5時間未満の睡眠で車を運転するのは飲酒運転と同じくらい危険という研究結果
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飲酒運転が自動車事故のリスクを高めることはほとんどの人々が知っているはずですが、睡眠不足の状態で運転することもまた危険であり、日本の道路交通法では過労運転となる可能性もあります。オーストラリア・セントラルクイーンズランド大学の医学部講師であるMadeline Sprajcer氏らの研究チームは、「過去24時間の睡眠時間が5時間未満の状態で運転することは、飲酒運転と同じくらい危険」だという研究結果を発表しました。
https://doi.org/10.2147/NSS.S392441
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Driving on less than 5 hours of sleep is just as dangerous as drunk-driving, study finds
https://theconversation.com/driving-on-less-than-5-hours-of-sleep-is-just-as-dangerous-as-drunk-driving-study-finds-202514
オーストラリア自動車協会が2021年に発表した(PDFファイル)レポートによると、すべての自動車事故のうち約20%は疲労によって引き起こされているとのこと。過去20年間にわたり、飲酒運転による事故は大幅に減少していますが、疲労による事故の件数はそれほど減っていないそうです。
Sprajcer氏らは飲酒運転による事故件数が減っている理由について、以下の点を挙げています。
・飲酒運転は危険だと広める公教育に多額の投資が行われたこと。
・ドライバーがどれほどお酒を飲んだら運転してはいけないのかを見極めるラインが明確に設定されていること。
・路上での飲酒運転摘発キャンペーンなどを含む強力な戦略がとられたこと。
・飲酒運転による事故で厳罰が下される裁判結果が広く公表されていること。
また、ドライバーは実際にどれほど運転する能力があるかにかかわらず、一定の基準値を超えたら飲酒運転と見なされます。たとえば日本では、呼気に含まれるアルコール濃度が0.15 mg以上であれば飲酒運転と見なされ、オーストラリアでは血中アルコール濃度が0.05%を超えると法的に問題があると見なされます。なお、日本における呼気中アルコール濃度0.15mg以上という基準は、血中アルコール濃度に換算すると約0.03%に相当するとのことで、オーストラリアの方がやや緩いそうです。
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Sprajcer氏らは飲酒運転における血中(呼気中)アルコール濃度と同様に、ドライバーが疲労のために正常な運転ができないと判断できるラインがあるかどうかを調べるため、実験やフィールドワークに基づく61件の研究結果を分析しました。
その結果、過去24時間の睡眠時間が4〜5時間である場合、自動車事故のリスクが約2倍になることが判明しました。これは、ドライバーの血中アルコール濃度が0.05%である場合の自動車事故リスクと同レベルとのことで、睡眠不足が飲酒運転に匹敵するほど事故のリスクを高めることが示されています。
また、ドライバーが自動車事故を起こすリスクは、睡眠時間が減少するほどに高くなることもわかっています。研究チームによると、前夜の睡眠時間が0〜4時間だった場合、自動車事故を起こすリスクは最大15倍になるとのことです。
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Sprajcer氏らは、「私たちのレビューは、ドライバーに対して科学的な証拠に基づき、ハンドルを握る前に一定の睡眠時間の確保を義務づけることが合理的である可能性が示唆されました。もし、酔っ払った状態のリスクに合わせるならば、運転前に最低4〜5時間の睡眠を要求することを検討してもいいかもしれません」と述べています。
しかし、アルコールの摂取がほとんど個人の自由な選択に委ねられているのに対し、睡眠時間は生まれたばかりの赤ちゃんの世話、交代勤務、睡眠障害といった、個人の選択では変えにくい要因が関与するケースも多いです。法律を導入する際にはこの点を考慮する必要があるほか、睡眠時間やそれに基づくドライバーの疲労度をチェックする測定方法についても検討する必要があります。
Sprajcer氏らは、オーストラリアにおいて疲労したドライバーの運転を規制するため、さまざまなコミュニティメンバーや交通安全の利害関係者と協議しているとのこと。予備調査結果では、疲労した状態での運転を避ける公教育やガイダンスが望ましいことが示されたそうです。Sprajcer氏らは、「運転前の睡眠時間を法律で定めるのはまだ少し先かもしれませんが、過去24時間の睡眠時間を念頭に置いておくことを推奨します。もし、睡眠時間が5時間未満であれば、運転は控えた方がいいでしょう」と述べました。
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