「朝食はパン派」の人に不足しがちな栄養素とは一緒に食べるといい食材を管理栄養士に聞く

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忙しい朝は、手軽に食べられるパンで食事を済ませる人も多いでしょう。しかし、「パンだけでは栄養が偏りそう」「本当はご飯のほうがいいのではないか」と不安に思うこともあるかもしれません。今回は、パン派の人に不足しがちな栄養素と、朝食に一緒に摂りたい栄養素・食べ物について、管理栄養士の成松由佳さんに教えてもらいました。

パンに含まれている栄養素とは 白米との栄養素の比較を併せて解説

編集部

パンに含まれている主な栄養素は何ですか?

成松さん

パンといってもさまざまな種類がありますが、ここでは代表的なパンとして、食パンを取り上げます。食パンに最も多く含まれるのは糖質です。また、たんぱく質や脂質も多く含まれていますね。

編集部

朝食というと「パン派」と「ご飯派」が多いと思うのですが、パンとご飯の栄養の違いを教えてください。

成松さん

食パンとご飯をそれぞれ1食分の目安量で比較すると、カロリーはパンとご飯で同じくらいです。ご飯に比べて、パンにはたんぱく質と脂質がやや多く糖質は少なめです。特にクロワッサンやデニッシュなどの生地にはバターが多く含まれているため、特に脂質が多く、カロリーも高くなっています。

編集部

そのほか、どのような栄養素が含まれていますか?

成松さん

カルシウムやマグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラル類がわずかに含まれます。また、小麦に含まれているビタミンB1やビタミンB2などのビタミン類も少量とれます。ただし、1日あたりの必要量から考えると、ご飯と比べて栄養素の含量に大きな差はないといえます。

食品成分食パン
8枚切り2枚
(90g)白飯
茶碗1杯
(150g)

エネルギー223kcal234kcal

たんぱく質6.7g3.0g

脂質3.3g0.3g

糖質39.7g54.2g

カルシウム20mg5mg

マグネシウム16mg11mg

鉄0.5mg0.2mg

亜鉛0.5mg0.9mg

ビタミンB10.06mg0.03mg

ビタミンB20.05mg0.02mg

※参照:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

パン食の人に不足しがちな栄養素を解説 一緒に食べると健康にいいものとは

編集部

「朝食はパン派」の人に不足しがちな栄養素は何ですか?

成松さん

朝食にご飯よりパンを食べる回数の多い人ほど、ビタミンCや食物繊維、鉄の摂取量が少なかったという研究結果があります。また、カルシウムも少ない傾向がみられました。食物繊維とカルシウムは、パン食に限らず日本人の食生活で不足しがちな栄養素です。パン食の場合は特に意識して摂取したいですね。また、「鉄は女性」「ビタミンCは50代以下の世代」で、摂取量が推奨量より不足している傾向にあります。注意するようにしましょう。

※参照:農林水産省「みんなの食育 ごはんは太るは誤解?」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics3_03.html

※参照:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html

※参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

編集部

これらの栄養素は、何を一緒に食べると補えますか?

成松さん

まず、ビタミンCと食物繊維は野菜や果物から摂取できます。特にビタミンCが多い野菜はピーマンやパプリカ、ブロッコリーなどです。食物繊維はごぼうなどの根菜類、ブロッコリー、オクラに多く含まれます。果物では、キウイフルーツがどちらも多く含まれているのでおすすめですね。

編集部

鉄はどうでしょう?

成松さん

動物性の食品は、吸収率の高いヘム鉄を含んでいます。特に赤身の肉や魚に多く含まれますね。また、植物性の食品の中でも、ほうれん草や小松菜、水菜などには鉄が多く含まれています。食事全体のバランスを整えるためにも、“動物性”と“植物性”どちらの食品も食事に取り入れられると良いですね。

編集部

カルシウムは何で補えますか? やはり牛乳やヨーグルトでしょうか?

成松さん

もちろん、乳製品はカルシウムの手軽な補給源としておすすめです。ただし、パン食の人はご飯食の人に比べて乳類の摂取が多いにもかかわらず、カルシウムが不足しやすい傾向にあります。カルシウムは野菜や大豆製品、魚介類にも含まれていて、パン食ではこれらの摂取量が少なくなりやすいからです。パンにしらすや桜えびを載せる、納豆や豆腐、水菜や小松菜、チンゲン菜などの野菜を合わせて摂るなど、組み合わせを工夫してみましょう。

編集部

反対に、パン食で摂り過ぎに注意したい栄養素はありますか?

