『臨月で浮気されました』(C)KADOKAWA

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 結婚5年目に念願の第一子を妊娠し、幸せ絶頂の真っただ中、臨月で夫の不倫が発覚。家庭内別居状態での出産、子育てから、再び向き合い、夫婦関係を再構築するまでの実体験を綴った漫画『臨月で浮気されました』(KADOKAWA刊)が話題だ。原作者の毒島麗子さんは、不倫発覚後の「地獄のような日々」の中、一番つらかったのは、「苦しい胸の内を吐き出せる場がなかったこと」と振り返る。不安を抱えるしかない苦悩について、話を聞いた。

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■「別れた方がいい」「なんで離婚しないの?」周囲から理解されない悩み

――旦那さんが浮気したのは、切迫早産で毒島さんが入院していた妊娠8ヵ月目のことだったそうですね。

【毒島麗子さん】1ヵ月半入院をしていたのですが、その間はトイレに行く以外は寝たきりの生活で、動けないし、何もできないし、しかも初めての出産で不安でしたから、身体的にも精神的にも本当につらかったんです。ようやく一時退院で自宅に戻ることができたとき、入院中に旦那が浮気していたことが発覚して…。私がしんどい思いをしている裏で、不倫をしていたのかと思ったら、もう怒りが収まりませんでした。

――LINEでの生々しいやりとりを発見した後、相手の女性と電話で話されました。相手に対しては、どういう思いを抱きましたか?

【毒島さん】旦那が独身のフリをしていたのなら、相手は被害者になるので、まだ救いはあったかもしれません。ですが相手は、既婚者だと知っていました。「知っててするか?」と、私にとって相手は“共犯者”のような感覚でしたね。あと、これは人によると思いますが、私は夫をすごく愛していたので、夫が一番悪いとわかってはいるけれど、夫より相手のほうに強い憎しみを抱いてしまいました。

――その後、相手と旦那さんの縁は切れたものの、家庭内別居状態になってしまいました。つらい想いを抱える中、「サレた側の悩みを吐き出せる場所が本当にないことを知った」という漫画内のセリフが印象的でした。

【毒島さん】すがるような思いで誰かに相談しても、「別れたほうがいい」とか「離婚しなさい」などと言われるだけですよね。ならば、話さないほうがいいやと思ってしまったんです。浮気されたからといって、そう簡単に離婚や別れを選択することはできないし、それだから苦しいのに、「離婚しない」と言えば「なんでしないの?」と言われるし、「許したんだね」って思われるのも嫌でした。

――気持ちが伝わりにくいですね…複雑な心境です。

【毒島さん】それに、リアルな友人は結婚式などで旦那にも会っていて、家族ぐるみで仲良くなっていました。そういう友人たちに、「ダメな夫」「浮気夫」という刻印を捺されたまま、今後付き合うのもしんどいなという気持ちもありました。母も離婚経験者だったので、母がいたらいろいろ話せたと思うんですけど…亡くなってしまっていたので、それもできなかったんです。

■“サレ妻”は負け組ではなく、つらさを乗り越えた「強い女の称号」

――産前産後の時期、苦悩をひとりで抱えるしかなかったというのは、本当につらかったと思います。おまけに旦那さんは、出産後も以前と変わらず、家事はもちろん育児もまったく協力してくれず…。毒島さんが一人で全部背負わっていました。

【毒島さん】浮気をしたことは許せないし、消せない事実です。でも、可愛い息子の誕生を喜んでくれていたので、ここから挽回しようとがんばってくれるものと期待して、子どものためにやり直そうと思ったんです。だけど、そううまくはいきませんでしたね(苦笑)。旦那はもともとクールなタイプなので、家事を手伝ってくれないのも、優しい言葉をかけてくれないのも当たり前でした。せめて、いい旦那じゃなくても、いい父親であってほしかったのに、「母親なんだから当たり前だろう」と子どものことは私にすべて押しつけて…。初めての子育てでストレスが溜まってしまったこともあって、口を開けば罵って、旦那とはぶつかることが増えました。

――そんな苦悩から一度は離婚を決意されますが、その後、再構築の道を選びました。その経験を綴ったInstagramは、「なぜ離婚しないのか」という批判も浴びたと聞きましたが、投稿を続けられたのはなぜですか?

【毒島さん】私と同じように、浮気されて悩んでいても相談する場所がない人が多すぎると実感したことが第一です。私がちょっとした受け皿になれるなら、その場を作りたいと思って始めたのですが、多いときは相談メールが1日100件くらい寄せられるんです。吐きだし場があるだけで、ぜんぜんつらさの重みは違うと感じたので、批判があっても継続したいと思っています。

――浮気されても離婚の道を選ばなかった実体験のエピソードは、同じ悩みを持つ人にとって参考になりますね。

【毒島さん】SNSでつらい気持ちを吐きだす場を探したとき、「離婚してよかった」という発信はたくさんあるんです。でも、離婚しないでよかったという声は本当に少なくて、離婚したくなかった私は居場所がないなと思っていました。自分の発信が、再構築したい人にとってのうまくいっているモデルケースとなれたらうれしいですね。

――最後に、浮気をされて悩んでいる人たちに、メッセージをお願いします。

【毒島さん】浮気や不倫は、絶対に許されるものではありません。でも、不倫をされたからといって、離婚することだけが答えではありません。1回不倫をした旦那は一生するとは限らないし、変わってくれる人もいます。だからまず、自分がどうしたいのか。自分の気持ちを問いただしてみて、本当に離婚したければすればいいし、やり直したいなら頑張ればいい。“サレ妻”という肩書は負け組ではありません。私はつらいことを乗り越えた、強い女の称号だと思っています。