AZでは本職の右SBだけでなく右ウイングでも活躍している菅原。(C)Getty Images

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 11月3日、ヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)グループEの首位攻防戦は、ホームのAZがドニプロ-1を2-1で破って1位の座を守った。これでAZはベスト16進出が決定。一方、2位のドニプロ-1は来年1月のプレーオフにベスト16行きをかける(対戦相手はヨーロッパリーグ・グループステージ3位のチーム)。

 試合後、インタビュールームに姿を表した菅原由勢は開口一番、「グループ・ウイナーです! 僕のアシストが勝利につながった。嬉しいですね」と語った。1-1で迎えた87分、菅原のカーブをかけたクロスが寸分狂わずCFヴァンゲルス・パブリディスの頭に届き、これが決勝ゴールとなったのだ。

「引き分けでも1位だったけれど、今年最後のホームゲームで『引き分けでオッケー』というつまらないサッカーはしたくなかった。今後のコンディションを考えると1位抜けは大事だし、ファンの人も最後のホームゲームで勝たないと怒ると思うので、引き分けなんて一切思ってなかった。その気持ちが勝利につながりました」
 
 今シーズンのAZは開幕から主力選手の負傷が相次いだものの、若手選手の台頭によって勝利を重ね、オランダリーグで暫定3位と優勝戦線に絡んでいる。怪我人の復帰によってチームの層が厚くなり、週末のリーグ戦を見据えつつ戦ったドニプロ-1戦では次々と選手を交代させても戦力が落ちることはなかった。

「昨シーズンとAZが違うのは、ベンチにも頼りになる選手がいっぱいいる。(ドニプロ-1戦では)交代を機にチームのギアをあげようとしました。交代の選手たちがポジティブな影響を与えてくれています」

 今季、右ウイングとして起用されることの多い菅原は、ドニプロ-1戦でも3トップの右で先発した。しかし、後半に入ってから本職の右サイドバックを努め、より“らしい”プレーを披露した。

「今日で3ゴール・4アシストになりましたが、監督には『自分は右サイドバックのほうが数字だけでなく、プレーの内容面でもビルドアップ、守備のオーガナイズ、チームのバランスを取ることなど、もっと貢献できるよ』と話してます。今日の後半は楽しかった。『やっぱり右サイドバックは自分のポジションだな』と思いました」

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 今季の欧州カップ戦でオランダ勢は、アヤックスがチャンピオンズリーグ3位でヨーロッパリーグ(EL)へ、フェイエノールトがEL1位、PSVがEL2位になり勝ち抜きを決定し、AZもECLの年越しを決めている。UEFAリーグランキングで今季7位のオランダリーグは、来季6位に上がりそうな勢いだ。

「オランダリーグは世間的に『アヤックス、PSV、フェイエノールトだけ』という見方があると思いますが、本当にまったくそんなことはない。AZもそう。トゥべンテもそう。また中位・下位のチームもしっかりサッカーをしてくるし、かなりレベルは高いので毎試合やり甲斐がありますし、プレーして面白い。もちろん、4大リーグと比較すると予算の規模やお金のかけ方が違うので簡単に比べることはできませんが、ヨーロッパリーグやカンファレンスリーグのベスト16、32に行くのは簡単なことではない。そのことがオランダリーグの力をある程度示せていると思います」
 
  11月1日、カタール・ワールドカップに向けて26人のメンバーを発表した日本サッカー協会の記者会見を菅原も見ていた。しかし、自分の名前は呼ばれなかった。

「これでね、悔しいと思わなかったらサッカー選手を辞めるべきだと思う。サッカーをやっている以上、この悔しさをどう感じるかというのは今後のサッカー人生においてすごく大切になってくると思います。監督が選んだ26人。それがベストのメンバーということ。そこに入ることができなった悔しさを、僕はプレーで『自分はできる』ということを見せつけるしかない。

 東京五輪のメンバーに落ちたこともそう。2年連続でこういう思いをしたので、最近いいことがないなと思ってますが、中身を見ればAZで昨季はほぼ全試合出場できたし、今シーズンも復帰してから試合にたくさん使ってもらっている。周りの評価も大事ですが、個人としての成長をまずは考えるべき。逆になんでメンバーに入れなかったのかも考える必要もあります。選ばれたとしても、そこで終わりではないし、落ちたからそこで終わりというわけでもない。死ぬほど悔しいですけれど、もう終わった……」
 
「もう終わったこと」と言いかけた菅原を遮り、私は「まだ終わってない。ワールドカップは26人だけの戦いではない。国を挙げた総力戦。今後の2週間でなにが起こるかわからない」と尋ねた。菅原は次のように答えた。

「今日も含めたら残り3試合あった。そこでただ全力を尽くし、AZの勝利に貢献するためになにをすべきかが一番大事になってくる。だけど現実として、サッカーは何が起こるかわからないスポーツ。僕も過密日程をこなしている立場なのでね。そこに関しては準備すべき。ともかく一喜一憂をしている暇は僕にはない。試合もあるし、僕自身もステップアップしていかないといけない。やることはいっぱいあります。もう自分も若くはない(22歳)。今シーズンは勝負の年。それを強く感じてます」

取材・文●中田 徹