家づくりで知っておきたい、「北側斜線制限」。北側の道路側、または、北側の隣地側に面した建物部分の高さを制限し、隣家の日当たりをよくするためのルールです。この制限のせいで、天井が低くなるのはもちろんですが、収納スペースのつくり方や室内ドアの選び方に制約が出ることも。ハウスメーカーで注文住宅を建てた日刊住まいライターが、自宅を例にレポート。

購入したのは北側斜線制限のある土地

わが家は夫と小学生の子ども2人の4人家族です。5年前に開発分譲地だった今の土地を、ハウスメーカーに紹介されて購入しました。

その地域は、第一種低層住居専用地域。建物の高さを10mまたは12mの高さにする制限、建ぺい率、容積率など制限内容が厳しい地域です。建物の制限がある分、大きな商業施設などはないので、とても静かに暮らせる住宅地でもあります。

土地の購入を決めるときに、「北側斜線制限がある」との説明がありました。北側の隣家にも、きちんと日当たりが確保されるように、設計する必要があるとのこと。

もちろん制限がない土地の方が、自分たちの希望どおりの家を建てられることは間違いありません。しかし、わが家にとってはその土地が、環境的にも予算的にも合っていたこともあり、制限がある部分は仕方ないと購入。家づくりをスタートしました。

 

屋根の形状に北側斜線制限の影響が

契約時に説明があったように、北側斜線制限の影響はいくつかありました。そのひとつが、屋根の形状です。

北側の屋根(上の立面図の左側)は南側(同図右側)よりも、低い屋根となり、高さを抑えられています。ですから、実際外からわが家を見ると、左右対称の屋根ではありません。北側の屋根の傾斜がきつくなってます(それだけでなく、隣地とのあきも法規で決められている1mよりも後退)。

建築当時は気になるかなと思いました。しかし、実際に暮らして5年たちますが、屋根までじっくりと家の外観を見ることは少なく、気にしたことはありません。

北側の部屋は天井が低く、窓を小さくする結果に

北側の屋根の傾斜がきつくなったことによる影響は、部屋の天井に出てきました。

わが家では、北側の部屋は子ども部屋となっています。この天井の一部を勾配天井にしなければならなくなりました。そのせいで、天井が低くなり、どうしても圧迫感があるのです。

 

勾配天井になったことで、北側の壁の高さも低くなることに。結果、窓も小さくなりました。少しでも明るく風通しをよくしたかったので、窓は北側だけでなく、西側にも設置することになりました。

それ以外にも、いろいろ明るい部屋にする工夫をしました。床はあえていちばん明るいフローリングの色に。また、アクセントクロスは使わず、すべて白で統一。カーテンも白に。こうした工夫をしたことで、そこまで室内の暗さは感じていません。

 

天井が下がったことで収納にも影響が…

天井が下がったことで、北側にある子ども部屋の収納も、小さくなってしまいました。

南側の部屋の収納は幅160cm、高さ200cmの大きなタイプです。それに対して北側の部屋は、天井が低い影響で大きなクローゼットが設置できず…。高さ120cmの小ぶりのクローゼットになってしまいました。

 

勾配天井がかからない高さの場所にもうひとつ、高さ200cmのクローゼットを設けましたが、ただ幅は70cmたらず。ただしこの高さなら、ポールもつけられ衣類をかけることもできます。

もっとも、勾配天井にしなくてよければ、南側の部屋と同じように、大きなクローゼットを1つつくるだけですんだはずです。

引き戸にしたかったトイレのドアにも影響が!

北側の高さを下げたことで影響を受けたのは、子ども部屋だけではありません。同じく北側にあるトイレにも影響が出ました。子ども部屋と同じく、天井が低くなってしまったのです。

階段を上ってすぐの通路の途中にあるので、扉の開閉で危険が生じないように、当初は引き戸を希望していました。しかし、天井が低いことで引き戸は設置できないとのこと。開き戸になってしまいました。

 

開き戸になったことで、扉をあけると廊下をふさいでしまいます。家族のだれかが通るときは、扉にぶつからないように静かにあけるなど配慮が必要に。

トイレを別の場所にすることで、通路に干渉しない間取りも提案されました。しかし、ほかの部屋の優先度など総合的に判断して、最終的にこの場所になりました。ただやはり少し不便を感じることは多いです。

契約時に屋根の形状が変わることや、天井が下がることは想定できていましたが、収納のことや扉への制限まではイメージができませんでした。