現役時代、ジュビロ磐田の「黄金時代」の一翼を担い、日本代表でも活躍した福西崇史氏。今回は当時、敵として対峙するのが「嫌だった選手」「厄介だった選手」について話を聞いて、そのベスト5を選出してもらった――。


福西崇史氏が現役時代、対峙する敵として嫌だったという山口素弘

福西崇史氏が現役時代
「敵として厄介だった」選手ベスト5
1位=中村俊輔
2位=遠藤保仁
3位=山口素弘
4位=今野泰幸
5位=松田直樹

 敵で嫌だった選手も、やっぱり1位はシュン(中村俊輔)です。シュンとは、のちに日本代表で一緒にプレーすることになるわけですが、最初は敵としてプレーするところから始まっていますからね。

 こうした話は表と裏なので、味方でよかった選手は当然、敵になると嫌ですよ。

 Jリーグでデビューした頃のシュンは、もちろんテクニックはあるけれど、線が細かった。だから、力づくでボールを取りにいこうとするんだけど、なかなか取れない。そのうち、どんどんプレーが研ぎ澄まされていって、「これはもう無理やん」ってなっていきました(苦笑)。彼に対して、ボールを取りに行くのは嫌でしたね。

 その後、シュンが海外へ行って、Jリーグで対戦する機会はなくなりましたけど、日本代表で一緒になってみて、「味方でよかった」って思いました。

 ヤットも同じです。味方の時はこんなにやりやすい選手はいないけれど、敵としてやる時は本当に嫌な選手でしたから。

 繰り返しになりますけど、敵と味方は表裏一体。だから、シュン、ヤット、名波(浩)さん、(小野)伸二と、「味方でよかったな」と思う選手は、敵になると嫌な選手ばかりです。シュンとヤットだけ両方のベスト5に入れましたが、味方でよかった選手と、敵で嫌だった選手は、全員同じでもいいくらい。

 でも、そういう選手と相対するのは楽しいですよ。めちゃくちゃ疲れますけど、「サッカーやってるわぁ〜」っていう充実感もめちゃくちゃ味わえますからね。当時は、それが毎週のようにあったんですから、スゴいことです。

 もし自分がDFだったら、岡崎(慎司)なんかは絶対に嫌な選手だと思います。あんなに繰り返し、ず〜っと走り続けられるんですから。中山(雅史)さんもそうですよね。

 何度も動き直して、続けて何回も仕掛けてくるから、守るほうは油断ができないし、休めない。それでいて、一瞬でも気を緩めたら点を取られてしまうんですから、やってられない。本当に嫌な選手だと思います。

 今の日本代表で言えば、前田大然ですね。あれだけ前から来られるのは、嫌だと思います。

 僕はしっかりボールを止めて、時間を作ってパスを出すタイプでしたけど、彼が来たらキープせずに、すぐボールを離すでしょうね。自分が少しでもミスしたら終わりですから。

 ただ、彼らとは実際に対峙したことがないので、敵で嫌だった選手に入れることはできません。

 自分が対峙したことのある選手で、しかも味方で一緒にやったことのない選手のなかから選ぶとすれば、モトさん(山口素弘)は嫌でした。

 とにかくサッカーに関する知識というか、考えが豊富なので、先々を読んでプレーしている。「もうここにいるのか」って思うことが多くて、自分が狙っていた場所に先回りされている感じがありました。

 逆に言えば、味方として一緒にやってみたかったなとも思う選手です。

 サッカーって、いかに相手の裏をかくかというか、読み合いが勝負ですからね。もちろん、ベースとなる技術がしっかりしていることありきですけど、知識があるかどうかは本当に大きい。

 だから、相手選手を見ていると、「あっ、自分の考えがバレたな」って思う時がありますよね。レベルが上がっていくと、そういう選手とはプレー中に目が合います(笑)。

 また、それとは違ったタイプで嫌だったのは、今野(泰幸)ですね。

 今野とはFC東京で一緒にやったことはありますけど、やっぱり敵としての印象のほうが強いです。

 今野の場合、ボールを取ることに関してはとにかくスゴい。でも、ポジショニングがいいわけじゃないし、ボールを取りに行くタイミングがいいわけでもない。プレーが洗練されている人って何をやるかがわかりやすいんですけど、正直、彼のプレーはわからないことが多かったです。

 でも、「そのポジショニングはダメじゃないの?」と思いながら見ていると、「え〜っ!? その位置から、そこに(ボールを奪いに)行けるの?」と思わされる。今は比較的真面目な選手が多いというか、何をやりたいのかがわかる選手が多いですけど、今野はそうではなかったです。

 そういう意味では、何を考えてるかわからない選手は、相手にとっては怖い。何をしでかすかわからないですからね。

 マツ(松田直樹)もそういう選手でした。マツはDFであるにもかかわらず、上がっていきたくてしょうがないから、どこで何をしてくるかわからない。

 加えて、マツが嫌だったのは、チームの雰囲気を変えられること。

 僕らって、相手の心を折るのが仕事みたいなところがあるわけです。相手をヘコませて意気消沈させる。相手にこちらを嫌だなと思わせれば、ふつうはもう勝ちなわけです。

 ところが、マツなんかはそこで盛り上げて、もう一回チームを復活させてしまう。そういう選手がいるチームとやるのは、本当に嫌でしたね。

福西崇史(ふくにし・たかし)
1976年9月1日生まれ。愛媛県出身。1995年、新居浜工高卒業後、ジュビロ磐田入り。FWからボランチにコンバートされると、すぐにレギュラーを獲得。以降、主力選手として数々のタイトル獲得に貢献した。日本代表でも活躍し、2002年日韓W杯、2006年ドイツW杯に出場。国際Aマッチ出場64試合、得点7。現在はサッカー解説者、指導者として奔走している。