ミカンの「白い筋」あなたは食べる派? それとも…

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 冬を代表する果物の一つである「ミカン」。皮をむくと、果肉の周りに白い繊維のような筋がついています。あなたはミカンを食べるとき、この「白い筋」を“取る派”ですか。それとも“取らない派”ですか。「白い筋にも栄養があるのでは?」と考える人も少なくないようですが、実際のところはどうなのでしょうか。

 ミカンの果肉についている「白い筋」の正体と、含まれる栄養素について、管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

取らずに食べるとビタミンCの吸収率アップ

Q.そもそも「ミカン」とはどんな果物ですか。

岸さん「日本でいう『ミカン』とは、一般的には『温州(うんしゅう)ミカン』のことを指します。日本で収穫されるかんきつ類の約7割は、温州ミカンが占めています。

ミカンの旬は『極早生(ごくわせ)』に始まって、『早生(わせ)』『中生(なかて)』『晩生(おくて)』と10月ごろから3月ごろまで出回り、ピークは12月ごろです。今ではハウス栽培のおかげで年間通して出回っています。

ミカンは100グラムあたり49キロカロリーで、βカロテン、ビタミンC、カリウムが多く含まれています。さまざまな品種がある温州ミカンには、和歌山県の『有田みかん』や静岡県の『青島温州』など、産地や栽培方法によってブランド名がつけられているので、種類別に食べ比べしてみるのもいいですね」

Q.ミカンの果肉についている「白い繊維のようなもの」は何ですか。栄養も含まれているのでしょうか。

岸さん「ミカンの果肉を覆うようについている白い筋は、水や栄養を果実に届ける役割をもつ維管束で、ラテン語で『白』を意味する『アルベド』と呼ばれるものです。

白い筋には、食物繊維と『ヘスペリジン』(ビタミンP)が含まれています。ヘスペリジンはポリフェノールの一種で、毛細血管の強化や血圧の改善、動脈硬化の予防といった働きがあるといわれており、果肉部分よりも皮や白い筋、果肉を包む袋の部分に多く含まれます。皮を乾燥させたものは、漢方の生薬に使われます」

Q.ミカンの白い筋について、「取る」人と「取らない(そのまま食べる)」という人に分かれるようですが、この部分はどうするのがよいのでしょうか。

岸さん「先述のように、ミカンの白い筋や袋にはヘスペリジンが含まれているので、取り除かずに食べた方が、この成分を摂取できます。また、ミカンにはビタミンCも豊富に含まれますが、ヘスペリジンにはビタミンCの吸収率を高める効果もあるため、白い筋を取らずに食べることで効率よくビタミンCを摂取できるでしょう。

また、白い筋や袋には、腸内環境を整えたり、コレステロール値を下げたりする効果がある食物繊維の一種『ペクチン』が果肉の4倍も含まれているため、取らずに食べた方が、栄養価が高いことは確かです。

ただ、白い筋は口当たりが悪く、もそもそする感じが好きではない人もいるかと思います。無理のない範囲で摂取してみてください」

Q.ミカンをおいしく食べるためのポイントや、注意点とは。

岸さん「ミカンは呼吸の際、酸味のもととなるクエン酸を使うため、ミカンが酸っぱいときは1週間程度放置すると、酸味が抜けて味がまろやかになります。ただし、放置する環境によってはすぐに傷んでしまうので、十分に注意が必要です。

常温でミカンを保存する場合は、低温で乾燥した、日光の当たらない冷暗所がお勧めです。段ボールに入れたままだと通気性が悪く、箱の下の方にあるミカンが重みにより傷んでしまい、カビがまん延する原因にもなります。傷んだミカンは他のミカンにも影響するので、なるべく早く取り除くことが大事です。保存時は、できれば新聞紙を広げてその上に並べておきましょう。

ミカンをおいしく食べる方法として人気なのが、温める方法です。40度前後の湯に10分ほどつけたり、レンジやストーブで温めたりする人もいるようです。ふにゃっとした食感と優しい味わいが癖になります。また、おなじみの『冷凍ミカン』も根強い人気があります。半解凍すると皮もむきやすく、シャリッとした食感も楽しめます。

なお、ミカンの表面に白色や青色のカビが生えているときや、手に取ったときにブヨブヨしている状態のときは腐敗している恐れがあります。カビは全体に広がっている可能性があるため、その部分だけを取り除くのではなく、丸ごと廃棄した方がよいでしょう」