加齢による物忘れと認知症の物忘れの違いはご存知ですか?医師が監修!

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加齢とともに増加する「物忘れ」を一度は経験したことがある方も多いのではないでしょうか。

「何かしようと思っていたのに、すっかり忘れてしまった」「久々に会った知人の名前が思い出せない」ということもあるかもしれません。

加齢による物忘れの場合、「何かを忘れたことに気付ける」のが特徴です。しかし、認知症の場合には、何かを忘れたこと自体を忘れてしまいます。

今回は、加齢による物忘れと認知症の物忘れの違い・認知症の物忘れの特徴・物忘れを防ぐ対策まで詳しく解説します。

加齢による物忘れと認知症の物忘れの違い


物忘れは認知症だけではなく、加齢によって生じることもあります。では、加齢による物忘れと認知症の物忘れの違いにはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、加齢による物忘れと認知症の物忘れの違いについて確認しましょう。
まず、加齢による物忘れで多いものとしては、忘れたことを思い出そうとするパターンです。例えば、以下のようなケースが挙げられます。

買い物先で何を買うか忘れて思い出そうとする

何かを取りにいったものの、忘れてしまい思い出そうとする

相手の名前を忘れて思い出そうとする

一方、認知症のもの忘れの場合、「何かを忘れてしまった」こと自体にも気付かないのが特徴です。具体的には、以下の様なパターンです。

ご飯を食べたこと自体を忘れる

約束の内容ではなく、約束したこと自体を忘れる

普段通っている道が分からなくなる

自分や相手が誰なのか分からなくなる

また、加齢に伴う物忘れの場合には物事に対する記憶障害のみがみられますが、認知症では物の使い方が分からなくなる・順序立てて行動を行うことが困難になるなどの症状も特徴的です。例えば、ペンの使い方が分からなくなる・料理の手順が分からなくなるといったことがみられます。

認知症の物忘れの特徴


認知症による物忘れにはいくつかの特徴があります。ここでは、3つの特徴的な症状について解説します。

日付や曜日が分からない

現在の「年月日・時間・季節」などが分からなくなることは認知症の特徴的な症状の1つです。この他にも、ここがどこなのか・何をしているのか・自分が何歳なのかといったことが分からなくなってしまいます。これを「見当識障害」といいます。
見当識障害が起こった場合、季節に合わない服を着たり道に迷ってしまったりすることもあるでしょう。また、自分や相手が誰なのか分からなくなることで、知らない人を家族と勘違いするなどの症状もみられます。

同じことを何度も聞く・言う

認知症では、新しいことを覚えるのが困難になるのも特徴です。そのため、同じことを何度も聞く・言うなどの症状が現れます。例えば、つい数分まえに食事をしたにもかかわらず、「ご飯はまだ?」と聞くなどです。
認知症による記憶障害では新しいことをすぐに忘れてしまいますが、比較的昔の記憶に関しては覚えていることが多いです。そのため、亡くなった家族がまだ生きていると思い、会いに行こうとすることなども考えられるでしょう。

慣れているはずの道で迷ってしまう

先にも述べましたが、認知症では「今自分がどこにいるのか」が分からなくなってしまうことがあります。それにより、慣れているはずの道を間違えてしまったり道に迷ってしまったりすることも特徴です。さらに、「自分がなぜここにいるのか」も分からなくなり混乱してしまうこともあるでしょう。

数分前や数時間前の出来事を忘れる

認知症では比較的昔の記憶は残っているものの、数分前や数時間前の出来事を忘れるという特徴もあります。例えば、つい数分前に歯磨きをしたことを忘れて再び歯磨きを始めるなどです。
また、自分で何かをメモに残しておいても、メモしたこと自体を忘れてしまうこともあるでしょう。さらに、自分でメモを残したものの、「誰が何のために書いたメモなのか」ということも判断できなくなってしまいます。

認知症の物忘れを防ぐ対策


認知症による物忘れを防ぐためには、いくつかの方法があります。これを行えば認知症にならないというわけではありませんが、進行を遅らせる効果が期待できるでしょう。

睡眠習慣を整える

睡眠習慣を整えることで認知症による物忘れが防止できます。まず、睡眠が不足した場合、アルツハイマー型認知症のリスクが上がることが明らかになっています。逆に、良質な睡眠を心がければ、ある程度進行を遅らせる効果が期待できるでしょう。睡眠を整えるためのポイントは、以下の通りです。

