現地11月28日に行なわれたチャンピオンズリーグ第5節。ホームでアトレティコ・マドリードに1-3で敗れたフェイエノールトは、最終戦を待たずにグループステージ敗退が決定した。

 フェイエノールト、アトレティコ、ラツィオ、セルティックで構成されるグループEでは、もともと「フェイエノールトは3番手」と見るのが妥当であった。そのため大きな番狂わせはなく、早々にCLの舞台から去ることになった。

 ......というのは、あくまでの外からの見え方。戦う本人たちにしてみれば、敗戦には当然ながら落胆、失望が伴う。


W杯アジア予選2試合で5ゴールを挙げた上田だが... photo by AFLO

 試合終了のホイッスルが鳴ると、上田綺世はピッチに立ち尽くした。ほかの選手たちとの労いの流れに加わることなく、しばらくひとりの時間は続いた。

 上田にとって、それはどんな時間だったのか──。

「うーん、まぁ、なんかいろいろ考えちゃうんですけど。僕はなんていうのかな、あんまり感情も激しく出るタイプじゃないし、冷静に考えて常にプレーしているほうなので、やっぱああいう試合が終わった時に自分のなかでバーっと考える時間が必要というか、試合を整理する......そんな時間でした」

 しっとりと感傷的ではなく、苛立ちをどうにか抑えながら、それでも丁寧に話した。

 敗れはしたが、上田にとっては珍しく到来したチャンスだった。ここまでリーグ戦では10試合1ゴール、出場時間の合計は187分。いずれも試合終盤の途中交代で、先発は一度もない。負傷に苦しんでいたシーズン序盤とは違い、今は勝負できる状態にもかかわらずだ。

 チャンピオンズリーグ開幕から第2節までエースのサンティアゴ・ヒメネスが出場停止処分を受けており、上田はその間の出場をチームから期待されていた。だが、9月の日本対ドイツで負傷してしまい、9月下旬の初戦、ホームでのセルティック戦は欠場を余儀なくされた。

【CLで活躍すれば次の移籍につながるチャンスも】

「上田に大きな資金を費やしたのはCLのためだったから、大きな失望」

 アルネ・スロット監督は記者会見でこう発言した。アウェーでの第2節アトレティコ戦では復帰し、先発した上田は後半15分までプレーした。これが上田の今季ここまでの最長出場時間だ。

 そんな経緯からすると、第5節での後半開始から45分間の出場はとても長く、上田にとって大きなチャンスだった。だが、上田は得点を奪うことができず、チームは敗れ、グループステージ敗退も決定した。

 この45分間で、上田には手に入れたいものがふたつあった。まずはなにより、このチームで出場機会を増やすために指揮官の信頼を得ること。

「もっと信頼を得て、自分の時間を勝ち取らないと。信頼とともに出場時間は増えてくるものだと思うんですけど、今日みたいな試合で結果を残すのが一番、信頼を得られる。そういったチャンスだったと思うと、今日はちょっと逃したのかなと思います」

 抜群の動き出しからパスを受け、シュートまで持っていく場面は数回見られた。パフォーマンスは決して悪くはなかった。だが、結果にはつながらなかった。

 そしてもうひとつ、手に入れたいものは、キャリアにおいてのCLでの結果だ。

「まだリーグ戦もいっぱいありますし、ひとつずつやっていくんですけど、CLという大会を僕のキャリアのなかで経験するうえで、もっと上に行きたかった。自分の年齢も若くないので、今年は一番のチャンスだった。まぁチャンスっていっても(試合に)出なきゃ意味ないですけど。そういう貴重な場を逃してしまったのは悔しいです」

 チャンピオンズリーグは誰にでも手の届く大会ではなく、所属クラブがいつでも参加できるわけでもない。もちろん今後も機会はあるだろうが、上田は今年を「貴重な1回」と捉えていたわけだった。

 上位進出の先には、フェイエノールトでのさらなる活躍もあったかもしれないし、欧州でのより大きなマーケットに知られることで新たな飛躍──つまり移籍にもつながったかもしれない。その大きなチャンスを逃した、というふうに聞こえた。

【前を向いて、足を止めるわけにはいかない】

 だから、収穫はない。

「勝てば(収穫に)つながったかもしれない。だけど(試合に)出られていない状況なので、チャンピオンズリーグというよりも、自分の(出場機会が増える)きっかけがもっと必要かなと思います」

 チャンピオンズリーグで負けはしたが、それでもシーズンは続いていく。上田は足を止めるわけにはいかない。

「立場的にもやり続けるしかない。うしろはない。前を向いてやる。CLは終わっちゃいましたけど、シーズンもキャリアも続いていく。これを受け止めてまたひとつ、きっかけにできたらいいかなと思います」