テスラは2016年から「全車両に完全自動運転対応ハードウェア搭載」をうたっており、実際に自宅から会社まで、完全自動運転を用いて通勤するという映像を公開しています。ところが、実際にはこの映像はやらせだったことを、自動運転ソフトウェア担当ディレクターが証言していたことがわかりました。

Tesla video promoting self-driving was staged, engineer testifies | Reuters

https://www.reuters.com/technology/tesla-video-promoting-self-driving-was-staged-engineer-testifies-2023-01-17/

Tesla staged 2016 self-driving demo, says senior Autopilot engineer | Ars Technica

https://arstechnica.com/cars/2023/01/tesla-staged-2016-self-driving-demo-says-senior-autopilot-engineer/

問題の映像は以下の記事で取り上げたもので、モデルXの「完全自動運転」機能を用いて自宅から会社まで通勤するという内容。運転手は乗っているものの、映像の中ではハンドル操作などは一切行っていませんでした。

「完全自動運転」を実現したテスラ・モデルXで自宅から会社まで通勤、さらには自動パーキングする様子 - GIGAZINE



この映像がやらせであると証言したのは、自動運転ソフトウェア担当ディレクターのアショク・エルスワミ氏です。エルスワミ氏は2018年にAppleのエンジニアであるウォルター・ファン氏が乗るモデルXが自動運転中に中央分離帯に激突、死亡した事故に関してテスラに対して起こされた訴訟の証言録取中、宣誓のもとでこの証言を行いました。

エルスワミ氏の証言によれば、映像はイーロン・マスク氏から「システムの機能のデモンストレーション用」として制作を依頼されたもの。「運転手が運転席にいるのは法的理由によるもので、彼は何もしておらず、車は自動運転状態です」と説明される映像ですが、実際には、カリフォルニア州メンロパークにある「自宅」からパロアルトにあるテスラ本社までのルートが事前にプログラムされていたとのこと。また自動駐車時には、駐車場のフェンスに激突する一幕もあったそうです。

証言において、エルスワミ氏はこの映像は「システムに組み込むことが可能な機能」を示したもので、2016年時点のテスラXに搭載した機能を示したものではないと述べました。

前述の死亡事故について、テスラはファン氏の不注意を原因だと主張しましたが、ファン氏は事故に遭う前から「車は衝突回避のために勝手に曲がろうとする」と不満を述べており、2020年に国家安全輸送委員会はテスラ、カリフォルニア州交通局、国家道路交通安全局が死亡事故の責任を共有するものであると厳しく非難しています。

ロイターによると、このことについてエルスワミ氏やマスク氏、テスラからのコメントは得られなかったとのことです。