男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:「予定が分かり次第連絡します」デートに誘ったとき、そう返答する女性の心理は…




結婚に近づいたと思っていた。

なぜなら先週、旅行の際に彼氏・裕樹の実家に遊びに行かせてもらったから。予想外だった。

それなのに裕樹は旅行後、急に態度が冷たくなった。

「裕樹くん、なにか怒ってる?」
「全然怒ってないよ」
「それならいいんだけど…」

とにかく楽しい時間を過ごしたし、そもそも実家へ連れて行ってくれたのには相当な意味があると思う。

― 結婚の覚悟を決めたから、私を実家まで連れて行ってくれたんだよね?

でも旅行後、わかりやすく態度が変わった彼。いったい私は何をしてしまったのだろうか…。


Q1:旅行当初から男が気になっていた点は?


裕樹と交際を始めたのは、昨年の冬だった。

マッチングアプリを通じて出会った私たち。裕樹は35歳。私は34歳なので、最初からお互い結婚を意識した上での付き合いだった。

そして交際から半年経ち、お互い長期休みが取れる日程が重なったので長めの旅行をすることになった。

1泊2日の温泉旅行はあったけれど、今回は4泊5日。

「裕樹くん、せっかくだし海外行こうよ」
「行きたいけど、とりあえず国内にする?」
「なんで?高い?」
「うーん。それもあるけど、今回の休みはのんびりしたいから移動時間短いほうがいいなと思って」
「そっか…わかった」

海外旅行が良かったけれど、仕方ない。何よりも裕樹との初めての長期旅行に、私はかなりソワソワとしていた。

「旅行楽しみだね。京都で2泊して、その後大阪で2泊して…」

しかしホテルや食事の場所などを決めていると、急に裕樹が真顔になった。

「あのさ…深い意味はないんだけど、よければ僕の実家も行く?」
「…え?」

「深い意味はない」と言われても、いろいろと考えてしまう。

― これって、結婚を見据えての挨拶ってこと…?




だが彼としては本当に深い意味はなかったようで、慌てて首を横に振られてしまった。

「いや、無理はしなくていいからね!ただ関西へ行くのに、実家に顔出さないのは親に何か言われそうで…」
「そっか、そうだよね」

神戸出身だと言っていた裕樹。たしかにせっかく関西へ行くならば実家にも寄りたいだろう。

「どうしよう。裕樹くん、私は何を着ていけばいい?」
「藍は何を着ても似合うし、そんなの適当で大丈夫だよ(笑)」

結局、私は無難な紺のAラインのスカートにノースリーブの白のトップスを持っていくことにした。




裕樹との旅行は、本当に楽しかった。

初日は品川駅で待ち合わせ。待ち合わせ場所にやってきた裕樹が、いつもより格好よく見える。

「予約していた新幹線の切符なんだけど…」
「ありがとう!裕樹くんのアプリで取ってるから、裕樹くんが発券しないとだよね?」
「うん、そうだね。ちょっとここで待ってて。発券してくるから」

頼りになる裕樹は宿の予約もレストランの予約もしてくれて、旅はかなりスムーズだった。

「京都、久しぶりだな〜」
「裕樹くん、大学まで神戸だっけ?」
「そうそう学校は西宮にあって。学生時代もたまに京都まで遊びに来ていて…」

新幹線に乗っている間も、私たちの会話は尽きない。幸先のよいスタートだ。

京都に着いたあとも、ホテルへのチェックインを済ませてからどこへ行くのか、食事はどこでするか…なども全部考えてくれていた。

「今夜のディナー、ここ予約しておいたよ」
「ありがとう!裕樹くんって本当に頼りがいがあるよね」
「一応、関西出身だからね」
「裕樹くんに全部任せていれば、安心!」

土地勘があるだけでなく、ホテル代も食事代も、新幹線の往復代もほぼ全部裕樹が払ってくれている。

初日のディナーを終えた後、私は幸せな気持ちに包まれていた。

「本当にありがとう。裕樹くんって最高の彼氏だよね」
「そう言ってもらえて、よかった」

こうして京都での2日間は、楽しく終わった。

そして遂に迎えた3日目。大阪のホテルへ移動した後、私たちは午後から裕樹の実家がある神戸へと向かうことになった。


Q2:実家へ伺った際のNG言動はどれ?


3日目の朝。裕樹から、また確認された。

「藍、本当に大丈夫?無理しなくていいからね」
「ううん。裕樹くんのご両親に会いたいから」

阪急電車と呼ばれる電車で梅田駅から裕樹のご実家へと向かう。すると裕樹が「次で降りる」と言ったのは、芦屋川駅だった。

「え…?裕樹くんのご実家って、芦屋なの?」
「うん」

駅前でタクシーを拾い、裕樹の家へと向かう。芦屋というだけでもビビっていたけれど、辿り着いたのは非常に立派な一軒家だった。




「ちょっと。裕樹くんってめちゃくちゃ良いところのお坊っちゃまじゃない!早く言ってよ!手土産も何も持ってこなかったよ…」
「全然普通だよ」

かなり緊張しながら裕樹の家へお邪魔すると、気品あふれるご両親が温かく迎え入れてくれた。

「初めまして、井上藍と申します」
「初めまして、藍さん。わざわざご足労いただきありがとうございます」

脱いだ靴は、もちろんちゃんと揃えて家へ上がらせてもらう。スカート丈も短すぎない。素足で来てしまったけれど夏だから仕方ないだろう。ネイルも派手ではない。ブランドバックも控えた。

今日のために、たくさん「彼の実家へお邪魔するときの服装」を調べたから。だから服装は問題ないはず…。




立派なリビングに通され、そこでお父様と挨拶をして、お茶とケーキをいただきながら談笑がはじまった。

「藍さんは、ご出身は?」
「私は千葉です」
「そうなのね。お仕事は歯科衛生士さん?でしたっけ。裕樹から伺っております」
「はい」

裕樹のご両親はとてもいい人たちで、和やかに時間が過ぎていく。

「じゃあ母さん、そろそろ帰るね」
「ひろくん、またね。藍さんもまたいつでもいらして下さいね」
「ありがとうございます!」

お礼を言い、2時間ほどお茶をしてから裕樹の実家を後にした。

「あ〜緊張した」
「ごめんね、付き合わせちゃって」
「ううん。裕樹くんのご両親すごく素敵な人たちだね!上品で優しくて」
「そう言ってもらえると嬉しい」

そして私たちは大阪へ帰り、大阪で2泊して東京へ戻った。

喧嘩もしていないし、楽しく5日間の旅行を終えたはずだった。それなのに、東京へ戻ってから途端に態度が変わった裕樹。

― 私、何をしちゃったんだろう…。

せっかく結婚に近づいたと思ったのに、また遠ざかってしまった。

▶前回:「予定が分かり次第連絡します」デートに誘ったとき、そう返答する女性の心理は…

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