1件あたりの申告漏れ所得金額は平均3367万円に

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毎年恒例の「申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」が、今年も公表された。1位は「経営コンサルタント」で2年連続。トップ10入りは5年連続の不名誉な記録だ。

前年2位だった「システムエンジニア」や、過去に上位だった「風俗業」「キャバクラ」はトップ10から姿を消した。一方、3位の「ブリーダー」は2年連続、飲食系の4位「焼肉」と9位「バー」は5年ぶりのランク入りとなった。

1件当たりの追徴課税額では「くず金卸売業」がトップ

このランキングは、毎年11月に公表される国税庁「所得税及び消費税調査等の状況」の末尾に「参考計表」として付記されるもの。今年は11月22日に発表された。

今回の発表は2023年6月までの1年間に実施した令和4事業年度で、5位以下には「タイル工事」「冷暖房設備工事」「鉄骨、鉄筋工事」「電気通信工事」と工事系が並ぶ。

なお、ランキングの正式名称は「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」。申告漏れ件数ではなく「個人の1件当たりの申告漏れ所得金額」の多い順に並んでいる。

経営コンサルタントの場合、1件あたりの申告漏れ所得金額は平均3367万円。1件当たりの追徴課税額(含加算税)は676万円だ。ただし、どのような仕事をしている人たちを指すのかは具体的に記されていない。

ちなみに、1件当たりの追徴課税額(同)で比べると、くず金卸売業が平均952万円で、経営コンサルタントを大きく上回るダントツのトップとなる。

所得税や消費税の税務調査は追徴課税を行うことが目的であり、ランキングも1件当たりの追徴課税額でやってもいいのではないだろうか。申告漏れ件数のランキングも気になるところだ。

「クラウドソーシング」や「有料メルマガ」も積極的な調査対象に

「所得税及び消費税調査等の状況」には、トピックスとして当該事業年度の主な取り組みも記されている。ここ数年で共通しているのは、「富裕層」と「海外投資等を行っている個人」、そして「インターネット取引を行っている個人」に対して積極的な調査を行っていることだ。

有価証券・不動産等の大口所有者や経常的な所得が特に高額な個人、海外投資等を積極的に行っている個人などの「富裕層」の申告漏れ所得金額は、総額で980億円と過去最高を更新した。

「インターネット取引を行っている個人」とは、インターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミー等の新分野の経済活動にかかわる取引や、暗号資産(仮想通貨)等の取引を行っている個人を指す。

取引区分別の調査状況は、「ネット通販等」が35.6%、「シェアリングビジネス」が26.4%、「デジタルコンテンツ」が7.6%、「ネット広告」が6.8%など。シェアリングビジネスには、民泊やカーシェアリング、クラウドソーシングなど、デジタルコンテンツにはアプリ作成・配信、有料メルマガなどが含まれる。

5年連続トップ10入りの「経営コンサルタント」はどのような業務を行う人が多いのか記載されていないが、例えば有料メルマガの発行で収入を得ている人も含まれている場合もあるのかもしれない。

過去には「内科医」や「行政書士」も上位に

申告漏れ所得金額」ランキングの推移には、世相が反映されている。

令和2事業年度の3位にワクチン接種などを行う「内科医」が、令和3事業年度の10位に補助金・助成金の申請代行を行う「司法書士、行政書士」が入っているのは、いずれもコロナ禍の影響だろう。

令和4事業年度の2位「くず金卸売業」には金属価格の高騰が、3位の「ブリーダー」にはコロナ禍の巣ごもりペット需要が、飲食系や工事系のランクインにはコロナ明けの反動が影響していると見られる。