成松さん

朝食がパン派の人は、脂質の摂取量が多くなりがちです。特に飽和脂肪酸と呼ばれる動物性の脂質の摂取量に注意が必要です。飽和脂肪酸の摂り過ぎは、血中コレステロールを増加させ、動脈硬化や心筋梗塞などの病気のリスクを高めるといわれています。飽和脂肪酸は、パンの材料であるバターやよく一緒に食べられているソーセージやベーコンに多く含まれています。注意するようにしましょう。

※参照:農林水産省「脂質による健康影響」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/fat_eikyou.html

「朝食はパン派」の注意点まとめ パン食は太る? 糖質の量は大丈夫?

編集部

ずばり、パンとご飯で体に良いのはどちらですか?

成松さん

どちらもエネルギー源になり、体に必要な役割を持っている食品です。ただし、ご飯食の方が栄養バランスを整えやすく、パン食は食べ方に工夫が必要です。先述したように、パン食の方が日本人に不足しがちな栄養が摂れない傾向にあります。また、脂質を摂り過ぎてしまう傾向にあるため、気をつけないと太りやすいといえます。さらに、ご飯より軟らかいため、噛まなくても食べられるのも問題のひとつです。

編集部

噛む回数が少ないのも体に良くないでしょうか?

成松さん

噛む回数が少ないと、肥満になりやすいことが知られています。意識せず早食いになってしまい満腹感を得られにくく、たくさん食べてしまいやすいからです。また、軟らかい食べ物ばかりを好むようになり、栄養バランスが崩れやすくなることも要因のひとつといえるでしょう。人間の体は、食後にエネルギー消費が高まる性質があります。しかし、噛む回数が少ないとエネルギー消費量が低下することも知られており、体重増加につながっていると考えられています。

※参照:厚生労働省「e-ヘルスネット 速食いと肥満の関係 -食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-10-002.html

編集部

では、パンを食べる際に栄養バランスが崩れないようにするには、どうすれば良いのでしょうか?

成松さん

パンと一緒に、魚や大豆、乳製品、野菜や果物を組み合わせて食べましょう。具体的には、食パンにツナや納豆、チーズやしらすなどをトッピングすると良いですね。また、大きく切った野菜をスープやサラダにして、よく噛んで食べるのもおすすめです。

編集部

パンの1食分の目安はどれくらいですか?

成松さん

1日の活動量にもよりますが、おおむね食パン6枚切り1枚半、8枚切りなら2枚が目安になります。どちらも同じ約90gです。健康な日本人が何をどれだけ食べたら良いかを示した「食事バランスガイド」では、ご飯、パン、麺などの主食を1日5~7つ食べることを目安にしています。この場合の「1つ」とは、ご飯なら100g、パンは食パン1枚分を指します。1日3食、毎食1.5~2つをとろうと考えると、このくらいの量になりますね。

※参照:農林水産省「実践食育ナビ 食事バランスガイド早分かり」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/division.html

編集部

案外多いなと思ったのですが、糖質の量は大丈夫でしょうか?

成松さん

目安量を守れば、糖質は摂取してかまいません。むしろ糖質は、体のエネルギー源として必要な栄養素です。1日に摂取するカロリーのうち、50~55%を糖質から摂った人が最も長生きだったという研究結果があります。糖質は1gあたり4kcalなので、2000kcal摂取する人ならおよそ1000kcal、糖質250g分に相当します。上記の目安量のパンやご飯を食べても問題ないですね。ただし、パンの食べ過ぎは、糖質だけでなく脂質によるカロリーオーバーを招き、体重増加につながるため注意しましょう。

※参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

成松さん

パンは決して体に悪いわけではありません。ただ、何を一緒に食べるかが大切です。栄養素を補えるよう、またよく噛んで食べられるよう、組み合わせを工夫してパンを楽しみましょう。

編集部まとめ

パンを主食とした朝食では、ビタミンCや食物繊維、鉄などの栄養素が不足しやすいとのことでした。また、脂質の摂り過ぎやよく噛まないことで、肥満につながるリスクもあると分かりました。魚や大豆、乳製品、野菜や果物を組み合わせて、よく噛めるバランスの良い食事を心がけたいですね。

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