするため、生活に大きな支障をきたしてしまいます。

高次脳機能障害の代表的な症状

高次脳機能障害にはいろいろな症状が含まれます。本人が自覚していないケースもありますが、複数の症状を持ち合わせることも多く、専門的な検査などによって診断されます。
代表的な症状を
疑わしい症状がある場合には、脳神経内科や脳神経外科、リハビリテーション科、精神科に相談するのが良いでしょう。

記憶障害

新しいことを覚えておくことが難しい、最近のことが思い出せない、約束を忘れてしまうなどの症状が現れます。
対策としては、メモをこまめにとったり、カレンダーに予定を書き入れたりする習慣をつけることや、何度も繰り返し練習することなどが挙げられます。
なお、記憶障害は認知症と似ていますが、認知症と異なり加齢に伴うものではなく、発症を境にして症状が見られることが特徴的です。

注意障害

注意障害とは、ある物事に注意を向けたり、持続したりすることが難しくなることです。また、同時に複数のことに気を配れることが困難になり、うっかりミスも増えてしまいます。
対策としては、集中しやすい環境を整えることや、メモをとって確認すること、ひとつずつ作業を行うことなどが挙げられます。ストレスや疲れ、精神面での不安定さも症状に影響するため、日頃からストレスをためずに不安を軽減させることも大切です。

遂行機能障害

遂行機能障害とは、ある物事を目的に合わせて適切に実行することができないことです。計画的な行動ができないため、細かく指示を出してもらわないと進めていくことが難しい状態です。複数の作業を行うことが難しく、仕事や約束事を途中で投げ出してしまうこともあります。
対策としては、解決方法や計画の立て方を一緒に考えたり、マニュアルを利用して手順どおりに自分で作業を行ったりすることなどを繰り返すことです。支援者側は、何がうまくできないかを理解して、根気よく対応する必要があります。

社会的行動障害

社会的行動障害とは、感情や欲求がおさえられず、すぐ怒ったり、やる気がなくなったりするなど、その場の状況にあわせて自分をコントロールできなくなる状態のことを指します。
対策としては、興奮状態だとしても無理に止めず、話題や場所を変え、本人が落ち着くことを待つのが良いでしょう。また、本人の衝動的な感情の変化ではなく、高次脳機能障害の症状の一つであることを本人も周囲も認識することが必要です。

高次脳機能障害の主な原因

高次脳機能障害の原因疾患は多岐にわたります。
成人例では、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)が最も多く60%程度を占めて、そのほかには頭部外傷や低酸素脳症、脳腫瘍、脳炎なども見られます。小児例では、インフルエンザや突発性発疹などのウイルス性疾患による急性脳症や頭部外傷が多いと言われています。

脳卒中

脳卒中による高次脳機能障害の発症は非常に多くみられます。どの領域の脳組織にダメージがあるかによって異なり、症状の程度もさまざまです。会話が成立しなくなる失語症や、どちらか左右の空間を認知できなくなる半側空間無視などの症状は、手足の麻痺症状とともに出現することがあります。

頭部外傷

頭のケガによって、脳の表面や脳内の組織にダメージが及ぶことでも発症します。転倒転落の事故、交通事故、スポーツ外傷、ケンカなどさまざまな場面で頭部外傷は起こりえます。画像上、出血がみられる外傷性くも膜下出血や脳挫傷以外にも、出血がない脳震盪などの病気でも発症することがあります。
小児の場合には乳児期の虐待による脳損傷は無視できない問題です。また、幼児期の歩行中の事故、学童期の自転車による事故などが増える時期で注意が必要です。外傷による高次脳機能障害は記憶障害、注意障害、遂行機能障害、感情コントロールの不良が特徴的であるといわれています。

低酸素血症

低酸素脳症は何らかの原因で脳細胞への酸素が十分に行き渡らず細胞壊死をもたらした結果生じる脳の障害です。低酸素状態であると記憶の機能を司どる海馬がダメージを受けやすいため、記憶障害をきたしやすいと言われています。ほかにも、視覚認知障害、遂行機能障害、人格・行動変化、運動障害、注意障害などがみられることが特徴です。

脳炎

急性脳炎をきたす原因には、ウイルスや細菌などの感染症や、膠原病などの自己免疫疾患、各種のワクチン接種などが挙げられます。
また、脳炎発症後にはてんかんを発症し、このてんかんが原因で高次脳機能障害を発症する例もあります。

てんかん

てんかんとは、脳内での異常な電気信号のやり取りが繰り返し起こり、けいれんや意識障害などの症状が出現する病気です。
てんかんにはいくつか分類がありますが、原因の有無では2つの種類があって、原因が特定できないてんかん(特発性てんかん)と、何らかの原因があって生じるてんかん(症候性てんかん)とに分けられます。
症候性てんかんの原因となるものは、前述した脳卒中や脳腫瘍、頭部外傷、低酸素脳症、脳炎などの脳疾患が多数あります。
てんかんによる高次脳機能障害では、記憶障害や失語、幻視、性格行動変化、意識障害などの症状がみられます。記憶障害などがある中で、抗てんかん薬を継続して服用してもらう工夫が重要となります。

