「白血球が少ない」と体にどんな症状が現れるかご存知ですか?医師が解説!
健康診断で白血球が少ないと言われたらどうすべき?Medical DOC監修医が血液検査の見方や基準値・主な原因と病気のリスク・対処法などを解説します。
監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)
奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。
健康診断・血液検査で「白血球が少ない」と診断されたときに考えられる原因と対処法
健康診断や血液検査で白血球が少ないと指摘されたことはありませんか。
白血球が多くて白血病、と聞いたことがある方も多いかもしれませんが、少ない場合にどのような問題が考えられるのか具体的に解説いたします。
白血球が少ないと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
白血球が少ないと診断された時に考えられる要因はさまざまです。
がんや放射線療法、化学療法、特定の薬物(例:抗生物質、抗てんかん薬)、によって骨髄を抑制し、白血球の生産を減少させる可能性があります。他には自己免疫疾患によって、体が自分自身の白血球を攻撃し、数を減らすこともあります。
多くの要因がありますので以下でより具体的に解説していきます。
白血球と血小板が少ないと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
白血球と血小板が少ないと診断された場合、再生不良性貧血の可能性が考えられます。
再生不良性貧血の詳細は後述しますが、症状の進行の程度で急性型と慢性型があります。
特に慢性型では進行がゆるやかなので、貧血が高度であっても自覚しづらく、好中球数(白血球のうちの一種類)は比較的保たれ、血小板減少の程度が強く出ることが多いため、検査所見では白血球に加えて血小板も低下している状態が見られることもあります。
症状や治療については後の項目を参照してください。
健康診断で毎年、白血球が少ないと診断されるときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
健康診断で毎年白血球が少ないと指摘される場合、骨髄異形成症候群の可能性が考えられます。骨髄異形成症候群の詳細は後述しますが、急性骨髄性白血病に進行する可能性のある「前がん状態」として知られています。日本全国では1年間に約6,000人が診断されており、70歳以上で罹患率が急激に上昇します。慢性的な貧血や出血傾向、発熱が見られるという特徴もあります。ご自身でできる対処法はありませんので、早急に専門の医療機関を受診し、診断と治療を受けることが重要です。
生まれつき白血球が少ないと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
生まれつき白血球が少ないと診断された場合、先天性好中球減少症の可能性があります。先天性好中球減少症は、「末梢血の好中球絶対数が500/μL以下で3ヶ月以上持続し、何らかの易感染性を示すもの」と定義されています。
乳幼児期の早期から、皮膚が化膿したり上気道感染症を繰り返したりと、感染しやすい状態が見られることが特徴です。
遺伝疾患であり、原因となる遺伝子変異は複数同定されています。日本では100万人に1~2人程度の頻度とされています。治療は対症療法としての感染症対策と、根治療法となる造血幹細胞移植があります。
専門科は小児科及び血液内科で、双方の専門性を持った医師を有する医療機関での治療が必要です。国内の症例数も限られており、大学病院などで治療される可能性が高いです。
健康診断の「血液検査」の見方と再検査が必要な「白血球が少ない」に関する数値・結果
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
健康診断・血液検査の「白血球」の基準値と結果の見方
白血球の正常値、基準値は以下のとおりです。個人差がありますから多少の誤差は問題ありません。基準値から大幅には外れたときには注意が必要です。
男性女性
白血球3900-9800(/μL)3500-9100(/μL)
好中球40.0-74.0(%)
リンパ球18.0-59.0(%)
単球0.0-8.0(%)
好酸球0.0-6.0(%)
好塩基球0.0-2.0(%)
基準値には精査もありますが、白血球数が3000/μLを下回るようであれば、感染症にかかりやすい状態と考えられますので再検査が必要です。
健康診断・血液検査の「白血球」の異常値・再検査基準と内容
まずは血液検査を再度行い、白血球数の再検査と、その内訳(好中球やリンパ球など)を確認します。加えて、異常な白血球が存在しないかどうかも検査されます。
そのバリエーションによってさまざまな疾患が考えられますが、基本的に再検査でも異常が指摘された場合は血液内科に紹介されることが多いです。
健康診断・血液検査の「白血球が少ない」ときに気をつけたい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「白血球が少ない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
白血病
白血病は血液と骨髄のがんで、正常に機能しない異常な白血球が無秩序に増殖する疾患です。白血病には慢性と急性の2つの主要なタイプがあります。その名の通り慢性白血病は徐々に進行し、急性白血病は迅速に進行します。さらに、リンパ系または骨髄で始まるリンパ性と骨髄性の白血病があります。
「白血球数が多いと白血病だろうか?」と心配される方がいますが、白血球数だけでは断定はできません。病気の段階によって、基準値より多い場合も少ない場合もあります。
症状には疲労、貧血、出血傾向、感染症への抵抗力の低下が含まれます。治療には化学療法、放射線療法、骨髄移植があり、種類と病期によって異なります。早期発見と治療が重要で、血液専門医の診断と治療が必要です。
