出し入れがしやすいキッチン収納は、料理の手間を軽くしてくれるうえに、死蔵品が生まれるリスクを減らします。「中古住宅を購入&リノベーション」という選択をした日刊住まいライター。整理収納アドバイザーということもあって、キッチン収納にはこだわって、造作をすることにしました。レイアウトの様子、また使い勝手について語ります。あえてつり戸棚をつくらなかった理由も。

シンクとIHヒーターが2列に分かれたII型キッチンのわが家

4年前に戸建ての中古住宅をフルリノベーションしたわが家。筆者は整理収納アドバイザーということもあって、収納にはこだわってプランを考えました。なかでも、キッチンの造作収納はとくに重視した部分です。

 

わが家の1階は、LDKの一室空間がメインになっています。キッチンのレイアウトは、シンクとIHヒーターが2列に分かれたII型キッチン。シンク側のキッチン収納は既製品ですが、IHヒーター側のカウンター収納はすべて造作しました。

 

IHヒーター下にオープンな造作収納を

IHヒーターの下には、鍋やフライパンを収納する棚をつくりました。使い勝手を優先して扉なしのオープン収納に。調理中にサッと道具を取り出せるので助かっています。

 

じつはこの棚板は、引き出し式になっています。というのも、カウンターの奥行きはIHヒーターに合わせて65cmと少し深め。引き出し式にすることで、奥のものの出し入れがスムーズになるように工夫したのです。これなら、重量級の鉄製鍋だって問題なし。

奥のものが出し入れしにくい収納は、死蔵品を生みがちに。また、道具を使うのがおっくうになって、料理の幅を狭くしてしまうことも。出し入れのしやすさは、キッチンにとても重要なのです。

 

ゴミ箱スペースもオープンに造作

IHの右側、カウンターの中央エリアは、ゴミ箱を置くためのスペースです。隠さず、あえてオープンにしています。ここは、シンク前に立ったときに、振り返れば、ちょうど手の届く位置。

見た目を重視すれば、ゴミ箱スペースを隠せるよう、扉をつくるといった選択もありました。しかし使い勝手を考えて、オープンスペースにゴミ箱を置くだけ、というシンプルなスタイルを採用。

ちなみに、スペースの幅は、ゴミ箱のサイズと個数を考慮して決めています。おかげで、ぴったりの収まりに。

 

食器収納は引き出しに。奥行きある収納でも使いやすい!

カウンターの右手側には、食器を収納するための引き出し収納を造作しました。こちらも奥行きがあるカウンターのため、食器などの細かいものを収納するには、やはり引き出しが便利。

引き出しは、高さ90cmのカウンターに対して5段。引き出しの1段分の高さは15cmほどで、食器を重ねて平置きすることを前提に決めました。

ちなみに3人家族の筆者。食器は好きですが、持ちすぎても使いこなせないので、増えすぎないように注意しています。重ねて収納できるように、同じ種類でそろえているものが多いです。

 

引き出しは、高さのあるものを収納することを、あえて想定していません。一般的なキッチン収納の引き出しより少し浅めに設定。5段分の引き出しをつくることを優先しました。

ちなみに5段という段数は、収納したいものの量や形から、なにをどのようにしまうのか事前にシミュレーションをして、導き出しています。

ものが丸見えになる収納エリアは死角に配置

カウンターの右手側からL字につながる部分は、壁には棚をつくり、カウンター下はオープンスペースにしました。

このL字につながるスペースには、電子レンジなどの家電もまとめて置き、スペースの上から下まで、がっつりと収納として活用。筆者のキッチンスペースとしては唯一、たくさんのものが丸見えになっている一角です。

 

L字型のレイアウトに、そして、このエリアをがっつりと収納スペースとして活用することにしたのには、ちゃんと理由があります。

じつはこのエリア、ダイニングからは見えにくい位置関係になっているのです。おかげで、キッチンにありがちな生活感が、ダイニングへと漏れる心配はなし。気持ちよく食事を楽しめます。

余談ですが、先ほど紹介したIH下の収納やゴミ箱についても同様の仕掛けに。シンクのあるカウンターが、うまく存在を隠してくれて、やはりダイニングからは見えません。

 

カウンター下のオープンスペースには、既製品の収納(無印良品のステンレスユニットシェルフ)を置いています。

カウンターのすべての部分を造作でそろえたいという思いがあったのも事実。しかし、既製品を取り入れたことで、造作のコストをカットできました。それに、リビングから見えにくい位置ということで、妥協したのです。

既製品なら、将来ライフスタイルが変わったとき、手軽に収納システムを変えることもできるでしょう。柔軟性を考えれば、メリットは大きいかもしれません。

 

つり戸棚はつくらず。圧迫感がなくすっきり

キッチン正面のカウンター上の壁には、すっきりとさせるため、あえて収納はつくりませんでした。

収納量に不安があれば、つり戸棚をつけることは有効だったかもしれません。しかし筆者は、事前にものの量や使い方を含めて何度もシミュレーションしていたため、不安は皆無でした。

「スペースがあるなら、念のために収納を確保しておく」という考え方も、人によってはあるでしょう。しかし、目線より高い位置の収納は、使い勝手が劣ります。そのうえ、圧迫感も出てしまうことに。加えて、造作する収納を増やせば、コストもその分かかるのです。

以上、整理収納アドバイザーの筆者がこだわったキッチンの造作収納でした。使い勝手と見た目のバランスを考えた造作収納。実際に使ってみても、スムーズな作業と片づけやすさに助けられています。加えて、キッチンへの愛着もわき、いつでも整ったキッチンをキープできています。