日本エイサーから、環境に配慮したサステナブルな製品シリーズ「Acer Vero」が登場した。Acer Veroシリーズでは、ノートPCやディスプレイなどさまざまな製品をラインナップしているが、今回はノート「Aspire Vero PCAV15-51-H76Y/F」を取り上げる。すでに発売中で、直販価格は219,800円。

日本エイサー 「Aspire Vero PCAV15-51-H76Y/F」

再生プラスチックを利用した無塗装ボディは質感も良好

今回取り上げる「Aspire Vero」は、Acer Veroシリーズの中でも中核となる製品だ。それもワールドワイドでさまざまなプロモーションを展開するなど、Acerグループとしてもかなり力が入っている。それだけに、単なる環境に配慮した製品とは一線を画す仕様となっている。

最大の特徴は、再生素材の活用を強く進めている点だ。他社も含め、筐体内部のパーツなど目につきにくい部分に再生素材を採用する例は多く見られる。それに対しAspire Veroでは、外装やキーボードのキーキャップなど、利用者の目や手に触れる部分にも再生素材を採用。その素材は海洋プラスチックなどを再利用した再生プラスチックで、その割合もキーキャップが50%、本体天板・底面・ディスプレイベゼル部が30%と非常に高い。

ボディ素材やキーボードのキーキャップなど、さまざまな部分に再生プラスチックを採用

通常、再生プラスチックは、一般的なプラスチックに比べて強度や耐久性で劣るため、強度が求められるノートPCのボディにはなかなか採用しづらい側面がある。しかしAcerは素材メーカーと密接に協力し、再生プラスチックを本体素材に採用しても、十分な強度や耐久性を実現できたとのこと。

確かに、ボディを手にして本体をひねったりしてみても、十分な強度を備えていることが確認できる。しかも容易に再利用できることを考えて、ボディは完全無塗装。この他、梱包素材にも再生紙を最大85%利用するなど、細部にわたって環境を意識した仕様を追求している。

天板、底面、ディスプレイ面に再生割合30%の再生プラスチックを採用。そのうえで、強度もしっかりしている

ただ、再生プラスチックで無塗装のボディとなると、質感が気になるかもしれない。低価格なノートPCなどでよく見られるように、プラスチックの質感がむき出しのボディは非常に安っぽく感じるものだ。しかしAspire Veroのボディは、濃いグレーやイエローなどの細かなマーブルがちりばめられた、「ボルケーノグレー」と呼ばれる独特な本体カラーが採用されており、いかにも安っぽいという印象が少なくなっている。

カラーは濃いグレーやイエローなどの細かなマーブルがちりばめられた「ボルケーノグレー」。表面に細かな凹凸のエンボス加工を施すことで、再生プラスチックで無塗装のボディながら、なかなかの質感を実現

本体正面

左側面

背面

右側面

また、底面やディスプレイ後方のゴム足は鮮やかなイエローで、その部分がいいアクセントになっている。ボディ表面には布地のような細かな凹凸がエンボス加工されており、手にした時のややざらざらとした感触も面白い。このように、さまざまな部分で環境に配慮しつつ、デザイン性にもこだわっている点は大いに評価したい。

底面

ゴム足の鮮やかなイエローがいいアクセントになっている

Reuse、Reduce、Recycledを意識し、キーボードのEとRキーの表記は逆向き、かつイエローで刻印

本体正面にAspire Veroのロゴが彫り込まれている

スペックは申し分なく、エコを意識した専用アプリも搭載

今回使用したAspire Vero PCAV15-51-H76Y/Fの主な仕様は、以下にまとめたとおりだ。CPUは最新世代ではないが、Intel Core i7-1195G7を採用し、メモリは標準で16GB、内蔵ストレージは容量512GBのPCIe 3.0 SSDと、申し分ないものとなっている。

そのうえでAspire Veroには、専用アプリ「VeroSense」を搭載し、Ecoモードや、Eco+モードといった省電力モードへかんたんに切り替えられるように配慮。電力消費を抑えて利用したり、バッテリ駆動時間を延ばすといった、エコを意識した使い方も手軽にできるようになっている。