骨髄異形成症候群
骨髄異形成症候群は、骨髄で血液細胞がうまく形成されない一連の異常を指します。これは骨髄が非効率的に血液細胞を生産するために起こり、不完全な血液細胞(異形成細胞)が生成されます。MDSはしばしば「前がん状態」とされ、白血病に進行する可能性があります。
MDSの原因は多岐にわたりますが、遺伝子変異、化学物質や放射線への曝露、または化学療法や放射線療法後に発症することがあります。症状は、貧血、出血しやすさ、感染症への抵抗力の低下などで、これらは骨髄が赤血球、血小板、白血球を適切に生産できないために起こります。
診断は血液検査、骨髄検査により行われます。治療は病状の重さと患者の全身状態に基づいて決定され、輸血や、免疫抑制剤、化学療法、場合によっては骨髄移植が行われます。早期診断と適切な治療が重要であり、治療後も定期的なフォローアップが必要です。専門科は血液内科です。
好中球減少症
好中球減少症とは、血液中の好中球の数が異常に少ない状態を指します。好中球は白血球の一種で、体を感染症から守る重要な役割を担っています。好中球の数が少ないと、感染症に対する抵抗力が低下し、感染のリスクが高まります。
好中球減少症をきたす原因は、感染症(腸チフス、粟粒結核など)、無顆粒球症(抗甲状腺薬、抗菌薬などの副作用による)、造血器腫瘍(急性白血病や多発性骨髄腫など)、貧血(再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血、発作性夜間血色素尿症など)、脾機能亢進症(肝硬変や特発性門脈圧亢進症などの脾腫のある病気)、免疫性(全身性エリテマトーデスなど)が挙げられます。
加えて、発熱性好中球減少症という病態も重要です。発熱性好中球減少症とは「好中球数が500/μL未満、あるいは1,000/μL未満で48時間以内に500/μL未満に減少すると予測される状態で、腋窩温37.5℃以上(口腔内温38℃以上)の発熱を生じた状態」とされています。これは特に化学療法を受けているがん患者に見られることが多く、発熱が体内での感染の存在を示唆しており、緊急対応を必要とする場合があります。
いずれの専門診療科も血液内科です。
再生不良性貧血
再生不良性貧血は、末梢血でのすべての血球の減少(汎血球減少)と骨髄の細胞密度の低下(低形成) を特徴とする一つの症候群、と定義される病気です。汎血球減少や低形成は多くの疾患で見られるため、そこからさらに他の疾患(白血病、骨髄 異形成症候群、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、巨赤芽球性貧血、癌の骨髄転移、悪性リンパ腫、 多発性骨髄腫、脾機能亢進症(肝硬変、門脈圧亢進症など)、全身性エリテマトーデス、血球貪食症候群、感染症など)を除外することによって初めて再生不良性貧血と診断されます。病気の本態は「骨髄毒性を示す薬剤の影響がないにもかかわらず、造血幹細胞が持続的に減少した状態」とされています。
特徴的な症状は、労作時の息切れや動悸、めまいといった貧血による症状と、皮下出血・歯肉出血(歯茎からの出血)・鼻出血などの出血傾向があります。好中球減少が強い症例では免疫力が低下して感染に伴う発熱も見られることがあります。
受診すべき診療科は血液内科です。輸血をはじめとして専門的な治療・管理を要するため、基幹病院や大学病院のような高度医療機関に紹介されるケースが多いです。
「白血球が少ない」ときの正しい対処法・改善法は?
白血球が少ないと指摘された場合、基本的にはご自身の生活習慣で改善できることはありません。重要なことは、無症状でも異常が指摘されたら早めに診察を受けることです。
「白血球が少ない」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「白血球が少ない」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
血液検査で白血球はどれくらい少ないと健康リスクが高まりますか?
中川 龍太郎(医師)
白血球数が3000/μLを下回るようであれば、感染症にかかりやすい状態と考えられます。
血液中の白血球が少ないと体にはどんな症状が現れますか?
中川 龍太郎(医師)
感染症への抵抗力が低下して、発熱しやすい、風邪をひきやすい、皮膚が化膿しやすい、といった感染しやすい状態になってしまいます。
血液検査で白血球が少ないと診断される人に多い原因を教えてください。
中川 龍太郎(医師)
遺伝的な要因か、もしくは抗がん剤治療など骨髄抑制が生じる薬剤が使用されていることが多いです。
ストレスが原因で血液中の白血球が少なくなることはありますか?
中川 龍太郎(医師)
ストレスのみが原因で、白血球が少なくなるとは考えにくいです。
疲れやすいのですが白血球が少ないことと関係ありますか?
中川 龍太郎(医師)
これまでご紹介した病気では、易疲労感も症状として出ますので無関係とは言えません。
白血球が少ないと言われたら何科の病院を受診すればいいですか?
中川 龍太郎(医師)
血液内科を受診しましょう。
まとめ 健康診断で「白血球が少ない」と言われたら血液内科を受診!
今回は「白血球が少ない」と指摘されたら、というテーマで解説しました。基本的には放置しておいて良いものではありませんので、医師の指示に従って精査を進めるべき状態と考えてください。症状がないから大丈夫と自己判断しないようにしましょう。
「白血球が少ない」ときに考えられる病気
「白血球が少ない」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血液内科の病気
白血病骨髄異形成症候群再生不良性貧血発熱性好中球減少症
先天性好中球減少症
白血球が少ない時に考えられる疾患は上記になります。どれも血液内科の病気で早期発見と早期治療が重要です。指摘されたら早めに再検査を受けにいきましょう。
参考文献
がん情報サービス 感染しやすい・白血球減少
小児慢性特定疾病情報センター 重症先天性好中球減少症