イタズラ系ユーチューバーは、ショッピングモール内でフードデリバリーのために商品を受け取っていた男性に近づき、音声をスマホから流し続けた(画像は『FOX 5 DC 2023年9月29日付「Jury acquits delivery driver of main charge in Dulles Town Center shooting of YouTube prankster」』のスクリーンショット)

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今年4月、米バージニア州のショッピングモールで銃撃事件が発生した。イタズラを行う迷惑系ユーチューバーが動画撮影のためにフードデリバリーを行っていた男性に絡み、あまりのしつこさに恐怖を覚えた男性は、所持していた銃を取り出してユーチューバーに向かって発砲した。ユーチューバーは被弾して病院に運ばれたが、命に別状は無かった。男性は裁判で複数の罪に問われたものの、ユーチューバーを銃撃した件については無罪の評決が出たと、米ニュースメディア『WTTG』などが報じた。

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事の発端は4月2日、米バージニア州ラウドン郡スターリングにあるショッピングモール「ダレス・タウン・センター(Dulles Town Center)」にて、YouTubeチャンネル「Classified Goons」を運営する、タナー・クックさん(Tanner Cook、21)が動画の撮影を行ったことだった。タナーさんはイタズラを仕掛ける動画で人気を集めているユーチューバーで、フォロワー数は5万8000人以上、平均収入は月に2000〜3000ドル(約29〜44万円)と報道されている。

今回ターゲットにされたアラン・コリーさん(Alan Colie、31)は当時、フードデリバリーを行っていて、同ショッピングモール内の店舗に配達商品を受け取りに来たところだった。当時の様子を捉えた動画には、商品を受け取ったアランさんにタナーさんが近づくと、何の説明もなく自分のスマホを突き出し、何度も同じ音声を流す様子が映っている。

突然のことに困惑するアランさんに、タナーさんは無理矢理聞かせようと、自身のスマホをアランさんの顔に押し付けるように近づけている。アランさんは止めるように言ったり、会話をしようと話しかけたりと試みるが、タナーさんは無言を貫いている。この状況にアランさんは次第に恐怖を感じ始めたようで、タナーさんのスマホを振り払い立ち去ろうとするが、タナーさんはしつこく追いかける。そしてアランさんが再び「やめろよ」と言うと、所持していた銃を腰から取り出し、タナーさんに向けて発砲したのだ。

この発砲音を聞いて、ショッピングモール内にいた買い物客はパニックに陥った。アランさんが警察に取り押さえられ、逮捕される様子を捉えた映像も別の動画で公開されている。左胸の下部を撃たれたタナーさんは病院へ運ばれたが、幸いにも命に別状は無かった。

この一件で、アランさんは公共の場で発砲したことや、悪意のある傷害を意味する加重故意傷害などの容疑がかけられ、9月28日、同州の地方裁判所にあたる「ラウドン郡巡回裁判所(Loudoun County Circuit Court)」で裁判が開かれた。アランさんは「自己防衛のために撃ちました」と、正当防衛であったと主張し、無罪を訴えた。

また、アランさんの弁護士であるアダム・プイヤード氏(Adam Pouilliard)は、「アランさんは当時、身長195cmもあるタナーさんに脅されているように感じていました。タナーさんはアランさんが怯えるような反応をするよう、わざとこのような行動を取り、視聴者の興味を引こうとしたのです。彼の動画は、意図して人々を混乱させようとしているものです。彼にとって、人々が恐怖を感じるかどうかなどは関係なく、今も動画を投稿し続けています」と、タナーさんの行為が悪質なものであると主張した。

陪審員らはアランさんとタナーさん双方の主張を聞き、アランさんの銃の使用が、本当に正当防衛であったかどうかを中心に審議を行った。そして約5時間にも及ぶ審議の結果、アランさんの自己防衛という主張が認められ、加重故意傷害容疑は無罪という評決が言い渡された。一方で、公共の場で発砲した容疑については、有罪であるとされた。

プイヤード弁護士は「アランさんの発砲が正当防衛であると認められたのであれば、公共の場で発砲した罪についても無罪でなければおかしい」と主張し、裁判官に有罪判決を破棄するように訴えている。また、アランさんは銃を所持する正式な免許を持っていたことも明かした。

プイヤード弁護士の主張や陪審員の評決を受け、10月19日に行われる審問で、さらに審議が行われる予定だ。事件後から拘留中のアランさんは、判決が出るまで拘留が続くと報道されている。

アランさんの正当防衛が認められたことについて、エデン・ホームズ検事(Eden Homes)は「タナーさんはスマホでくだらないフレーズを流していただけです」と述べ、正当防衛と認められるほどの危険性はなかったと主張している。

今回の評決についてタナーさんは「この結果が現実ですから、もう気にしていません。結局は神の計画通りということです」とだけコメントした。タナーさんの母親であるマーラ・エラムさん(Marla Elam)は「息子の命があることに感謝しています。それ以外のことは、今はどうでもいいのです」と話した。

タナーさんの父親ジェレミー・クックさん(Jeremy Cook)は「銃撃のあとすぐ、コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live)』にて、週末の最新情報として、イタズラ系ユーチューバーが撃たれたと今回の動画を放映しました。それから出演者がカメラを見つめ、『Good(いいね)』と言うと、みんな笑っていました。多くの人がこの番組を見て、同じように笑ったのです。私たち家族はすぐにターゲットとなり、『タナーは殺されるべきだった』と嫌がらせを受けています。私たちは、簡単に操作されて暴徒化する世論が、法の支配よりも重要である時代に生きているのです。これは私たち全員にとって非常に危険なことです」とコメントを残した。

画像は『FOX 5 DC 2023年9月29日付「Jury acquits delivery driver of main charge in Dulles Town Center shooting of YouTube prankster」』『Click2Houston 2019年5月8日付「‘You’re fired’: Heartless prank brings Walmart employee to tears」』『NOWnews 2019年10月9日付「影/「開腿坐肩」飆車!女友嚇爆尖叫猛喊 男:想當網紅」(圖/翻攝自影片)』『Metro 2018年8月2日付「Dad filmed himself giving kids laxatives then crying in pain for YouTube hits」(Picture: YouTube/CJ So Cool)』『TooFab 2020年4月9日付「YouTuber Sparks Outrage Torturing and Eating Animals Alive for Content」(YouTube)』『The Sun 2020年9月11日付「‘SHAMEFUL’ Syrian Influencers slammed for ‘spending £74k’ to reveal baby’s gender on Burj Khalifa as their country starves」(Credit: Anasala Family/YouTube)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)