速い列車のイメージがある「快速急行」。関東・関西の私鉄では共通して、やはり“速い列車”に君臨していますが、本数が僅少という路線も。各社にとって、どのような列車なのでしょうか。

速達列車の代名詞

 列車の種別には「快速」「準急」「急行」「特急」などバラエティ豊かですが、そのなかでも「快速急行」は特に速く、たくさんの駅を通過してくれるイメージがあります。

 この「快速急行」を走らせている鉄道会社はそれほど多くありませんが、関東・関西の私鉄では共通して、「無料の最速達列車」に君臨しています。


小田急の快速急行(画像:写真AC)。

●小田急(小田原線、多摩線、江ノ島線)

 2004年に登場。当時は下北沢を出ると新百合ヶ丘までノンストップで、17駅16.6kmを通過していました。2018年に複々線が完成すると、登戸にも停車するようになりましたが、依然として無料列車では圧倒的な速達列車に君臨しています。

 登戸から先は、急行と互い違いで小田原まで運行されています。停車駅は向ヶ丘遊園と開成に止まるかどうかの違いしかありませんが、その開成の停車本数を確保するため、多くの快速急行は「新松田から先は急行」と変身を遂げるダイヤになっています。

 多摩線では急行と同じ停車駅で、江ノ島線では急行より停車駅は2つ少なく、藤沢まで快走します。

●西武(池袋線、新宿線)

 両路線ともに無料の最速達列車。池袋線の無料列車としては唯一、所沢以遠でも駅を通過していきます。多くが「Fライナー」として、副都心線を介し横浜方面と直通する列車です。

 一方の新宿線の快速急行は、土休日の西武新宿発・本川越行き1本のみが残っています。高田馬場を出ると、鷺ノ宮、上石神井にも止まらず、次の田無まで14駅を一気に通過します。ただ終日に渡って有料の特急「小江戸」が運転されていることもあり、知る人ぞ知る存在となっています。

●東武(東上線)

 2008年に登場。和光市と朝霞台しか途中停車せず、川越から先は各駅停車。典型的な「郊外需要」のための速達列車です。こちらも基本的に「Fライナー」として、副都心線から横浜方面へ直通していきます。

 朝夕はさらに停車駅を絞った「川越特急」、座席指定の「TJライナー」が運行され、互いに補完しあっています。

関西でも「すっ飛ばす」列車の代名詞

●阪神(本線、なんば線)

 もともとは特急の補佐役として、大阪〜神戸の最速達種別を担っていましたが、現在は「近鉄奈良線〜阪神なんば線」の直通列車の速達列車という位置づけになっています。尼崎〜西九条間はノンストップで駆け抜けます。

 停車駅は時代によって目まぐるしく変わり、「特急が止まる芦屋・御影を通過」など、阪神のお家芸ともいえる停車駅の分散配置、いわゆる「千鳥停車」もかつて行われていました。

●近鉄(大阪線、奈良線など)

 近鉄の大阪側の再速達列車で、「ターミナル駅を出ると、次の停車駅は隣の県」という爆走っぷりを発揮します。大阪線だと、鶴橋の次は五位堂(奈良県香芝市)、奈良線も鶴橋の次は生駒(同生駒市)で、それぞれ18駅、12駅を一気に通過します。有料特急に引けをとらない所要時間ですが、あくまで特急は「確実に座れて、ゆったりと遠方に行きたい客」向け。ニーズは上手く分離されています。

●京阪(本線)

 枚方市より北は特急、枚方市より南は急行の停車駅と同じ。二つの種別をつなげ、ダイヤ上で互いに補完するような存在です。

 2008年の中之島線開業とともに登場しました。濃紺をまとった新型車両「3000系」とともに華々しくデビューし、中之島行きの最速達列車として設定されました。なお、現在の快速急行は淀屋橋行きになり、3000系も快速急行専用ではなく、特急にも使われるようになっています。

●南海(高野線)

 2003年に登場。急行との違いは和歌山県境に近い美加の台〜林間田園都市間の3駅を通過するかどうかだけで、1日数本しか設定がありません。

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 このほか、名鉄や富山地方鉄道でも快速急行が運行されています。さらには今年10月には、大井川鐵道でも快速急行がデビュー予定となっています。

 最近まで、阪急でも快速急行が走っていました。特急の補佐的な存在で、停車駅も数駅違うだけでした。2024年から座席指定列車が導入されるのに伴い、快速急行は「準特急」に名称変更。阪神と並んで速達列車を象徴した種別名は、2022年に幕を閉じました。