【医師解説】「子宮内避妊リング(ミレーナ)」は絶対避妊できる? 費用や副作用について

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一般に避妊リングともいわれるミレーナは、子宮内に装着することで避妊の効果を得る避妊具のことをいいます。高い避妊効果があるだけでなく、月経困難症や過多月経の改善などの効果も見られるミレーナですが、本当に確実に避妊できるのでしょうか? 費用やリスクなども含め、泉医院の泉先生に教えていただきました。

監修医師:
泉 康二(泉医院)

昭和52年3月日本大学医学部卒業。日本大学医学部付属病院(駿河台、板橋)、大宮赤十字病院(現・さいたま赤十字病院)、国立立川病院(現・国立病院機構災害医療センター)、日本大学産婦人科などを経て平成3年2月2日泉医院開設。

子宮内避妊リング(ミレーナ)とは?

編集部

ミレーナとはなんですか?

泉先生

子宮内に装着する新しいタイプの避妊システムで、一般に「避妊リング」とも呼ばれます。

編集部

どのような仕組みで避妊できるのですか?

泉先生

ミレーナを子宮内に入れると、レボノルゲストレルという黄体ホルモンが継続的に放出されます。このレボノルゲストレルはホルモン製剤のひとつであり、緊急避妊を目的としたアフターピルとしても用いられています。ミレーナを装着するとこのホルモンが放出され、子宮内膜が萎縮します。そのため、受精卵の着床を防ぐ効果が期待できるのです。

編集部

避妊の効果はどれくらい高いのですか?

泉先生

研究により、避妊の失敗率が非常に低いことがわかっています。一般にピルの失敗率が0.6%であるのに対して、ミレーナは0.14%です。

編集部

どのようにして使用するのですか?

泉先生

月経が始まった日から数え、7日以内に挿入します。その後、基本的に5年間は入れっぱなしになり、避妊の効果は5年間持続します。ミレーナを装着している間も排卵は起きており、もし装着期間内に子どもが欲しくなった場合にはミレーナを取り出せば良いので、安心して使用してください。

避妊以外にも、どのような効果があるのか?

編集部

ミレーナは避妊のほか、どのような効果があるのですか?

泉先生

たとえば過多月経や生理痛がひどい方にも有効です。なぜなら、ミレーナは子宮内膜の増殖を抑えるからです。月経量が減るので月経が軽くなるというメリットがあります。

編集部

月経が楽になるのは女性にとってはうれしいですね。

泉先生

子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症で月経が重い方には特に高い症状改善効果を見込めます。また2014年より、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などによる過多月経や月経困難症の治療としてのミレーナが保険適用になりました。

編集部

そのほか、ミレーナはどのような人におすすめですか?

泉先生

たとえば避妊のためにピルが服用できない方にもおすすめです。一般に、40歳以上だったり、喫煙者だったり、血栓リスクが高かったりする人は避妊目的でピルを使用することができません。しかしミレーナは全身ではなく、子宮とその周辺のみ作用するため副作用が少なく、安心して使うことができるのもメリットといえるでしょう。

編集部

ミレーナにはどのような副作用があるのですか?

泉先生

月経出血日数の延長・月経周期の変化・卵巣のう胞・月経時期以外の出血・腹痛などがあります。また重大な副作用として、骨盤内炎症性疾患(PID)、子宮外妊娠、穿孔、卵巣のう胞破裂などがあります。そのためミレーナを使用している期間は定期的に検診を受ける必要があります。

編集部

出血などの副作用があるのですね。

泉先生

はい、粘膜下筋腫ができた場合、また子宮内への感染した場合には出血が続くことがあります。多くの場合3カ月程度、長く続く人で半年程度出血が続くことがありますが、人によっては1カ月くらいでおさまる人もいます。もし出血がどうしても気になるという方は、医師にご相談ください。

治療における注意点

編集部

治療を行う上での注意点を教えてください。

泉先生

まれに気づかないうちにミレーナが取れてしまうことがあるので、きちんと定期検診を受けて装着状況を確認するようにしましょう。また、帝王切開後で子宮後屈がひどい場合、ミレーナの挿入が難しいことがあります。ミレーナを装着できない人もいるので、ご自分が適応かどうかは、事前に医師へ確認する必要があります。

編集部

どのような人が使用できないのですか?

泉先生

たとえば、子宮線筋症で子宮壁の厚さが、4~5cmを超える人や、筋腫のある場所が内膜に近い人、粘膜下筋腫がある人、内膜症嚢胞がある人、大きな筋腫がある人は、ミレーナが脱出するリスクが高くなります。そのためまずは診察を受け、ミレーナが使用可能かどうか、確認してもらいましょう。

編集部

装着をする際、痛みはありますか?

泉先生

経膣分娩の経験がある方は痛みが少なく、装着もスムーズです。しかし出産経験がない人や帝王切開で分娩した人は痛みが強いので、通常は事前にスポンジを圧迫したスティックを入れて子宮頸管を広くし、そのあとでミレーナを装着します。痛みが苦手な方は、痛み止めを服用してきた方がいいと思います。

編集部

ミレーナを使用することで月経前症候群(PMS)の症状も軽減されるのですか?

泉先生

いえ、残念ながらPMSには効果が期待できません。なぜなら、ミレーナを使っても卵巣からは黄体ホルモンが産生されているからです。そもそもPMSが起きるのは、黄体ホルモンの急激な変動が原因です。そのため、ミレーナを使用してもPMSの改善は期待できないのです。

編集部

ミレーナを使うことで月経がなくなるのですか?

泉先生

いえ、「ミレーナを使うと月経が来なくなる」と誤って理解している人も多いのですが、正しくは、9割ほどの人はミレーナを使っても月経はなくなりません。ただし、もともと子宮が小さい人は月経が来なくなる可能性もありますが、多くの場合、月経は楽になってもなくなることはありません。

編集部

治療の費用について教えてください。

泉先生

過多月経や月経困難症など保険適用の場合には、超音波検査などの事前検査を含み、3割負担で約1万3000円で、5年間有効です。また避妊目的で行う場合には自費となるため、医療機関によって異なりますが大体3万5000~7万円くらいで、こちらも5年間有効です。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

泉先生

ミレーナは非常にコストパフォーマンスがよく、すぐれた避妊方法です。ピルのように薬剤を服用する必要はありませんし、一度装着すれば基本的に5年間、避妊効果が持続します。ただし、正しく装着しているかどうか、定期的に確認することが重要です。当院では患者さんに対し、入れて1カ月目、3カ月目、その後は半年に一回検診を受けることをおすすめしています。感染症などの合併症が起きるリスクもあるため、定期的に医師の診察を受け、安全に活用するようにしましょう。

編集部まとめ

避妊の効果が高く、月経も軽くなるなどメリットが多いミレーナ。日本では使用している人はまだそれほど多くありませんが、海外では非常にメジャーな避妊具です。ただし、なかには適応が難しい人もいるので、興味がある場合はまず婦人科を受診し、医師に相談してみましょう。

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