「男性不妊症」の検査やセルフチェック法とは? 不妊の原因も専門医が解説
「パートナーが妊娠しにくい」と悩んでいる男性は、自身が「男性不妊症」の可能性もあります。しかし、病院に相談にいくのは少し勇気がいるかもしれません。そこで、男性不妊の原因やセルフチェック方法などについて、泌尿器科医・生殖医療専門医の永尾光一先生(銀座リプロ外科)に、Medical DOC編集部が話を聞きました。
男性不妊症とは? 男性の不妊症に多い原因を医師が説明
編集部
「男性不妊症」とはなんですか?
永尾先生
「定期的な性交渉を持ち、避妊していないにもかかわらず、1年以上妊娠が成立しない状態」がいわゆる「不妊」です。「男性不妊症」とは、文字通り不妊の原因が男性側に存在するものを指します。
編集部
男性不妊症の割合は高いのですか?
永尾先生
皆さんが思っているよりも多いと思います。男性不妊は48%と約半数を占めており、決してレアケースではないことが分かります。※HUMAN+
https://saas2.startialab.com/acti_books/1045178467/18329/HTML5/pc.html#/page/70
編集部
具体的にどういった要因で男性不妊症となるのでしょうか?
永尾先生
厚生労働省の調査によると、「治療できる男性不妊症原因」として最も多いのは「精索静脈瘤」で、次に「性機能障害(ED)」が続きます。ほかには、割合としては少ないですが、「精路閉塞」「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」などもあげられます。一方、治療困難な原因には、「染色体・遺伝子異常」や「薬剤性不妊」「停留精巣」などがありますが、それ以上に多いのが「原因不明」の不妊です。※厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究
http://www.j-andrology.org/news/web2017118.pdf
編集部
「気になってはいるけど、病院に行くのはちょっと恥ずかしい」という男性も多い気がします。
永尾先生
そうですね。生殖医療専門医(泌尿器科)にかかるのは勇気がいるという男性は多いと思います。そういう場合は、まずはご自身でセルフチェックをしてみることをお勧めします。
男性不妊症をチェックする方法は? 精液検査やエコー検査とは?
編集部
自分でチェックできるのですか?
永尾先生
はい。「男性不妊症セルフチェック」というのがあります。以下のようなチェック項目です。さらに、「補助項目」というのもあります。これらに当てはまる項目が多いほど、男性不妊症である可能性が高いので、早めの受診をお勧めします。挿入・射精ができない□
陰毛が少ない・精巣が小さい□
陰嚢の腫れ・でこぼこ・熱感を感じる□
陰嚢の違和感・鈍痛を感じる□
陰嚢・精巣サイズに左右差がある□
陰嚢が腫れた経験がある □
パイプカットをした経験がある□
泌尿器科的検査を受けていない□
編集部
補助項目についても教えてください。
永尾先生
「主要項目」については医学的根拠の高いものがチェック項目となっており、「補助項目」は医学的根拠は少ないものの、原因として考えられるものがチェック項目となっています。主要項目のチェックが多かった人はもちろん、主要項目は少なかった方でも、補助項目に複数個該当する場合はリスクが高いため、専門医を受診することをお勧めいたします。喫煙している□
肥満気味□
熱い湯船・サウナに入る□
ブリーフをはく□
プロペシア(フィナステリ)・ザガーロ(デュタステリド)・筋肉増強剤の服用□
精液検査しか行っていない□
補助的な内服(サプリメント・漢方・ホルモン薬)しか行わない□
婦人科治療と補助的な内服だけでよいと思っている□
編集部
泌尿器科を受診した場合、どんな検査をするのでしょうか?
永尾先生
不妊症の診断に必要な検査は3つあります。まずは、男性不妊症の診断に最も重要な「精液検査」で、精子の状態を調べます。そのほかには、「エコー検査」で生殖器の状態を調べたり、「血液検査」で血中の男性ホルモンの値を調べたりします。医師の診察で、外陰部の状態や精巣サイズの確認させていただいたり、場合によっては尿検査なども行ったりします。
男性不妊症は妊活で改善できる? 種類・症状・機能異常別の治療方法も解説
編集部
「男性不妊症」と診断された場合、どうしたら良いのでしょうか
永尾先生
原因によって、必要とされる治療をしていきます。例えば、男性不妊症の原因の約30~40%を占めると言われている「精索静脈瘤」が見つかった場合などは、手術治療が選択されます。
編集部
手術が必要なのですね。
永尾先生
そうですね。「精索静脈瘤」は、精索部や陰嚢に血液がうっ血する病気で、投薬による治療ができないのです。ただし、手術といっても当院では1時間ほどで終了する術式を選択することが可能です。半日もかからない日帰り手術を行うことができる、痛みも極めて少ない治療です。
編集部
ほかにはどのような原因別の治療法があるのですか?
永尾先生
例えば、先ほどの「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」というのは、要は「下垂体ホルモンの低下」により精巣の機能が低下して、精子が作られなくなっているケースなので、ホルモン注射で治療が可能です。「性機能障害(ED)」に対しては、内服薬で治療を行っていきます。また、過去にパイプカット手術を受けた方で、再建などで再度出産を望まれる場合には「パイプカット再建術(精管結紮術)」という手術もあります。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
永尾先生
不妊治療は「女性がするもの」という認識の方も多いと思いますが、先述の通り「男性側に原因がある」「両方に原因がある」というケースも決して珍しくありません。「パートナーが不妊治療をしているのに、結果が出ない」「顕微授精でうまくいかない」という方は、先ほどのセルフチェックを試してみましょう。生殖専門医(泌尿器科)が作成したチェックリストであり、医学的根拠の高いものがチェック項目となっています。結果に不安・懸念を抱いた方には、何らかの治療可能な原因があるかもしれませんので、お近くの生殖専門医(泌尿器科)に相談してみてください。
編集部まとめ
男性不妊症の割合の高さに驚いた方も多いのではないでしょうか。驚きとともに、不安になってしまった方は、一度「セルフチェック」で確認してみるのをお勧めします。チェックが多かった方は、早めに受診し、治療すると、悩みも早期に解決するかもしれません。
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