川崎重工業、H3ロケット試験機1号機のフェアリングを出荷 2022年度中に打ち上げ予定
川崎重工業株式会社は、日本の新型ロケット「H3」の試験機1号機に使用される衛星フェアリングを鹿児島県にある種子島宇宙センターに向けて出荷したと発表しました。衛星フェアリングとは、ロケットの先端に取り付けられる衛星や搭載物を保護するためのカバーを指します。今回出荷されたフェアリングは長さが短いショートタイプで、サイズは全長約10.4m・直径約5.2mです。
【▲ H3ロケット試験機1号機用フェアリング。写真左側の構造物は衛星搭載アダプタ(Credit: 川崎重工業)】
川崎重工業が開発・製造したH3ロケットのフェアリングは、同社岐阜工場での設計と部品製造の後、兵庫県にある播磨工場にて組み立てられました。出荷されたフェアリングは、種子島宇宙センターでH3ロケットの運用を行う三菱重工業株式会社へ納入され、H3ロケット試験機1号機に組み込まれます。同機は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)を搭載して打ち上げられる予定で、2022年度中の打ち上げを目指して準備が進められています。
【▲ 大型ロケット組立棟から移動するH3ロケット(Credit: JAXA)】
川崎重工業は、1993年にH-IIロケット用の衛星フェアリングを納入して以来、「H-II」ロケット7機、「H-IIA」ロケット45機、「H-IIB」ロケット9機と、合計61機分の衛星フェアリングを製造し、日本のロケット運用を支えてきました。また、固体燃料ロケット「イプシロン」ロケット6機分の衛星フェアリングも同社が製造を行っています。
衛星フェアリングは、打ち上げ時の風圧や空力加熱、空気との摩擦熱から衛星を保護します。H3ロケットのフェアリングは全長10.4mの「ショート」と全長16.4mの「ロング」、ロングの直径を5.2mから5.4mに拡大した「ワイド」という3種類のサイズがあり、搭載する衛星の大きさなどによって使い分けられます。また、H3のフェアリングではロング形態の下部を外すとショート形態になる仕様が採用されており、コンポーネントを共通化することで打ち上げの柔軟性が確保されるとともに開発費が抑えられています。
【▲ H3ロケットのフェアリングの比較図。左:ロング、右:ショート(Credit: JAXA)】
H3ロケットに搭載される先進光学衛星「だいち3号」は、陸域観測技術衛星「だいち」の光学ミッションを引き継ぐ地球観測衛星です。「だいち」よりも大型化、高性能化したセンサーを搭載しており、直下70kmという「だいち」の観測幅を生かしつつ、地上分解能はさらに高い直下0.8mを実現しています。「だいち3号」で取得されたデータは防災や災害対策で活用されたり、様々な観測バンドを用いて、植生域の環境モニタリングに活用される予定です。
Source
川崎重工業株式会社 - H3ロケット試験機1号機用フェアリングを出荷川崎重工業株式会社 - ANSWERS(アンサーズ)H3ロケット用フェアリングJAXA第一宇宙技術部門 - サテナビ/だいち3号(ALOS-3)
文/出口隼詩