専用アプリ「VeroSense」を搭載し、Ecoモードや、Eco+モードといった省電力モードに簡単に切り替えられる

通信機能としては、IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)準拠の無線LANとBluetooth 5.1を搭載。生体認証機能は、タッチパッド左上角に指紋認証センサーを搭載する。

インタフェースとしては、左側面に電源コネクタ、ギガビットイーサネット、HDMI、USB 3.2 Gen1 Type-A×2、USB 3.2 Gen1 Type-C×1を、右側面に3.5mmオーディオジャック、USB 2.0×1をそれぞれ用意。USB Type-CはThunderbolt 4対応ではなく、USB PD準拠の電力供給にも非対応となっている点は残念だが、ポート類は必要十分という印象。サイズは約363.4×238.5×17.9mmで、重量は約1.8kg。15.6型のノートPCとして標準的なサイズと重量だ。

左側面に電源コネクタ、ギガビットイーサネット、HDMI、USB 3.2 Gen1 Type-A×2、USB 3.2 Gen1 Type-C×1を用意。USB Type-CがThunderbolt 4非対応、USB PD非対応な点は少々残念

右側面には3.5mmオーディオジャックとUSB 2.0×1を用意

ディスプレイ上部に約90万画素のWebカメラを搭載

タッチパッド左上角に指紋認証センサーを搭載する

フルHD表示の15.6型ディスプレイを搭載

ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示対応の15.6型液晶を採用している。

IPSパネルを採用しているため視野角は十分に広く、大きく視点を動かしても輝度ムラや色ムラはほとんど感じられない。表面は非光沢処理となっているので、外光の映り込みも気にならず、文字入力などの作業も快適に行える。

1,920×1,080ドット表示対応の15.6型液晶ディスプレイを搭載。IPSパネルのため広視野角で、このクラスとして標準的な発色性能を備える

発色性能は特に言及はないものの、このクラスのディスプレイとしては標準的な印象。写真や動画も十分に鮮やかな発色が確認できる。広色域表示対応のディスプレイと比べると見劣りするかもしれないが、ちょっとしたデジカメ写真のレタッチや動画視聴といった用途であれば、全く不満はないだろう。

パネル表面が非光沢処理のため、発色の鮮烈さは光沢液晶に劣るが、写真や映像も申し分ない鮮やかさで表示される。外光の映り込みが少ない点も嬉しい

一方、ディスプレイ周囲のベゼルはやや太めとなっている。近年は狭額ベゼル仕様のノートPCが増えている中、少々古くさく感じる。おそらく、再生プラスチックを採用し十分な強度を確保する上で必要だったものと思われる。もちろん、使う上で大きな問題になることはない。

ディスプレイは130度ほどまで開く

キーボードはテンキー付きでバックライトも搭載

キーボードは、アイソレーションタイプの日本語キーボードを搭載。標準でテンキーも搭載しているため、数字入力も快適だ。主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチで、ストロークも約1.5mmを確保。打鍵感はやや硬めで、クリック感もしっかりしている。また、標準でバックライトを搭載しているので、暗い場所でも快適なタイピングが行える。

キーボードはアイソレーションタイプの日本語仕様で、テンキーも標準搭載

主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチを確保。ストロークも約1.5mmで、打鍵感も良好だ

キーボードバックライトも標準搭載している

配列自体は比較的標準的だが、スペースキー左右とEnterキー付近の一部キーが、もともとあったキーを分割して搭載している点は少々残念。これは英語配列のキーボードをベースに日本語化しているためだが、分割されたキーは隣のキーと隙間を空けずに配置されていることで、他のキーに比べてミスタイプが起こりやすい。このあたりはコストダウンの影響と考えられるが、利便性を考えると非常に残念な点だ。

