えッ…! 前から「原付が逆走してきた!」 一方通行なのに無視良いの? 実は「OK」な場所が! 背景は?

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一方通行なのに原付「逆走可」!?渋谷にある謎の道路とは

 全国各地には一方の方向にしか通行出来ない「一方通行」の道路が多数存在します。
 
 そのほとんどはクルマやバイクが対象となっていますが、渋谷駅の周辺には原付だけ「逆走」出来る道路が存在するといいますが、なぜなのでしょうか。

原付が一方通行無視…ではなかった! 珍しい道路の正体とは?(画像はイメージです)

 警察庁によれば、一方通行は「車両の相互通行に伴う複雑、危険な交通状態を単純化して交通容量を増大させ、交通の安全と円滑を図ること」を目的としているといいます。

【写真】えッ…ほんと? 原付は逆走OK? どんな場所? 地図で見る!(14枚)

 そのため、クルマのすれ違いが困難なほど道幅が狭いにもかかわらず交通量が多い道路のほとんどは一方通行となっています。

 一方通行の道路の逆走は「通行禁止違反」として違反点数2点、7000円(普通車)の反則金が科されます。

 交通標識は原則としてすべての車両を対象としていますが、市街地における一方通行の道路の多くには「軽車両を除く」などの補助標識があるため、自転車が規制を受けることはまれです。

 逆に言えばほとんどの場合、クルマやバイクが一方通行の規制を受けることになります。

 そんななか、東京都渋谷区には、自転車などの軽車両に加えて「原付を除く」という補助標識のある一方通行の道路が存在しています。

 全国的にもめずらしいこの一方通行は、「鉢山町交番前」から「桜丘郵便局前」までの約200mの道路(渋谷区特別区道870号線/野沢通り)とそれに接続する付近の一部の道路が該当します。

 この地域の一方通行のすべてに「原付を除く」の補助標識があるわけではなく、原付の「逆走」が認められている区間はごくわずかです。

一方通行の出口には「車両通行止め」の標識の下には補助標識で「自転車/原付を除く」と書かれている

 渋谷センター街や代官山も徒歩圏内にあるこの地域は、平日・週末問わず多くのクルマで混雑しています。

 一方通行の起点には「この道路、原付は逆走『可』」との注意書きもありますが、初めてこの道を通るユーザーは「一方通行なのに前から原付が来た」と驚くケースも多いようです。

 この道路の周辺にある会社に勤める男性は次のように話します。

「一方通行のわりには道幅が広い道路なので危ないと感じたことはありませんが、クルマと反対の方向から原付がやってくるので最初はかなり戸惑いました。

 当初は『不届き者』が多いのかと思っていましたが、大手企業の原付も『逆走』していたので調べてみたところ、『原付は除く』の補助標識を見つけてやっと理解できました」

謎の道路誕生の理由は「郵便局員」のため?

 では、なぜこのような道路が誕生したのでしょうか。

 一説によると、これらの道路に「原付を除く」の補助標識がある背景には、郵便局員などへの配慮があるようです。

 これらの道路が位置する桜丘や鉢山町、南平台は渋谷駅周辺のなかでも戸建住宅が多く、それにともない一方通行の道路が入り組んだ地域となっています。

 一方、都心部であることから人口密度が高く、郵便局員にとっては効率的な配達が求められる地域でもあります。

 もし、これらの道路に「原付を除く」の補助標識がなかった場合、配達効率は非常に悪化します。

道路脇の電柱には「原付は逆走可能」と書かれている

 たとえば、一方通行の終点である「桜丘郵便局前」から始点である「鉢山町交番前」まで向かうためには、猿楽町方面を迂回し約900mの道のりを走る必要があります。

 また、「桜丘郵便局前」から南平台方面へと向かう場合、猿楽町方面へと大きく迂回するか、人通りの多い桜坂周辺の細い道を抜けなければなりません。

 それが「原付を除く」の補助標識があることで、移動距離はおよそ4分の1となり、細い道を抜けることもありません。

 郵便配達は公共性の高い仕事であるため、配達効率の向上は多くの人々にメリットがあることと言えそうです。

 また、これらの道路は近年利用者が増加しているフードデリバリーサービスの配達員にも恩恵があるようです。

※ ※ ※

 これらの道路は2023年7月から施行された特定小型原付(いわゆる「電動キックボード」など)も「逆走可」となっていますが、それ以外の一般的な一方通行の道路では電動キックボードなどが逆走することはできません。

 渋谷区は電動キックボードなどのユーザーが多い土地柄であることから、これまで以上に交通標識の理解と遵守が求められています。