すぐに病院へ行くべき「高次脳機能障害の症状」

ここまでは高次脳機能障害の症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

日常生活や社会生活を送ることに支障をきたす場合は、脳神経内科や脳神経外科、リハビリテーション科、精神科科へ

高次脳機能障害は多くの症状があるので、最も問題となる症状はこれだと一概に言えるものではありません。生活上で支障となるような症状が見られる場合には、まずは内科や脳神経内科、脳神経外科で相談するのが良いでしょう。その症状が個人の性格の範囲内の問題であるのか、病的と言える状態なのかは個別に判断する必要があります。リハビリ科や精神科での診療が適している可能性もあるので、担当診療科へ紹介される可能性もあります。
また、すでに何らかの原因で高次脳機能障害と診断されている場合にも、さまざまな症状に対する対応方法を担当医などから聞いていると思いますが、日常生活の些細なところで問題点を感じることがあるかもしれません。それが社会的に問題となっている場合には早めにかかりつけ医に相談して対応を検討するのが良いと思います。

受診・予防の目安となる「高次脳機能障害」のセルフチェック法

・物忘れ症状がある場合

・落ち着きがない症状がある場合

・場にそぐわないことを行う場合

など。その他にもたくさんありますが、文字数の関係上一部だけの紹介になっています。

高次脳機能障害の治療法

治療を行う上で、まずはどのような高次脳機能障害が存在するのかさまざまな検査を行なって診断をします。
高次脳機能障害に対する確立された薬物療法や手術療法などはなく、中心的な治療はリハビリを行うことです。
多くの場合には発症から時間が経つと症状の改善が見込めなくなってしまうので、社会復帰を目指し早期から適切なリハビリを行うことが重要です。

リハビリ

どのような機能障害があるかによってリハビリの方法は異なりますが、簡単な課題からトレーニングを始めて、徐々に複雑な課題を進めて、少しずつ実生活で試していく、という方法が一般的です。
失語症における発話のトレーニングでは、馴染みのある物の呼称を繰り返すことから始めて、やがて文章の練習へと進めていきます。
また、一つの機能障害ではなく複数の機能障害を持ち合わせていることもあるので、いくつかの道具を使う訓練や環境の調整も同時に行います。記憶障害があれば、こまめにメモを取ったり付箋をつけたりして、そのメモや付箋を見る習慣をつけるようなトレーニングを行います。また、遂行機能障害があれば、アラームやタイマーを使用して予定通りに動けるようにするトレーニングを行います。

原因疾患の治療

高次脳機能障害の治療と並行して、原因疾患の治療を行うことも必要です。
脳卒中では降圧薬や抗血栓薬などの治療薬を服用して再発予防を行う必要があります。てんかんに対しては抗てんかん薬を服用しててんかん発作を抑えることが重要です。

「高次脳機能障害の症状」についてよくある質問

ここまで高次脳機能障害の症状を紹介しました。ここでは「高次脳機能障害の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

高次脳機能障害の平均寿命はどれくらいでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

高次脳機能障害の方は、それがない人に比べて10年から20年程度平均寿命が短い傾向にあるというデータがあります。これは脳卒中や頭部外傷などの高次脳機能障害の原因となる病気の影響のために短いということも考えられると思います。

周囲の人は高次脳機能障害の方へどのように対応するべきでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

高次脳機能障害のさまざまな症状は病的なものです。その病気を持っている身近な人は、何ができて何ができないのか、ということを認識することがまずは重要です。できないものに直面している場合には、行いやすい環境を作ることや、根気強く一緒に課題解決をするという対応が必要になると思います。

編集部まとめ

高次脳機能障害にはさまざまな症状が含まれます。何らかの病気が原因で、それを境にこれまでできたことができなくなってしまうという病気であるため、日常生活や社会生活上で戸惑いが生じると思います。
病的な症状のため本人もできないことに苛立ちを感じることもありますが、周囲の人も非常に苦労することになります。残念ながら、治療を行うことですぐに改善するということは多くありませんが、適切な対応策を取ることやリハビリを重ねることで症状の改善は期待できることもあります。一人で抱え込まず、早めに専門家へ相談するようにしてください。

「高次脳機能障害の症状」と関連する病気

「高次脳機能障害の症状」と関連する病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経科の病気

脳梗塞脳出血くも膜下出血脳挫傷

びまん性軸索損傷

脳震盪

脳腫瘍

脳炎

低酸素脳症認知症

せん妄

てんかん

病気の原因によっては、頭部MRI検査や血液検査などで原因が判明しない場合もあるため、神経心理検査など入念に一通り検査して診断をつけることが重要です。

「高次脳機能障害の症状」と関連する症状

「高次脳機能障害の症状」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

物忘れが多い

うっかりミスが多い

計画を立てられない

約束を守ることができない

集中できない

落ち着きがない

怒りっぽい

性格が変わった

衝動的な行いが増えた

見た目には顔や手足の麻痺症状がなく何も問題なさそうであるだけに、できないことや問題行動をおこなってしまうことは、周囲の理解を得にくくなってしまうという課題があります。早めに医療機関で相談することをお勧めします。

参考文献

日本小児神経学会

高次脳機能障害を理解する(国立障害者リハビリテーションセンター)