2024年に注文住宅を建てようとしている方が見落としがちなポイントをご紹介します(写真:PHOTO NAOKI/PIXTA)

「家は3回建てないと成功しない」。家づくりを始める際、多くの方がこの言葉を耳にします。しかし、ほとんどの場合、一生に一度のライフイベント「家づくり」は1回で成功させなければなりません。

『初めてでも失敗しない 家づくり超攻略法』の著者で、住宅系YouTuberのまかろにおさんが、2024年に注文住宅を建てようとしている方が見落としがちなポイントを5つご紹介します。

「間取り」から考えてはいけない

これから注文住宅を建てようと考えている方にありがちなこととして、「間取りから考えてしまう」ということがあります。しかし、これはNGです。間取りから考えてしまうと「間取り迷子」になってしまい、いつになってもしっくりくる間取りが完成しないという状況になりがちです。

なぜかというと、手段が目的になってしまい、パズル合わせのような間取りづくりにしかならなくなるからです。たとえば「リビングが20畳欲しい」「回遊動線にしたい」「パントリーが欲しい」などは、注文住宅を建てる多くの方が口にする要望です。

しかし、これらの要望はあくまで「手段」でしかなく、それらを欲する何かしらの背景があるはずなのです。その背景の課題を解決することこそが本来の目的であり、それを解決するための手段として「20畳のリビング」「回遊動線」「パントリー」などが存在するわけです。

たとえば、「20畳のリビングが欲しい」という要望は、突き詰めていくと、その目的は結局「リビングを広くしたい」ということです。その方法としては、実際に20畳のリビングを設けるという手段以外にも、下記のようなたくさんの手段があるのです。

●視覚的に広く見せる方法
・ハイドアを採用する
・室内に多少の高低差を設けてメリハリを付ける
・フローリングの素材を切り替える
・ウッドデッキもしくはタイルデッキと室内床を繋げる

●空間を広く見せる方法
・リビングに収納を設けてスッキリさせる
・天井高を高くする
・横に長く大きな開口(窓)を設ける

ネットの情報などを参考にして、問題を解決する手段の引き出しを増やすこと自体はよいことだと思います。

ただ、手段のみを積み重ねてしまうと、せっかくの注文住宅なのに、よくある建売住宅のような間取りになってしまうこともよくあります。間取り迷子になって後で後悔しないようにするためにも、ネットの情報は「一つの引き出し」程度にとどめるとよいと思います。

土地を自分で探してはいけない

土地から購入して家づくりをする場合、多くの人が自分たちで土地を探した後、ハウスメーカーを選ぼうと考えます。しかし、ほとんどの場合、このやり方はおすすめできません。

土地から購入する場合は、まずハウスメーカー選びから始めるのがおすすめです。ハウスメーカーに土地探しを依頼しても、手数料はかかりません(ハウスメーカーの収益源はあくまで建物であるため、土地探しはボランティアになります)。そのため、選んだハウスメーカーに、土地探しを「丸投げ」してしまうのが、賢い土地の探し方といえます。


(イラスト:ひらのんさ)

不動産業者を通して、自分で土地を探そうとすると、思わぬトラブルに巻き込まれるリスクがあります。よくあるのが、建築諸費用がとてつもなく高い土地を勧められて契約してしまうケースです。都心部で特に多いのですが、立地の良さなどから不動産業者に勧められて契約したものの、いざそこの土地で建物を建てるとなったら、地盤補強費用や建設費用で通常の3〜5倍近い金額がかかることが後になってわかったという事例です。

もちろん、すべての不動産業者が悪いということではありませんが、基本的に不動産業者は土地を売ることが仕事です。誤解を恐れずに言えば、「土地さえ売れればいい」と考える不動産業者もいます。そのほかにも、不動産業者とやり取りをして土地探しをした結果、購入先の土地の隣家とトラブルに発展したケースや、土地の契約をする直前で土地の金額を吊り上げられたというケースもあります。

不動産の購入は思わぬトラブルが起きるので、もし自分で動く場合は、細心の注意を払いましょう。

収納を作りこみ過ぎてはいけない

家を建てた後、「収納が足りなかった」と不満や後悔を募らせる人がいますが、収納スペースを大きくするほど物は増え、捨てる機会も失われてしまいがちです。建物だって無限に大きくできるわけではありません。優先すべきは収納をつくることではなく、「持ち物を減らすこと」であり、それでも収納が足りなければ収納を設ける、という考え方が適切でしょう。

