(写真:アフロ)

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5月19日(日本時間)の対オリオールズ戦に出場したエンゼルス・大谷翔平選手(28)は、初回の第1打席に今季10号目となる先制ソロホームランを放った。ベンチで兜をかぶると、笑顔でチームメートとハイタッチ。これにより打点は30に到達。さらに8回には決勝打となる内野安打を放ちチームの勝利に貢献した。

21日には「3番DH兼投手」で今季10度目の先発マウンドに登板。力投で勝敗はつかなかったが、チームは勝利を収めた。連日、目覚ましい活躍を見せる大谷は読書家としても有名だ。なかでもメジャー移籍時から読み続けている愛読書があるという。

「大谷選手はマイケル・サンデル教授(70)の本を何冊も読んでいるそうです。移籍交渉中に日本側のエージェントがサンデル教授のことを教えたのがきっかけのようで、興味を持った大谷選手は著書を購入して、持ち歩くようになったと聞いています。

なかでも好きなのは、邦訳されて日本でも100万部を超える大ベストセラーとなった『これからの「正義」の話をしよう』で、よほど共感したのか、お姉さんにも『ぜひ一度、読んでみて!』と熱心に薦めたそうです」(在米コーディネーター)

サンデル教授はハーバード大学で40年以上も政治哲学や倫理学を教える名物教授で、学生と積極的に議論を交わす形式の講義「Justice(正義)」は大学内でも屈指の人気を誇る。サンデル教授は授業で学生たちに、

「暴走列車を運転するあなたは、このまま進めば5人をひき殺してしまう。だが列車を右にそらせば、そこにいる作業員1人を犠牲にするが5人は助かる。あなたならどうしますか?」

などと問いかける。生命の重み、社会格差、パンデミック対策、国家の役割、同性婚など、授業で取り上げる題材は難題ばかり。サンデル教授は哲学者の考えを引用するなど、ウイットを交えて各問題を掘り下げ、学生たちの価値観・倫理観を問う。

講義は全米で話題となり、ハーバード大は史上初めてテレビによる「一般公開」に踏み切った。またオンラインの講義は全世界で数千万人が視聴し、複数の著書は約30カ国で翻訳されベストセラーに。

「日本ではNHKで’10年4月から『ハーバード白熱教室』として講義の様子が放送され話題になりました。’21年には約10年ぶりとなる著書『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(早川書房)が出版されて再び注目を集め、昨年2月からNHKが不定期で『マイケル・サンデルの白熱教室』として新シリーズも放送し、反響を呼んでいます」(制作関係者)

■「授業に出て自分で単位を取って。やってみたいです」

そんな世界的に人気のサンデル教授が、大谷を大絶賛しているのだという。

’21年にサンデル教授を招いて「オンライン国際シンポジウム」を開催した一般社団法人PPP推進支援機構のマネージャー・橋詰健さんは言う。

「サンデル教授は野球が好きで、若いころは少年野球のコーチも務めていたそうです。またかねて日本の野球にも注目されていたようで、それもあって大谷選手のファンだと公言されています。今回のシンポジウムに参加されたのはほとんどが日本人でしたので、わかりやすいたとえとして大谷選手の名前を出した部分もあったのでしょうね」

実際、シンポジウムのレポートには、サンデル教授の次のような発言記録がある。

《MLBの大谷翔平選手が偉業を成し遂げたのは、自分自身の才能におごらず、野球に謙虚だったから》

サンデル教授は“成功者の謙虚さ”という点で大谷を高く評価しているようだ。

「サンデル教授の考え方として、“どれだけ成功したエリートでも全てが自分の実力によるわけではない”という意識があるんです。たとえば必死で努力して有名大学に入って、出世なり起業なりして金持ちになれた成功者がいたとします。その人は“自分の力で勝ち取った”と思うでしょうし、場合によっては貧困層を“負け組”と見下したりすることもあるでしょう。

でも実際は、裕福な家庭は生まれながらにエリートになるためのレールが敷かれていたり、スタートラインそのものが不平等な世の中になってきているんです。こうした生まれながらの不平等は世代が進むにつれ広がっていきます。サンデル教授はそういった能力主義、学歴重視の社会に警鐘を鳴らしているんです。だからこそ、世界的なスターとしてあれだけ成功しても謙虚な姿勢を貫いている大谷選手を“絶好の見本”として絶賛しているのでしょう」(前出・橋詰さん)

「授業に出て単位を取って。やってみたい」

実は大谷はメジャー移籍前、将来やってみたいこととして、インタビューでこう語っている。

《普通のキャンパスライフというか、大学に行っていないので。授業に出て自分で単位を取って。そういうのって話でしか聞かないんで、どれくらい大変なのかというか、やってみたいです。引退して学校行く人もいますけど》(『別冊カドカワ』’17年3月29日号)

憧れのキャンパスライフを送るなら、やはり“両思い”のサンデル教授がいるハーバード大学になるのだろうか。前出の在米コーディネーターは言う。

「大谷選手には監督を通じて大学野球からも勧誘があったそうです。ただ、その時点ですでにメジャー行きを希望していたので、大学には見向きもしなかったと聞いています。でも今は大好きなサンデル教授の授業を、一度はハーバード大で実際に受けてみたいと心から願っているようです」

“世界一受けたい授業”をいつかハーバードで――。飽くなき向学心が大谷の快進撃を支えていた!