ドライマウスの治し方を歯科医が解説 口腔乾燥症で口が乾く原因やリスクと対策も説明

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「口の中が渇きやすい(ネバつく)」「食べ物が飲み込みにくい」などの症状が気になることはありませんか? これらの症状はドライマウス(口腔乾燥症)の可能性があり、そのまま放置すると日常生活にも支障をきたしてしまうおそれがあります。そこでドライマウス(口腔乾燥症)の症状や原因、放置するリスク、治療法やご家庭でできるセルフケアなどをいぬかい医大モール歯科クリニック院長(医療法人社団博伸会理事長)の犬飼先生に聞きました。

監修歯科医師:
犬飼 伸二(いぬかい医大モール歯科クリニック)

東京医科歯科大学学術研修会(現・東京医科歯科大学歯科同窓会)修了。医療法人の勤務医、分院長を経て、2004年にいぬかい医大モール歯科クリニックを開院。「一人の人間として、患者さんに向き合いたい」という理念のもと、患者さんと同じ目線に立った診療を心がけている。日本顎咬合学会咬み合わせ認定医。

口が乾く・口の中の渇きが気になるのは病気? ドライマウス(口腔乾燥症)の症状やリスクを歯科医が解説

編集部

ドライマウスでお口が乾いてくると、具体的にどのような症状が現われますか?

犬飼先生

ドライマウスの症状には、本人が感じる自覚症状と、歯科医など専門家がお口の中を診てわかる他覚症状の2つがあります。患者さん自身が感じる自覚症状では、お口の渇きやネバつきのほかに、「乾いた食品が噛みにくい・飲み込みにくい」「話しづらい」などが代表的です。ほかにも、「口臭が気になる」「舌がヒリヒリと痛い」「今までと味の感覚が違う」などの症状があらわれる場合があります。

編集部

歯医者さんが診てわかる他覚症状には、どのようなものがありますか?

犬飼先生

ドライマウスの方のお口の中を診ると明らかにお口が乾燥しているほか、唾液が泡状になったりねばついたりしている様子も確認できます。また、舌の表面が赤くツルツルしていたり、荒れていたりするのも特徴的です。

編集部

ドライマウスを放置すると、どのようなリスクがありますか?

犬飼先生

先に挙げた症状が悪化すると、「食べ物が噛めない・飲み込めない」「痛くて食べ物を口に入れられない」など日常生活にも支障がでてしまいます。また、唾液による自浄作用や殺菌作用が働きにくくなるためむし歯や歯周病にかかりやすくなるほか、口内炎やカンジダ症といった粘膜疾患も生じやすくなります。

ドライマウス(口腔乾燥症)の原因は? カフェインの摂りすぎやストレスも口の渇きと関係ある?

編集部

なぜドライマウスになってしまうのでしょうか? 原因を教えてください。

犬飼先生

ドライマウスは病気ではなく、何らかの原因で唾液の量が減ってしまう状態のことをいいますが、そうなる原因は多岐にわたります。その1つは、唾液の原料となる水分が体内で不足することです。具体的には発熱や糖尿病などの病気、カフェインやアルコールなど利尿作用のある飲料の過剰摂取などが挙げられます。唾液の量が減ってしまう原因はほかにも、唾液をつくる唾液腺に障害がある場合や、何らかの要因で唾液の出が悪くなる場合などが考えられます。

編集部

唾液腺に障害が起こる要因には、どのようなことが考えられますか?

犬飼先生

唾液線の障害によるドライマウスは、シェーグレン症候群が代表的です。自己免疫疾患に分類されるこの病気は、自身の免疫細胞が唾液腺や涙腺などを非自己と誤認して破壊してしまいます。また、加齢や唾液腺の病気で唾液腺に障害を起こしてしまうことがあります。

編集部

このほかに、唾液の出が悪くなる要因にどのようなものがありますか?

犬飼先生

服用するお薬の中にも、副作用としてドライマウスを引き起こしてしまう薬剤があります。代表的なものに、降圧剤(血圧を下げる)や抗不安薬・抗うつ薬、抗ヒスタミン薬(アレルギー・ぜんそく)などが挙げられます。さらに、ストレスが原因でドライマウスを引き起こしてしまうケースも少なくありません。

編集部

ストレスもドライマウスの原因になるのですか?

犬飼先生

日常生活の中でも、緊張したり興奮したりした時にお口が渇くことはよくあると思います。この緊張や興奮が長く続いてしまうのがストレス状態です。唾液の分泌は交感神経と副交感神経の2つの自律神経によってコントロールされており、興奮の神経といわれる交感神経が優位になると粘り気のある唾液が多くなります。緊張した時やストレスが溜まっている時はこの交感神経が優位に働くため、お口が渇きやすくなるわけです。

ドライマウスの治し方は? 歯科医院・病院での治療や自分でできるセルフケア、市販薬の効き目などを教えて

編集部

ドライマウスの治療では、どのようなことを行うのでしょうか?

犬飼先生

先にも挙げたように唾液の減少には様々な原因があるため、まずはその原因をつきとめて可能なかぎりその原因を除去することが肝心です。たとえば、お薬の服用が原因でドライマウスが生じているケースでは、薬剤の中止やほかの薬剤に変更できないかなどを医科の先生と検討していきます。また唾液線の病気が原因の場合は、そちらの治療を優先します。

編集部

原因の除去が難しい場合は、どのような治療を行いますか?

犬飼先生

唾液の分泌をうながしたり、お口が渇くのを予防したりするための生活指導を行います。具体的には、「食事の際は時間をかけてしっかり噛む」「シュガーレスガムを噛む」など噛む回数を増やしていくのも方法の1つです。そのほかに、お口周りの筋肉や舌をよく動かす運動や唾液線のマッサージなどを普段の生活の中に取り入れていきます。

編集部

ドライマウスの治療でお薬は使いますか? また、市販で買えるお薬でおすすめのものがあれば教えてください。

犬飼先生

ドライマウスの治療薬は、服用するタイプとお口に直接塗るタイプの2つがあります。服用薬では唾液の分泌を促すお薬や漢方薬などを処方しますが、市販のお薬はおすすめできません。一方の外用薬では人口唾液や保湿剤などでお口に潤いを戻していきます。こちらは市販の保湿ジェルや保湿成分の入ったマウスウォッシュなどが活用できます。ただし、アルコール配合のマウスウォッシュはお口の乾燥の原因になるため、市販のものを購入する場合はアルコール無配合のものを選びましょう。

編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

犬飼先生

ドライマウス(口腔乾燥症)になる原因は多岐にわたるため、まずはその原因を突き止めていくことが改善や治療では重要となります。したがって、お口の渇きやネバつきなど気になる症状がある場合は、早めに歯科を受診して詳しい検査を受けましょう。

編集部まとめ

唾液の減少によるドライマウスは、そのまま放置するとむし歯・歯周病のリスクが高くなるほか、食事や会話がうまくできないなど日常生活にも支障をきたしてしまいます。お口の渇きのほかに「食べにくい・飲み込みにくい」「舌や粘膜がヒリヒリ痛い」など症状が気になったら、早めに歯科医院を受診しましょう。日常生活ではとにかくしっかり噛んで唾液の分泌を促すことが重要です。ただし、ガムを噛む時は糖分ゼロ(シュガーレス)のものを選ぶようにしましょう。

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