建物の断熱・気密性能など、後から簡単に変えることができないものは、最初によく突き詰めて考える必要があります。しかし、家族の成長や暮らしの変化に伴って、収納する物や量は変化していきます。そのため、最初に収納をつくりこみすぎると、長い目で見たときに、かえって小回りの利かない無駄な空間を生むことにもなりかねないのです。

そこで、おすすめしたいのが、「可変性のある間取り」です。ハウスメーカーから間取りを提案されたら、「将来的に追加で収納を設けられる余白スペースがあるか」を確認しておくと安心です。収納が不足するというリスクを軽減することができます。

また、物を整理していくと、常に室内に置いておかなければならない物は意外と少ないことに気が付きます。その場合は、庭に物置きを設置して、屋外で大丈夫な物はそこに収納してしまうのもアリでしょう。

余計な窓を設置してはいけない

今は昔と違い、窓を開けて換気することはあまりありません。日本の住宅には、24時間換気システムという設備が義務づけられているため、窓を開けずとも換気ができるからです。

しかし、日本では「風が通らないと湿気が抜けない」「湿気が抜けないと室内がカビる」という考え方が根強く、東西や南北など、直線で風が抜けるように窓を配置することが今も多々あります。この考えは、時代遅れです。日本は高温多湿であるうえ、花粉の影響もあるので、窓を開けて外の空気が気持ちいいと感じる期間は、実は年間を通じてかなり短いのです。


窓を開けて換気できますか?(図版:Isshiki)

そのため、しっかりと時代を捉えている住宅営業マンや設計士ほど、一部の例外を除いて、通風用の窓を設けることはあまりしません。余計な窓を設置すると、家の断熱性能の低下にも繋がります。

家づくりをする際は、それぞれの窓にはどんな役割があり、窓から何を入れて、何を入れないのか、これらをきちんと考えておきましょう。具体的な方法としておすすめなのが、「日射取得用窓」「採光用窓」「借景用窓」「視線を抜く用窓」という風に、それぞれの窓に「○○用窓」と名前を付けていくやり方です。

さらに、「庭へ出る用窓」「夏・冬の日射取得用窓」「道路からの視線いらない窓」というように、より詳細な窓の用途を書き足していきます。こうすることで、必要な窓はどれなのか、軒・庇の有無、窓の位置や形などをどうすれば良いかが明確になります。

畳数にこだわりすぎてはいけない

間取りを考える過程で、設計士や住宅営業マンに「LDKは何畳必要ですか」というようなヒアリングをされることがありますが、これには要注意です。なぜなら、各々のライフスタイルによって必要な広さは異なりますし、実際の広さ以上に「広く見えること」や「広く使えること」が重要な場合もあるからです。

実際の広さ以上に広く感じられる家にする方法には、大きく2種類あります。1つ目が「広く見せる」方法です。具体的には、敷地全体を活用する、視線の抜けを意識する、物を減らす、照明の重心を低くする、天井を低めにする、建具をハイドアにする、吹き抜けなどで1・2階を繋ぐ、などの手法があります。

2つ目が「広く使う」方法です。具体的には、ウッドデッキやぬれ縁などで外側と室内側の中間領域をつくる、建物外周部の壁や窓付近に居場所をつくる、階段や段差を活用して居場所を創出する、などの手法があります。


(図版:Isshiki)

この「広く見せる」や「広く使う」方法を用いることで、畳数に囚われずとも居心地の良い空間をつくることは可能です。私は、実際の広さよりも「広さ感」、実際の距離よりも「距離感」を感じられる間取りをつくることが重要と考えています。


優秀な設計士や住宅営業マンほど、具体的な畳数にフォーカスしたヒアリングはしません。要望通りの畳数で間取りをつくっても、必ず満足する間取りになるかといわれれば、そうとは限らないからです。数字の上では広くても、「広く見せる」や「広く使う」配慮がない場合、窮屈に感じてしまう場合もあるのです。

ここでご紹介した5つのNG行動以外にも、注文住宅での家づくりをする際は、気を付けるべきことがたくさんあります。住宅営業マンのセールストークを鵜呑みにすることなく、きちんと基本的な知識を身につけて施主力を高めることが、家づくりを成功に導く第一歩といえるでしょう。

(まかろにお : 住宅系YouTuber )