かつて羽田・成田両空港の発着回数の強化が求められるなか、東京近郊に「首都圏第3空港」を作るという案が存在しました。この空港案、実現すれば国内では規格外の規模を持つメガ空港になるであろうものも存在しました。

最終的には「羽田拡張」に落ち着いたものの

 日本の「首都圏空港」である羽田空港、成田空港は長年にわたり発着回数の強化が求められる一方で、その強化に不可欠な空港の大規模拡張が難しいということが課題となっていました。そのようななか東京近郊に「首都圏第3空港」を作るという案が、かつて持ち出されたことがあります。どのようなものだったのでしょうか。


羽田空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 この案が持ち出されたのは、2001年のこと。当時、羽田空港はほぼ国内線専用空港で滑走路は3本(現在は4本)、成田空港は2本目の滑走路が完成する直前だった時期です。

 最終的には「当面の解決策として、羽田再拡張が、技術的な困難性や、航路・港湾への影響の課題があるものの、羽田の既存ストックを最大限活用するという意味でも、アクセス等の利用者利便、費用・工期等においても、最も優れている」として新滑走路の建設という方向性に進んだわけですが、その過程で「首都圏第3空港」を新たな土地に作るという案が10以上、各団体から提案されたことが国土交通省により公開されています。

 そしてこれらの案のなかには、もし実現すれば国内では規格外の規模を持つメガ空港になるであろうものも存在しました。

5000m以上の滑走路を3本? 提案された「新・首都圏空港」たち

 たとえば、九十九里沖空港誘致懇話会がかつて提案していた千葉県・九十九里沖10〜15km海上に「首都圏第3空港」をつくるという案では、日本でもっとも長い滑走路である成田空港A滑走路(4000m。関西空港にも同規模のものが備わる)を上回る、5000mの滑走路を3本作るという超大型の空港案でした。

 九十九里近郊で幼少期を過ごしてきたという男性は、「小学校のときに、たしかに九十九里に空港ができるかもしれないという噂は流れていました。田舎町でしたので、これからここが大都会になるかもな……と考えたことを記憶しています」と話します。

 羽田空港にほど近い東京湾内にメガ空港を作る案も公開されています。東京湾水系空間研究会は東扇島地区に4000m滑走路を2本、3500m滑走路を2本備えた空港案を提案。ワイ・ワット・グループも東京湾水系空間研究会案にほど近い、東京湾の内川崎・横浜沖に5500m滑走路を3本備えた空港案を提案しています。


羽田空港のD滑走路。「再拡張」で設置された滑走路で2500mの長さを持つ(乗りものニュース編集部撮影)。

 このほか、マリンフロート推進機構提案の「海ほたる空港」をはじめとする木更津沖に空港を設置する案のほか、千葉・富津沖、内陸では多摩地区や栃木市の案も記録されています。また、構造としてもとても斬新なものが提案されており、「最上階が着陸帯の3層構造体」(多摩空港研究会)といった案も存在しました。これはつまり、一階に空港ビル、2階に駐機場、最上階に滑走路を設ける、ということです。

 しかし結果としてこれらの案が現実となることはなく、2001年に「羽田空港の再拡張に関する基本的考え方」の決定・公表。その後2002年に実施された首都圏第3空港調査検討会では「首都圏第3空港の候補地についてしっかり検討しておき、将来の需要の動向に応じて、迅速な対応ができるようにしておくべきである」「羽田再拡張は暫定的なものと認識しており、将来の見通しをつけておくべき」「羽田再拡張のその後の話については今決めるべきではなく、次の世代に任せればよい」といった意見があがっています。