毎朝決まった時間に起きる

起床したらすぐに日光を浴びる

バランスの良い食事を心がける

適度に運動する

就寝の3時間前に入浴する

30分の昼寝をする

寝る前にテレビ・パソコン・スマートフォンを使用しない

まずは毎日決まった時刻に起床し、日光を浴びることが大切です。生活リズムの乱れは日光を浴びることでリセットされるといわれています。朝起きたらすぐにカーテンを開ける習慣を付けると良いでしょう。
また、睡眠の質を保つためにはバランスの良い食事や適度な運動も重要です。しっかりと栄養を摂り、活動的に過ごしてみてください。なお、30分の昼寝が認知症のリスクを下げるというデータがあります。午後3時までに30分程度の昼寝を取り入れるのもおすすめです。
その他、入眠しやすくするためのポイントとしては、就寝3時間前に入浴することや寝る前にスマートフォンなどを使用しないことも挙げられます。良質な睡眠を確保して、認知症による物忘れを予防してみてはいかがでしょうか。

知的行動を習慣化する

日常的に知的行動を取り入れることで認知症の予防に役立つといわれています。知的行動とは、いわゆる「脳トレ」です。ここでは、いくつかの知的行動をご紹介します。

折り紙

料理

シルエット当てゲーム

点つなぎ

パズル

計算

五感をフル活用して脳に刺激を与えるものであれば、どのようなものでも構いません。例えば、パズルや計算ドリルなども手軽に行える方法です。その他、料理もおすすめです。
料理は、手順を計画して遂行する必要があるため良い脳トレとなります。ポイントは習慣化することですので、毎日行いやすい知的行動を生活に取り入れてみてください。

食習慣を見直す

認知症は生活習慣病との関連が示唆されています。例えば、高血圧・糖尿病・脂質異常症などです。食生活を見直し、生活習慣病を改善することで認知症の発症を遅らせる効果が期待できます。具体的には、以下のような点に気を付けると良いでしょう。

1日3食欠かさず食べる

よく噛んで食べる

主食・主菜・副菜をバランスよく摂る

菓子類や果物など糖分の多い食べ物の摂りすぎに注意する

アルコールの摂りすぎに注意する

乳製品など脂肪分の多い食べ物の摂りすぎに注意する

間食や就寝前の飲食を控える

1日3食を欠かさずにバランスよく摂ることが基本です。早食いを避け、よく噛んで食べることで満腹感が得られ、食べすぎ防止にも役立ちます。
また、フルーツやヨーグルトは健康に良いイメージを抱く方も多いでしょう。
しかし、それらも摂りすぎには注意が必要です。1日に摂取する果物は片手に乗る程度、ヨーグルトや牛乳は合わせて200g程度におさえるようにしてください。
なお、アルコールの摂りすぎにも気を付ける必要があるでしょう。ビールであれば1日当たり500mⅼ、日本酒であれば1合程度が適量です。食生活は、健康維持に欠かせないものです。食生活に乱れを感じるようであれば、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。

すぐ病院に行ったほうが良い「耳が痛い」症状は?

突然もの忘れ症状が起こり、手足の筋力低下やめまいなどがある場合

危険な行動があり、それを抑える事が難しい場合

これらの場合には、すぐに病院受診しましょう。

行くならどの診療科が良い?

主な受診科目は、内科、脳神経内科、脳神経外科、精神科です。

問診、診察、血液検査、髄液検査、画像検査(CTやMRIなど)などを実施する可能性があります。

病院を受診する際の注意点は?

持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。

患者本人の様子をよく知る人と一緒に受診してください。身近で見ている人だからこそ気づくことが、診断するための重要なヒントになる事があります。

治療をする場合の費用や注意事項は?

保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。

まとめ


「最近、自分自身の物忘れが増えた気がする」「家族が何度も同じことを聞いてくる」などで悩んでいる方は少なくありません。

実際に、加齢に伴う物忘れは多くの方が経験することです。しかし、数分前に話した出来事を忘れてしまうような場合には、認知症による物忘れの可能性が考えられるでしょう。

認知症は進行性の病気のため、症状が進めば、自分が誰なのか分からなくなってしまったり道に迷ってしまったりすることもあります。

なお、認知症による物忘れであっても、進行を遅らせる方法はいくつかあります。規則正しい生活や知的行動により脳へ良い刺激を増やすことで、病気の進行を緩やかにすることが可能です。

認知症には薬物療法などもありますので、気になる症状があれば、専門機関を受診するようにしましょう。

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せん妄

参考文献

認知症の中核症状(長寿科学振興財団)

認知症の予防(長寿科学振興財団)