アメリカのアラスカでとれるズワイガニが謎の消失を遂げて個体数が激減したため、当局が禁漁を発表しました。これにより外食産業などが打撃を受ける中、専門家はズワイガニの急激な減少の原因や、生態系への影響への調査を急いでいます。

One billion snow crab missing - Season Cancelled for Alaskan fleet

https://thefishingdaily.com/featured-news/one-billion-snow-crab-missing-season-cancelled-for-alaskan-fleet/

Alaska snow crab season canceled as officials investigate disappearance of an estimated 1 billion crabs - CBS News

https://www.cbsnews.com/news/fishing-alaska-snow-crab-season-canceled-investigation-climate-change/

アラスカ州漁業狩猟局(ADF&G)が、ベーリング海で実施したトロール調査の分析結果により得られたズワイガニの個体数が基準値を下回るため、2022〜2023年のズワイガニ漁は解禁しないと発表しました。当局の調べによると、ここ2年間で姿を消したカニの数は推定10億匹と見積もられており、個体数の減少率は90%にのぼるとのことです。



by Brittany

ADF&Gは(PDFファイル)発表の中で、「当局は、この決定を下す前にカニ業界の関係者からの意見を全て評価し、慎重に検討しています。また私たちは、カニ漁の中止が漁師や産業、地域社会に大きな影響を与えることを理解した上で、それらの影響とカニ資源の長期的な保全と持続可能性の要請とのバランスを取らなければなりません。こうした事情を鑑みるに、ベーリング海におけるズワイガニの管理は、その資源の状態を踏まえると、保全と再生に焦点を当てざるを得ません」と述べて、難しい判断をにじませました。

アラスカ州でズワイガニが禁漁となったのはこれが初めてのことで、2021年から2年連続で禁漁となっているタラバガニとともに謎の消滅を遂げた大量のカニの行方について、地元の漁業関係者たちは頭を悩ませています。

専門家は、病気や気候変動が主な理由として考えられると指摘しています。アメリカ海洋大気庁によると、アラスカはアメリカで最も急速に温暖化が進んでいる地域で、年間何十万トンもの氷が減少しつつあるとのこと。これは低温の環境を好むカニにとっては致命的な問題です。

ADF&Gの研究員であるベン・ダリー氏は「ここ数年、ベーリング海では温暖な状況が続いており、寒冷な環境に適応した種に反応が見られます。これらの生き物は、さながら炭鉱のカナリアのように、冷水を必要とする他の種に危険が迫っていることを警告する指標となります」と話しました。



たった2年の間にカニが以前の1割まで減ってしまうという事態に、業界からは懸念の声が上がっています。アラスカのカニ漁師が組織する業界団体のAlaska Bering Sea Crabbersで事務局長を務めるJamie Goen氏は「アラスカの象徴とも言えるカニ漁業と、それを生活の糧にしている勤勉な漁師や地域社会にとっては、まさに前例のないやっかいな時代です。カニ資源の回復のために有効な保護措置が行われないので、2代目や3代目のカニ漁師は廃業するほかないでしょう」とコメントしました。