ハーバード大学の学生団体が「パレスチナ周辺で発生している暴力の責任はイスラエル政府にある」とする声明を発表した結果、声明に賛同した学生の顔写真を印刷したトラックがキャンパス周辺を走行する事態が発生しました。学生団体の声明に対しては複数の教員が否定的な意見を投げかけているほか、声明に賛同する学生の個人情報がインターネット上に公開される事態も発生しています。

As Students Face Retaliation for Israel Statement, a ‘Doxxing Truck’ Displaying Students’ Faces Comes to Harvard’s Campus | News | The Harvard Crimson

https://www.thecrimson.com/article/2023/10/12/doxxing-truck-students-israel-statement/

2023年10月7日(土)にガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」がイスラエルへの攻撃を開始しました。攻撃に対応する形でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「我々は戦争状態にある」と宣言。また、アメリカハマスによる攻撃の直後にイスラエルへの軍事支援を始めており、2023年10月12日(木)にはアントニー・ブリンケン国務長官がネタニヤフ首相と共同会見を開いてイスラエルへの支持を改めて強調しました。

アメリカ政府はイスラエルへの支持を表明していますが、すべてのアメリカ人がイスラエルを支持しているわけではありません。例えば、ハーバード大学の学生団体である「ハーバード大学パレスチナ連帯委員会(PSC)」は「責められるべきはアパルトヘイト政権だ」「組織化された土地の強奪や、日常的な空爆、軍事検問所での恣意(しい)的な拘束、標的を絞った殺害による強制的な家族の分離に至るまで、パレスチナ人は突然の死に恐れながら生きることを余儀なくされた」と記したイスラエルへの非難声明を発表しており、33の学生団体からの賛同を集めています。



しかし、PSCの声明にはハーバード大学の教員や連邦議員から非難が集まることとなりました。例えば、ハーバード大学でコンピューターサイエンスを研究するボアズ・バラク教授は「(PSCの声明に)署名した人々はテロ、レイプ、殺人を容認している」と述べ、声明への賛同者を非難しています。





さらに、ハーバード大学元学長のローレンス・サマーズ氏は「ハーバード大学に所属して50年になるが、これほど幻滅したことはない」「すべての暴力はイスラエルの責任だとする道徳的に許されない発言によってハーバード大学が定義づけられてしまった」と述べ、PSCの声明への不快感を示しました。





PSCによる声明は言論での非難を呼んだだけでなく、声明の賛同者を標的にした攻撃的な活動も引き起こしてしまいました。ハーバード大学の学生新聞「The Harvard Crimson」によると、2023年10月10日(火)の時点で声明に署名した学生の氏名・学年・SNSのプロフィール・写真・出身地といった個人情報が少なくとも4つのオンラインサイトに掲載されていたとのこと。さらに、2023年10月11日(水)〜12日(木)に「PSCの声明に賛同した学生の顔写真を印刷したトラック」がハーバード大学のキャンパス周辺を走行する事態も発生しました。



また、学生の顔を印刷したトラックの近くに保守系のニュース監視団体「Accuracy in Media」のアダム・ギレット代表が立っていたことも報告されています。



PSCの声明や賛同者に対する非難や攻撃的な活動が現れた後もPSCは活動を続けており、2023年10月12日(木)にはイスラエルとガザ地区の死者を悼む会を開催したほか、2023年10月14日(土)には「ハーバード大学はパレスチナ人学生を支援しておらず、大量虐殺に加担している」と主張する集会を開催しています。集会には、1000人以上の人々が参加したとのことで、以下のムービーには参加者らが「パレスチナに自由を!」とシュプレヒコールをあげる様子が記録されています。

More Than 1,000 Rally in Harvard Yard to ‘Free Palestine’ Ahead of Expected Ground Invasion of Gaza - YouTube