スペースキー左右のキーは、もともと1つのスペースキーを分割して搭載

Enterキー付近の一部キーも、キーを分割して搭載している部分がある。コストダウンの影響だが、残念な仕様だ

ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを搭載。面積は十分に広く、ジェスチャー操作も快適だ。また、わずかに右寄りではあるが、キーボードのホームポジションに近い位置に搭載しており、利便性に優れる点は評価できる。

クリックボタン一体型のタッチパッドは面積が広く、ジェスチャーも快適だ。左上に指紋認証センサーを搭載する

第11世代Intel Core搭載で性能面に不満なし

では、性能をチェックしていこう。なお、ベンチマークテストは、CPUの性能が最大限引き出せるように、専用アプリ「VeroSense」で動作モードを「パフォーマンスモード」に設定して実行した。

まずはじめに、PCMark10の結果だ。下に示したように、結果はなかなかの高スコアとなっている。最新世代の第12世代Coreプロセッサ搭載PCに比べると見劣りする部分もあるが、これだけの性能が発揮できていれば、ほとんどの作業を快適にこなせるはずだ。

PCMark 10の結果。申し分ない高スコアが得られており、快適な動作が期待できる

続いてCINEBENCH R23の結果だが、こちらも十分満足できるスコアが得られている。PCMark 10の結果同様に、第12世代Intel Coreプロセッサ搭載PCには敵わないが、マルチスレッド性能も十分に優れており、動画編集なども比較的快適に行えるはずだ。

CINEBENCH R23の結果。同クラスのPCと同等レベルの高スコアが得られており、CPUの処理能力に不安はない

3DMarkのWild LifeとTime Spyの結果も、同クラスのPCと同等のスコアが得られた。もともとゲーミング向けのPCではないものの、これだけのスコアが得られていれば、カジュアルゲームはもちろん、3Dゲームも表示設定を抑えれば十分快適にプレイできそうだ。

なお、高負荷時のCPUクーラーの騒音はやや大きく、多少耳障りに感じる。とはいえ、低負荷時にはほとんどCPUクーラーの音は聞こえないので、通常時には十分静かに利用できるだろう。

Wild Life

Time Spy。3DMarkの2種類のテストも、同クラスのPCとほぼ同等のスコア。3Dゲームも低負荷な描画設定にすれば十分快適にプレイできるはずだ

Aspire Veroはモバイル向けのノートPCではないが、念のためバッテリー駆動時間も計測してみた。PCMark 10に用意されているバッテリーテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用し、ディスプレイのバックライト輝度50%、キーボードバックライトをオフにして計測してみた。

結果は8時間13分と、まずまずの結果が得られている。これだけの駆動時間があれば、家庭内やオフィスなどで他の部屋に持って行って利用する場合でも、電源不要で安心して利用できるはずだ。

バッテリーベンチマークの結果は8時間13分と、15.6型の一般的なノートPCとしてはまずまずの駆動時間を記録。これなら家庭内やオフィス内モバイルも全く問題ないだろう

環境に配慮するだけでなく、PCとしての完成度も申し分なし

Aspire Veroは環境に配慮した仕様が大きな特徴ではあるが、今回見てきたように、本体デザインはなかなか良質で、スペック面も申し分なく、PCとしての仕様も十分満足できるものとなっている。環境への配慮とPCスペックの両面で高い完成度を誇る、魅力的な製品に仕上がっていると感じる。

価格は、Acer公式オンラインストアで219,800円と、特別安価な製品ではない。スペックがそれなりに充実していることや、再生プラスチックの採用が比較的高コストになることを考えると、妥当な金額ではある。ただ、同等スペックの競合製品の価格からすると、コストパフォーマンスはやや劣る印象で、今のところ環境への取り組みに賛同できるユーザーを中心に注目されると思われる。

それでも、他にはない環境に配慮した仕様はこれからのPCのあり方を示しているように思う。Aspire Veroのような製品が増えてくれば、コストも下がり、多くのユーザーが手に取りやすくなるだろう。Acerには今後もこの取り組みを継続してもらうのはもちろん、業界をあげた取り組みに繋がっていくことを期待したい。