日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「まるで詐欺に遭った気分でした」と後悔を吐露するのは主婦の秀美さん(仮名・40代)です。結婚後に夫から子どもを望まない考えであることを打ち明けられたものの、母親になる夢はそう簡単には諦められず。本音をぶつけ合った夫婦が出した結論とは?

夫とはケンカばかり。でも、彼の考えは理解できた

子どもがいる人生を望んで、34歳のときに婚活をした秀美さん。ところが夫は「こんな夢も希望もない世の中に生まれてくる子どもがかわいそうだ」と考えていました。しかもそれをカミングアウトされたのは結婚して1年が過ぎた頃でした。

●繰り返される大ゲンカ。精神的にも限界がきた

子どもが欲しいと考えていた秀美さんは、行為をしようとせず、子どもはいらないの一点張りを決め込む夫と衝突することが増えました。しかし夫からは大きな声で「そんなにセックスがしたいのか? そこまで性欲が強いとは思わなかったよ」と怒鳴られます。

「このままでは望んでいた子どもがつくれない。そしてなにより、自分は愛されていないのではないかという不安も感じ、とても悲しい気持ちでした。行為がうまくできなくても、その気があればなんとかなるという私の考えは完全に甘かったんですよね。結婚前になにも話してくれなかった夫に対して、不信感をもちました」と秀美さん。

●傷ついたり、バカをみることが多かった夫の人生

ただ秀美さんは、夫のいいところも全部知っているからこそ、一概にその考えを否定しにくかったともいいます。

「夫は読書が好きで社会学や哲学にも精通している、いわゆる頭のいい人です。ただ複雑な家庭環境で育ったこともあり、性格的にねじくれているところがありました。つき合う友達も、控えめで物静かで、似たようなタイプの人ばかり。なんというか、ちょっと歪んでものをみてしまう部分があって…。多分そうしないと傷ついたり、バカをみるような経験をしてきたことが大きく影響しているのだと思います。夫のそういうバックボーンを知っている分、『子どもがこの生きにくい世の中に生まれてくるのはかわいそうだ』という本音が理解できてしまって、このまま自分の意思を押し通すべきなのかすごく悩みました」

夫から怒鳴られて「この人とはもう無理だ」

夫から「そんなにしたいのか?」と怒鳴られて、「だって子どもが欲しいんだもん」と言い返すような大喧嘩が続いた頃、この人とはもう無理なんだな、だまされた、夫婦なのにできないなんて、もう子どもはもてないから離婚するしかないなど、様々な思いがめぐった秀美さん。夫に対し、心のシャッターを下ろして、口もきかない日々が続きました。

●一人で抱え込んだレスの悩み

だれかに相談はできましたか? と問いかけると、秀美さんは首を横に振りました。

「一度だけ、義理の母に相談してみようかと思ったこともありました。けど、さすがに無理でしたね。なんか私だけしたい気持ちがあるのを話すのが恥ずかしく思えてしまって」

●海外なら立派な離婚理由になる

レスに陥ったほかの家庭はどうしているのかとネットを検索した秀美さんは、海外ではレスが原因で離婚することも多いことを知り、実際にこの結婚生活をやめようとも思ったそう。

「レス以外の不満はなかったので、なかなか踏みきれませんでした。子どもは欲しくないといいながら、もしかしたら行為が苦手だということが影響しているのかもしれないと思って…。子どもがいらないだけなのか? 行為が嫌なのか? ここを切り分けて、冷静に夫と話し合いたいと思いました」と秀美さん。

夫もこのまま口をきかないような夫婦関係はよくないと思っていてくれたようで、お互い冷静に腹を割って本音を話し合うことができたといいます。

●話し合いを重ねてレスの夫婦が出した結論

「夫には『子どもを望まない人生を選ぶなら離婚したい。でも、行為をしたくないだけならば、体外受精という方法もあるから考えてほしい』とダイレクトに2択を突きつけました。すると『秀美の母になりたいという願いを叶えてあげたい』と言ってくれたんです。それで体外受精での妊活なら協力するという話になって、仲直りできました」

レスの問題は解決しないままではありますが、わだかまりは解けて、妊活をスタートさせることに。そのお話はまた次回。