『ガンダムSEED』の出発点「虚空の戦場」が示す戦時下の青春のリアル
アニメージュプラスでは、全7作と共に「ガンダムSEEDシリーズ」の魅力を振り返るコラム連載をスタート。第1回となる今回は、8月25日公開の『機動戦士ガンダムSEED スペシャルエディション 虚空の戦場 HDリマスター』と共に、『ガンダムSEED』という作品がガンダムシリーズにおいてどんな位置にある作品かについて触れていきたい。
C.E.(コズミック・イラ)70。遺伝子調整によって生まれた新人類=コーディネイター(プラント)と旧人類=ナチュラル(地球連合)の軋轢は、「血のバレンタイン」を引き金に武力衝突へと発展。
ある日、中立国の工業コロニー、ヘリオポリスで学ぶコーディネイターの少年キラ・ヤマトは、ザフトによる「G」奪取作戦に巻き込まれ、その最中にザフトのラウ・ル・クルーゼ率いる「クルーゼ隊」メンバーとして「G」奪取作戦に参加したかつての親友アスラン・ザラと再会する。
「G」奪取作戦はヘリオポリス全体を巻き込む戦闘へと発展し、キラは学校の友人たちを守るため唯一奪取されなかったストライクガンダムに乗り込み戦闘に参加。そのままキラと仲間たちは地球連合軍の最新鋭艦であるアークエンジェルに乗り込み、成り行きから連合軍の本部がある地球・アラスカを目指すことになるが――。
『機動戦士ガンダムSEED』(以下『ガンダムSEED』)のテレビシリーズ放送がスタートしたのは2002年10月。『機動戦士ガンダム』(以下、『ガンダム』)放送20周年記念作品である『∀ガンダム』(富野由悠季監督)から3年後に放送された本作には、以下の3つの要素を強く感じることができる。
まずは、原点である『ガンダム』の世界観を現代的視点で再構築=リビルドすること。『ガンダム』では、スペースコロニーに住む宇宙生活者=スペースノイドと地球連邦政府の戦争に巻き込まれた少年少女のドラマが描かれた。『ガンダムSEED』もこの基本的なコンセプトは踏襲しながらも、設定自体がアップデートされている。
本作では宇宙に生きる次世代の人類=コーディネイターを生み出したことにより、「種」としての対立・断絶が描かれることとなった。理屈云々以前に「お互いの存在を認めない」という立ち位置で複雑化していく問題の根深さは、現実の世界で起こっている戦争と共通するリアルを観る者に突き付けた。
二つ目は、そんな戦争のリアルを新しい世代に伝えるキャラクタードラマのアプローチだ。高い知能や身体能力を持つコーディネイターは即戦力として若い世代をザフトに投入しているため、キラは同世代の少年少女を敵にして戦うことになる。中でも、お互いを知り気遣い合う幼なじみのアスランとの戦いは切なさを極め、立場や育った場所によって友情が引き裂かれる様から、観る者は戦争の残酷さを味わうこととなった。
(C)創通・サンライズ
またキラと学校の仲間たちとの艦内での人間関係も一筋縄ではいかない展開に。艦内でただ一人のコーディネイターであるキラは大事なストライクのパイロットであると同時に、ナチュラルにとっては憎き敵という存在となる。戦場はそんな複雑なキラの立場を炙り出し、内部での不信・拒絶の反応も容赦なく描いていく。
ある時は利己的に、またある時は日和見にふるまう現代の若者たちに共通する気分を『無限のリヴァイアス』『スクライド』などで若いアニメファンの注目を集めていたアニメーター・平井久司が手がける繊細なキャラクターが後押しし、アニメファンはこのヒリヒリとしたドラマを我がことのように見守ったのだ。
そして最後は、戦闘描写のアップデートだ。『ガンダム』では、ミノフスキー粒子というレーダーを阻害する物質が散布されたことで、モビルスーツによる有視界戦闘を中心とした、第二次世界大戦時のような状況での戦闘が繰り広げられていた。
『ガンダムSEED』では、核分裂が抑止される「ニュートロンジャマー」が導入されることで、核兵器や核融合によってエネルギーや動力を得る兵器が使えず、さらに電波も妨害されるために通信や誘導弾による攻撃は大きく制限されるという設定が導入された。電子戦に対抗した機器の導入や至近距離のみ電波が有効という状況、また登場する艦船の武装なども含めて現用兵器的な戦闘描写が特徴となっている。
そこに『ガンダム』以降いくつものガンダム作品を手掛けてきた大河原邦男デザインによるモビルスーツの魅力も加わり、新旧両世代を魅了するアクション場面を生み出すこととなった。
『ガンダム』の持つ不変の魅力に新たな形で挑んだ『ガンダムSEED』は、従来のガンダムファンだけでなく、新たな若い世代をも巻き込んでの一大ブームを巻き起こすこととなる。そんな『ガンダムSEED』の起点となるエピソードが語られるのが『機動戦士ガンダムSEED スペシャルエディション 虚空の戦場 HDリマスター』だ。
キラとアスランの対立を中心にした本作のドラマは、様々な登場人物によって大きなうねりを与えられていくことになる。
プラントの歌姫であり、アスランの婚約者であるラクス・クラインは、アークエンジェルに保護されたことから艦内の人間関係に少なくない影響を与える。そしてキラの級友であるフレイ・アルスターは父の死をきっかけに、キラを手駒にしてのコーディネイターへの復讐を誓うことに。
さらにザフトの勢力圏であるアフリカに降下したキラは、ゲリラとして活動する少女カガリ・ユラ・アスハ、そして「砂漠の虎」の異名を持ち、バナディーヤを拠点とするザフトのアンドリュー・バルトフェルドと出会うことで、大きな転換点を迎えることとなる。
日本のアニメシーンを揺るがせた『ガンダムSEED』、そのドラマの出発点を凝縮した「虚空の戦場」――最新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』へと繋がる興奮はここから始まるのだ。
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