旅行は楽しいですが、荷造りが憂鬱という人は少なくありません。なにをもって行けばいいか迷った挙句、あれもこれもとスーツケースに入れて重たくなってしまい、行く前から疲れてしまう…なんてことはありませんか?

「旅の間は限られた荷物で過ごすと、なにが本当に自分に必要なものかが見えてきます」と語るのは、人気スタイリストで、旅の達人でもある地曳いく子さん。ここでは、大人旅についてつづった新刊『大人の旅はどこへでも行ける 50代からの大人ひとり旅』(扶桑社刊)より、「荷造りのコツ」にまつわる文章を抜粋して紹介します。

不安なときほど、旅の荷物は増えていく

これは私だけかもしれませんが、連日の仕事続きで疲れていたり、精神的に不安だったりするときほど旅の荷物が多くなります。心配だから必要なものだけに絞り込めなくなり、あれもこれも「もしかしたら使うかもしれない」と、どんどん荷物が増えていくのです。

そして肝心なもの、たとえばスマホ充電器や携帯用バッテリー、コンタクトレンズケースなどを忘れてしまうのです。

●「旅は非日常を求めていく」ことを思い出す

ここで告白しますが、以前台湾に仕事で行ったときに、現金やクレジットカードが入ったお財布を家に忘れてしまったことがありました。

羽田空港で気がついたのですが、搭乗時間が迫っており、家に取りに帰る時間はありません。幸いパスポートケースに入っていた旅行用のクレジットカード(キャッシング機能つき)と現金200米ドルがありました。空港からホテルの移動はスマホのUberアプリなどを駆使して乗りきりました。

そのときはギリギリまでほかの仕事をしていたため、パッキングの判断力が鈍り、荷物がいつもより多かったのです。で、荷物は多いのにお財布なし! もう笑えますよね。

荷物が少なかったら、お財布を入れ忘れたことに気がついていたかもしれません。

それからは、荷物が多くなりそうなときでも、「旅は非日常を求めていく」ということを思い出して、荷物を減らすことにしました、お財布とパスポート以外は(笑)。

普段自宅で物に囲まれて便利に暮らしている日々と違って、旅の間は限られた荷物で暮らす。そうするとなにが本当に自分に必要なものかが見えてきます。服だってそうです。数を減らして持っていくと、そのなかで工夫をして、普段は考えられないようなすてきな組み合わせを発見することがあります。

●ポーチごとに入れるものを決める

ほかにも、荷物を減らすといいことがあります。チェックアウトのときに、パッキング時間がすごく短くなるということです。

私は国内旅行2〜3泊の場合、大きめトートバッグの中に大小4つのポーチを入れて出かけています。下着靴下ポーチ、洗面用具ポーチ、コスメポーチ、スマホPC周りポーチというように、ポーチごとに入れるものを決めてあるのです。

このパッキング術にしてからはチェックアウト前、10分でパッキング終了です。焦らなくてすみますし、余った時間でコーヒーを飲んだりゆっくり朝ごはんを食べたりすることもできますね。

荷物を減らせれば旅の時間は増えます。時間を有効に使いましょう。

●コインロッカー代、宅配便代は必要経費と心得よ

なにかと節約するのは大切ですが、大人がケチっていけないと思うのが、コインロッカー代と宅配便代です。

ホテルをチェックアウトして目的地に行く場合、そのままホテルに荷物を預けるのも手ですが、その日最初の目的地の美術館などが、その後の移動に利用する駅との間にあった場合などには、私は迷わず美術館のコインロッカーを利用します。

美術館のコインロッカーは無料のところも多いですし、日本では百円硬貨を入れて使用後に返還されるシステムをよく見ます。「基本、美術鑑賞は手ぶら」主義の私です。

美術館以外でもコインロッカーを賢く利用すると、とても快適です。旅の途中に神社を参拝したいときも、最寄り駅のコインロッカーに荷物を預けて手ぶらで行動します。そうすると疲れ方が全然違います。たとえ大きめトートバッグ1つでも、ずっと肩にさげて歩くと地味に疲れが溜まります。

コインロッカー代400円をケチって、果てしなく続く(あくまでも私の感想です)神社やお寺の階段を上る気にはなれませんし、心と体力に余裕を持ってお参りするのが好きだからかもしれません。

また、帰宅のときに、宅配便もよく利用します。日本のホテルでしたら、フロントにお願いするとパッキング用の段ボール箱(無料だったり有料だったりしますが)を用意してくれることが多いです。チェックアウトの前の晩にお願いしておくといいでしょう。

伝票も前もってもらっておけば余裕をもって記入できますし、チェックアウト時に焦らなくて済みます。

●空港のサービスも上手に活用

飛行機を利用するときは空港から送ることもよくあります。国内線の場合、チェックインして預けた荷物を到着地空港で受け取ることなく、そのまま宅配便で自宅まで送ってくれるサービスがありましたので、各航空会社の公式サイトをチェックしてみてくださいね。

国際線を利用した場合でも、成田や羽田の空港出口付近にある宅配便窓口からスーツケースを送ってしまいます。たいてい翌日の午前中に自宅に着きます。

帰りに手ぶらだと本当に疲れが違います。宅配便代は、大きさにもよりますが、2000円くらいで送れると思います。ぜひ一度試してくださいね。

 

『大人の旅はどこへでも行ける 50代からの大人ひとり旅』(扶桑社刊)では、荷造り、旅ファッション、ホテルや飛行機選びなど、大人ひとり旅のコツをたくさん紹介しています。