テスラは2022年11月に「完全自動運転(FSD)ベータ版」を北米でリリースしました。しかし、「完全」との名前を冠していながらドライバーによる常時監視が必要な「レベル2」に近いと位置づけられているテスラのFSD機能には改善が見られず、Waymoなどに大きく水をあけられてしまっている状態だと、EV専門ニュースサイト・Electrekが報じました。

Tesla Full Self-Driving data looks awful: We challenge Elon Musk to prove otherwise | Electrek

https://electrek.co/2022/12/14/tesla-full-self-driving-data-awful-challenge-elon-musk-prove-otherwise/

テスラのFSD機能について論じるにあたり、Electrekが注目したのが「miles driven per disengagement(離脱当たりの走行距離)」という指標です。この「離脱」とは、自動運転機能が中断されることを指します。

ドライバーが運転席にいることが必要な自動運転車では、ドライバーが危険回避や交通法順守のために自動運転機能をオフにしたり運転を代わったりして機能を中断することがあるため、離脱が起きるまでどれだけ長く走行できるかが自動運転機能の性能の指標の1つとして用いられています。

自動運転技術を売りにしている企業の多くは離脱に関するデータを積極的に公開していますが、テスラは離脱データを明かしていません。しかし、FSDベータ版のテスターたちは自主的に走行データを共有しているため、グリーンテックファンド・Snow Bull Capitalのテイラー・オーガンCEOはこのデータからテスラの「離脱当たりの走行距離」を算出しました。

その結果、FSDベータ版における「離脱当たりの走行距離」は前年比54%減と悪化しており、一進一退を繰り返していることを踏まえても、この1年間でほとんど改善が見られなかったことが分かりました。



テスラのFSD機能は離脱まで数マイル(1マイルは約1.6km)しか走行できない一方で、WaymoやCruiseといった他の自動運転機能は数万マイルも走れることが、データから示されています。以下の比較は2022年3月時点でのデータを使用しているため、テスラのFSD機能が悪化傾向にあるということは、記事作成時点ではさらに差が大きくなっていることが予想されます。



前述の通りこのデータはテスラユーザーの自主的な報告に基づくもので、データの量もあまり大きいとは言えず精度が低い可能性があるため、Electrekは「イーロン・マスクCEO、テスラFSDベータ版のデータを公開して、完全自動運転を実現するという約束を果たすまでの道筋を示してください。そうでなければ、このような見栄えがよくないデータを元に途中経過を評価せざるを得ません」と述べて、テスラに対して離脱に関するデータの公開を求めました。