パナマ帽の等級がめちゃくちゃになっている問題をパナマ帽専門店が解説
パナマソウという植物を編んで作られるつば付きの帽子「パナマ帽」には、「フィノ」「グレード○○」といった等級が付されていることがあります。こうした等級について、販売者ごとに違う番号や用語を使っており、標準化された等級システムがない問題があるとして、パナマ帽専門家のブレント・ブラック氏が要点を解説しています。
Grades of Quality of Panama Hats - Brent Black Panama Hats
ブラック氏は1988年にパナマ帽専門店のブレント・ブラック・パナマハットを設立した人物で、エクアドルのモンテクリスティで高級帽子織りの技術を紡いできました。氏はパナマハットの職人を援助するための団体、モンテクリスティ財団を設立し、資金援助や地域の医療ケアなどを実施しています。
パナマ帽には、1インチ(約2.5cm)四方当たりに見える織り目の数で等級を決めたり、全体的な品質で等級を決めたりする方法が存在します。しかし、ブラック氏は「標準化された方法はありません」と指摘し、多くの販売者が独自の等級制度を採用していると説明します。
多くのパナマ帽は「ハットグレード」という数字で等級付けがされていますが、ブラック氏いわく「無視した方がいい」とのこと。同じ販売者のグレードで比較する分には問題ないですが、異なる販売者同士で比較したときには何の意味もなさないそうです。
また、上質、非常に上質、超上質という意味を持つ「フィノ」「フィノフィノ」「スーパーフィノ」という言葉で売り出す販売者もいるそうです。ブラック氏がこれまで取引してきた3大帽子輸出業者の「オルテガ」「ドルフザウン」「セラーノ」は、どれも別の等級を使っており、混乱と矛盾を引き起こしているとのこと。
特にパナマ帽の聖地ともいわれるモンテクリスティ産の帽子は高級品で、どれも20ドル(約3000円)はくだらない品ばかりだそうですが、「スーパーフィノ・モンテクリスティ」などと称する帽子が20ドル以下で売られていることもあるそうです。
では、実際に品質を見定める方法がないのかというと、ブラック氏によるとそうではないそうです。
ブラック氏が有名な方法として紹介したのは、パナマ帽の裏側にある輪っかを数える方法です。パナマ帽を裏返して光にかざし、その数を見て品質を判断するというのは有名な方法で、数が多ければ多いほど上質なものとされています。ブラック氏は「たいていの場合それで間違いありませんが、うまくいかないことも十分にあるので、この方法に頼ることはオススメしません」と語りました。
ブラック氏いわく、一番良い方法は「1インチ四方当たりの織り目の数を数えること」だそうです。コットンやじゅうたんといったほとんどの織物は織り目の細かさによって品質を決めており、これをパナマ帽にも適用できるそうです。
他ならぬブラック氏のモンテクリスティ財団は「モンテクリスティ・クエンタ」と呼ばれる数字でパナマ帽を格付けしています。パナマ帽の1インチ四方を拡大し、横の織り目の数と縦の織り目の数を数え、その数を掛け合わせた数字をモンテクリスティ・クエンタとする方法です。
例えば、以下のパナマ帽は横に23弱、縦に27個の織り目があるそうです。この帽子のモンテクリスティ・クエンタは、23×27の「621」になります。織り目は手作業で数える必要があるため、ブラック氏はスキャナーの登場を切望しています。
ただし、ブラック氏は「パナマ帽を格付けする際に織りの細かさが最も重要な要素であることは確かですが、織りの質も考慮しなければなりません。しかし、織りの質は非常に主観的なものです。ぱっと見て優れたものとひどいものを見分けるのは簡単ですが、織りの質が優れているか、あるいは非常に優れているかは判断しにくいものです」と指摘します。
例えば、以下の帽子は30×23=690と評価される帽子ですが、見るからに織り目がぐちゃぐちゃで曲がりくねっています。このような帽子であればすぐ良さを判断できますが、すぐには見分けが付かないものなどは、結局のところ主観で判断せざるを得なくなるそうです。
なお、ブラック氏自身はブレント・ブラック・パナマハットでの販売時に等級を採用していません。ブラック氏は「私が帽子を採点するときや、買うか買わないか、あるいはいくらで買うかを決めるとき、帽子全体を見て『好ましい』という全体的な印象を判断します。まず、その帽子がどれだけ魅力的かを見て、次にきめの細かさ、織りの質、色の順に考慮します。細かさは一つの要素に過ぎず、細かさ、質、そして色の組み合わせが帽子の価格を決めるのです」と、自分の判断基準を示しています。
パナマ帽にはハンドメイドならではの良さもあるとのことで、ブラック氏は「すべての帽子には欠点、不完全さ、不規則さがあるのです」と語りました。