8月30日「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)、大竹メインディッシュのコーナーに東京都立大学教授、社会学者の宮台真司さんが出演した。前半は汚染水の問題について、後半は宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』について語ってくれた。

大竹まこと「まず汚染水のことですが、どう解釈したらいいですかね」

宮台真司「もともと『汚染水』と呼ばれていたものが、政府の判断で『処理水』と名前を変えた。言葉によるごまかしですね。たとえば1980年代末の日米構造協議。これは『Structural Impediments Initiative』なので、日米構造障壁協議、つまり日本側の非関税障壁を撤廃させるためのアメリカの指導ということでした。それを外務省官僚の入れ知恵でごまかした、ということがあります」

大竹「うん」

宮台「狂牛病と呼ばれていたものも政府の方針でBSEと呼ぶようになった。結局これ(処理水)は『汚染水』なんですね。トリチウムが含まれています。薄めれば無害だ、というような言い方になっています。韓国や中国の原発からも出ていると言われます。しかし日本の汚染水はデブリに触れているんですね。トリチウム以外に様々な核種が含まれているので、まったく同列に論じることはできない」

大竹「はい」

宮台「IAEAのお墨付きを得た、となっていますが、それは国際的な機関がリサーチしたのではなくて、東電が出したデータに基づいて『これなら大丈夫』と言っているだけなんですね。東電は柏崎刈羽をめぐる様々な不祥事、そもそも福一(福島第一)の原発の爆発をめぐる事故でもそうですけど、要するにウソつきまくり、捏造しまくり、データ秘匿しまくり。その企業が出しているデータを丸々信じる、というのはあってはならない」

大竹「うん……」

宮台「まずリサーチは第三者機関が行うべき。今後、汚染水の広がり、タンクの中にどういう水が詰まっているのか、ということも、東電以外の機関がリサーチする。というか政府がリサーチさせる必要があります」

このあとも汚染水に関する解説が続いた。続いて映画『君たちはどう生きるか』の話題に移る。なお映画の内容に触れている部分もあるので未鑑賞の方はご注意を。

宮台「まずね、僕はすごくおもしろかった。僕の知る限り、小学生の子たちは非常におもしろがっている。ところが大人たちの多くは、映画館を出てきたときの会話を聴いても浮かない顔で『よくわかんなかったね』と言っている」

大竹「はい」

宮台「観た瞬間にわかるのは『不思議の国のアリス』と同じモチーフということです。穴に落ちて下の世界に行くと、いろんなデタラメを体験しますと。そのあと穴の外に出てくるけど、穴は本当にありました。穴の中で体験したことはただの夢ではなく、現実だったのです……という終わり方。今回の宮粼作品と同じなんですね」

大竹「うん」

宮台「『アリス』でチェシャ猫、トランプの兵隊、いろいろ出てくるけど、『これは何かのメタファーだ』なんて当てはめます? そんな人、見たことない。ところが動画解説といって、青サギはこれを意味する、ペリカンはこれを、おばあちゃんたちはこれを……と、いわゆる『当てはめ』をしている(人がいる)」

大竹「はい」

宮台「でもそういうふうに観ていたら、子供たちが『すごくおもしろかった! よくわからないけど』っていう、デタラメがおもしろいんだ、っていう本質を見逃すことになってしまうんですね」