【ジャパンC】世界最強馬イクイノックス 完全無欠の王者にはもう、言葉はいらない

イクイノックスでジャパンCを制して感極まるC.ルメール騎手 写真:日刊スポーツ/アフロ
第43回ジャパンC回顧
「もう、言葉はありません」――
ジャパンCのレース後、イクイノックスの鞍上を務めたクリストフ・ルメールはパートナーの走りに最大限の賛辞を贈った。
昨年の天皇賞(秋)から始まったイクイノックスのGⅠ連勝劇は振り返ると、どれもがドラマチックなものばかりだった。
最後の直線で逃げるパンサラッサに15馬身近く離されるというまさかの展開になったこのレースは上がり3ハロン32秒7という驚異的な末脚で伸びてきて、最後にはパンサラッサを差し切り勝利。
キャリア5戦目での天皇賞(秋)制覇は史上最短キャリアというおまけまでついた。
続く有馬記念は最大のライバルとされたタイトルホルダーを追う形で脚を溜めると、4コーナーを回る当たりから仕掛けるというロングスパートを敢行。後続馬たちを寄せ付けずに快勝して、日本競馬界の頂点に君臨。
ちなみにキャリア6戦目での有馬記念制覇も史上最短キャリアとなり、いつしか彼は「天才少年」と称された。
少年が大人になると、もう手が付けられないほどの強さを得た。年明け緒戦のドバイシーマクラシックを逃げ切ると、帰国して迎えた宝塚記念は大外一気で差し切り勝ち。
連覇を狙った天皇賞(秋)は前年とは異なり3番手を追走し、直線では前を行く馬たちに並ぶことなく先頭に立って押し切って軽々と連覇達成。しかも勝ち時計は1分55秒2というレコードタイムを叩き出した。
見る者を圧倒し続ける走りを常に見せてきたイクイノックスを「言葉がありません」とルメールが評するのも無理はない。そしてそんなイクイノックスの真骨頂が見られたのが、今年のジャパンCなのかもしれない。
ドバイシーマクラシック制覇以降、世界最強の座をほしいままにしてきたイクイノックスと今年の牝馬三冠クラシック戦線で圧倒的な強さを見せてトリプルティアラに輝いたリバティアイランドが初めて顔を合わせるということで戦前から大盛り上がりとなったこのレース。
「この2頭のガチンコ勝負が見たい」――
ファンの願いは単勝オッズにも如実に表れていたように思う。1番人気イクイノックス1.3倍、2番人気のリバティアイランドで3.7倍。
3番人気のドウデュースは13.2倍と大きく離されるなど、文字通りの二強対決。しかも枠順も隣同士ということでファンの興味はどちらが勝つかに絞られていた。
8万人を超える大観衆が集まった東京競馬場。2頭が本馬場に姿を現した瞬間、地響きのような大歓声がこだました。
そうした喧噪の中を2頭は一切気にせずに帰し馬に入っていく。この2頭がどんなレースを見せるのか、それともこの2頭を任す馬が現れるのか。ファンのボルテージは最高潮にまで上がった。
迎えたスタート。
どの馬も出遅れることなくゲートを出ていくと、ハナを奪いに行ったのはパンサラッサとタイトルホルダー。ともに逃げてGⅠを制した2頭だが、外から被せるように上がっていったパンサラッサの逃げ脚が軽快であっという間に後続を離す大逃げを打つ形になっていった。
場内がどよめく中、イクイノックスは天皇賞(秋)の時と同じく3番手、そしてリバティアイランドはそのすぐ後ろの4番手に。
前を行くライバルをマークする形でポジショニングを普段よりも前にしたリバティアイランドに対し、イクイノックスの位置取りは極めて自然なもの。
もしかしたら、ルメールもイクイノックスもわかっていたのかもしれない。「この位置に付けられれば負けない」と。
道中は脚を溜めるために後方に付けて、直線で末脚を爆発させて勝ってきた3歳時と比べると、4歳になってからのイクイノックスは宝塚記念以外、すべて3番手以内の位置でレースを進めていた。
ドバイシーマクラシックで逃げ切ったことで「前に付けてもレースができる」ことを実証した彼はゲートを出たなりの位置でのレース運びを会得したのかもしれない。
だからだろうか。パンサラッサが1000mを57秒6というハイペースで逃げる中を3番手で追走するイクイノックスを見て、筆者は不安に駆られることはなかった。
「イクイノックスの力を持ってすれば、これくらいのペースでも十分こなせるはず」――
イクイノックスのこれまでを見てきた多くの競馬ファンはきっと、そう信じたことだろう。そんなファンの想いが、最後の直線で現実のものとなった。

2023年ジャパンカップ(GI)をイクイノックスが優勝 写真:日刊スポーツ/アフロ
パンサラッサが大逃げを打ったままで迎えた最後の直線。
イクイノックスは残り400mを過ぎたところからエンジンがかかり、隣にいたタイトルホルダーを置き去りにすると残り300mを切ったところでパンサラッサを捕まえて先頭に。
並ぶこともなく抜き去るその様子は昨秋の天皇賞(秋)と比べるとはるかに余裕を感じる走りだったのは間違いない。
そこからの残り200mはイクイノックスとルメールの2人だけの世界だった。
後ろからリバティアイランドが懸命に追いかけてくるもその差は詰まることがなく、逆に広がっていくばかり。
ルメールがステッキを振るうこともなく、ただひたすらにトップスピードで走り続けたイクイノックスは気が付けばリバティアイランドに4馬身の差をつけてゴールに飛び込み、2強対決と称されたジャパンCを見事に制してみせた。
ウイニングランを終えたイクイノックスの馬上にいたルメールの目には光るものがあった。これだけの舞台でこれだけの完璧な走りを見せたことに感動してのことだろう。だからこそその直後のインタビューで冒頭の言葉が出てきた。
競走馬として完成し、真の強さを見せたイクイノックス。青鹿毛の王者が魅せた完全無欠な走りを見た競馬ファンは、彼の雄姿を忘れることはないだろう。
■文/福嶌弘
■第43回ジャパンカップ(GI)着順
11月26日(日)5回東京8日 発走時刻:15時40分
着順 馬名(性齢 騎手)人気
1着 イクイノックス(牡4 C.ルメール)1
2着 リバティアイランド(牝3 川田将雅)2
3着 スターズオンアース(牝4 W.ビュイック)5
4着 ドウデュース(牡4 戸崎圭太)3
5着 タイトルホルダー(牡5 横山和生)4
6着 ダノンベルーガ(牡4 J.モレイラ)6
7着 ヴェラアズール(牡6 H.ドイル)9
8着 スタッドリー(牡5 T.マーカンド)13
9着 イレジン(セ6 M.ヴェロン)10
10着 ディープボンド(牡6 和田竜二)8
11着 ショウナンバシット(牡3 M.デムーロ)12
12着 パンサラッサ(牡6 吉田豊)7
13着 インプレス(牡4 三浦皇成)14
14着 フォワードアゲン(せ6 黛弘人)16
15着 ウインエアフォルク(牡6 藤田菜七子)11
16着 トラストケンシン(牡8 荻野極)17
17着 チェスナットコート(牡9 田辺裕信)15
18着 クリノメガミエース(牝4 吉村智洋)18
※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。
