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 今回のオーストリア代表戦における重要性については、母国デビュー戦となったトルコ代表戦での敗戦後、そしてユーロイヤーに向けた最後の試合、加えて次戦までまだ4ヶ月もあるということからも、いかに大きなインパクトをもつものであるかは重々に理解していた。実際にそれは前日の会見の中で自ら口にしていたことであり、「我々が歩んでる道への確信を強める」ことを期待していたのである。だが蓋を開けてみればあらゆる点において脆弱で価値のないパフォーマンスを露呈。もはや誇りをかけた自国開催でのユーロの成功への信頼は失なわれていく一方だ。米国の地で有望なスタートを切った新生ドイツ代表だったが、その後は3試合で未勝利。とりわけトルコ代表での敗北は選手側も認める「挫折」であり、そして今回のオーストリア代表戦でも失点を重ねての敗戦は、その意欲に欠け支離滅裂なパフォーマンスという点において、ハンジ・フリック代表監督の息の根を止めた日本代表戦における敗戦劇(1−4)をまさに彷彿とさせるものでもあった。

 7ヶ月後のユーロまで、もはやまった無しという状況下で突きつけられた、この11月の代表戦期間における大失敗を分析する上で、ナーゲルスマン監督は自分自身のこれまでのアプローチについて自問自答していかなくてはならないだろう。この2試合では大胆な選手起用を行い、そのリスキーなアプローチは選手たちに過負荷をあたえて不安定にさせており、トルコ代表戦での開始20分間については説得力ある攻撃サッカーを展開するも(後半で立て直した部分もあったが)、オーストリア代表戦では開始当初から身の毛がよだつような不満材料のオンパレードという姿をピッチで露呈。またもや守備の安定化への兆しなど見られることなく、今年1年だけで11試合中23失点を記録。これは1956年以来となる多さである。加えて攻撃面においても今回は創造性、正確性、信念というもののどれもが欠如。得点への脅威などみられず、そもそもどういった指示を与えていたかさえみえてもこない。枠内シュートを放ったのはその後に1点をおいかける展開で不用意に退場処分を受けたリロイ・サネの1本のみだ。ちなみにこの退場でサネはユーロに向けた残り準備の試合の大半を不在ということになる。

 2ヶ月前に就任したばかりのナーゲルスマン監督だが、その時よりも明らかに工事現場の数は増えてしまった印象だ。もう軸となるものも足場さえもみえない。なぜ米国ツアーで好印象を残していた、パスカル・グロースを起用しなかったのであろう?これまでリーダーシップを発揮してきたキミヒを先発から外し、代わりに起用したレオン・ゴレツカだったが事態が好転することはなかった。トルコ戦での敗戦後にナーゲルスマン監督は、ハヴェルツを敢えて左サイドバックで起用したことへの批判の声を冷たくあしらい、いかにこれが正当な判断であるかを強調していたものの、もはや明らかに手から滑り落ちてしまった舵を再び手に取り、同じやり方にこだわり抜こうとしたところで、船上のクルーたちが納得して追随していけるとは、到底想像し難い。