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無人販売所に生後まもない男児が置き去りにされる事件が9月16日、鹿児島市内で発生しました。南日本新聞の報道によれば、無人販売所のカゴに、布のようなものにくるまれた裸の男児が置かれているのを、近くの管理人女性が発見し通報。男児は市内の病院に搬送され、現在まで男児の健康状態に問題はないそうです。

ネット上では「赤ちゃんの命が救われて良かった!」と喜ぶ声も多数ありましたが、警察は保護責任者遺棄を視野に捜査を進めています。

遺棄に至った事情はわかっていませんが、出産した新生児を置き去りにすることは「犯罪」となるのでしょうか。伊藤諭弁護士に聞きました。

●「相応の事情があるというケースが多い」

ーー「犯罪」となるのでしょうか。

男の子が無事に保護されたこと、本当によかったですね。

幼児のような保護を要する者を、保護する責任のある者が置き去りにしたり、必要な保護をしない行為は、保護責任者遺棄罪として、3か月以上5年以下の懲役に処せられます。

残念ながら、新生児が遺棄されてしまうケースは昔からよくあります。様々な事情で望まない妊娠に至ってしまった、育てられなくなってしまったなどの事情が絡むのがこの犯罪の特徴です。

また、新生児の遺棄の場合、性質上女性が「保護責任者」になりやすいという傾向もあります。子どもに罪がないのは当然ですが、この犯罪を犯してしまった人にも相応の事情があるというケースが多いといえます。

ところで、この犯罪が成立するには、要保護者(幼児など)が一定程度危険にさらされる状況であることが必要です。

一部の医療機関が実施しているいわゆる「赤ちゃんポスト」は、赤ちゃんが入れられるとすぐに保護されるシステムになっているようです。赤ちゃんポストに子どもを入れる行為は、必ずしも要保護者を危険にさらすというものではないとも言えますので、この行為を保護責任者遺棄罪に問うのは難しいと考えます。

このような犯罪がなくなることが理想ではありますが、処罰を重くすれば解決するという単純なものでもありません。様々な事情が生じたときに、適切に子どもを守ることができる社会の実現が望まれます。

【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:弁護士法人ASK新百合ヶ丘オフィス
事務所URL:https://www.s-dori-law.com/