女優・声優・歌手として、テレビや舞台等で活躍中の戸田恵子さん。そのキャリアのなかのライフワークといえる作品で、アンパンマンの声を演じているアニメ『それいけ! アンパンマン』シリーズは34年目を迎えます。6月24日には、33作目となる映画『それいけ! アンパンマン ドロリンとバケ〜るカーニバル』が公開。64歳という年齢にとらわれず生き生きと輝いている戸田さんに、アンパンマンへの深い思いや、日々の暮らしで大切にしていること、50代から続けている生きがいについて、たっぷりお話を伺いました。

映画『それいけ! アンパンマン ドロリンとバケ〜るカーニバル』戸田恵子さんインタビュー

長年にわたりアンパンマンの声を演じている戸田さん。改めて戸田さんにとって、アンパンマンはどんな存在なのか尋ねると「宝物だと思っています」という答えが。

アンパンマンへの思いやライフワークについてじっくりと語ってくれた戸田恵子さん<写真>

「最初はほかのお仕事と一緒でごく普通にスタートして、だれもこんなに長く続くとは予想していなかったと思います。でも1年、3年、5年とやっていくうちに、アニメだけでなく、ぬいぐるみや様々なグッズが街中にあふれてきて、ベビーカーにキャラクターがぶら下げられているのを見かけたり、小児病棟の壁に絵が貼ってあったり…。とにかくみんなのところにアンパンマンが届いているということに、だんだん気がついたんです。
それで、私たちチームはとても大変なお仕事をさせていただいているんだなと思うようになりました。少し大げさですけど、みんなそれぞれ使命のようなものを感じていて、やなせたかし先生のつくられたアンパンマンの世界観を丁寧に伝えていきたいと思っています」

●弱っている人に手を貸したり寄り添ったりする優しさを伝えたい

そんな戸田さんが、アンパンマンの声を演じる上でなによりも大切にしてきたのは「優しさ」を伝えること。

「戦うアンパンチもいいんですけど(笑)、私は優しく語りかけることを大事にしています。アンパンマンの優しさの最たるものは、お腹をすかせている子に顔をちぎってあげること。やなせ先生の時代はひもじさを救うことがいちばんの正義だったと思いますが、今は心を病んでいたり弱っていたりする人も多いですよね。そんな人に手を貸したり寄り添ったりする優しさみたいなものを伝えるのが大事なのかなと思っています」

●年齢を重ねて、時間には限りがあるということを実感

現在64歳の戸田さん。日々の生活で大切にしようと意識しているのは「丁寧に暮らすこと」だそう。

「今年9月に65歳になるのですが、先日、肺炎球菌ワクチン接種の通知が送られてきて。改めて自分が年齢を重ねたことを突きつけられました(笑)。そんな風にだんだん年齢を感じることが増えるなかで、東日本大震災があって、コロナ禍になって、その間にもいろいろな悲しい別れがたくさんあって…。本当に時間には限りがあるということを実感しています。もう明らかに若いときとは違うので、癒やしの時間をつくったり、丁寧に暮らしたりしていかないとダメだなと思っていますね。

元々植物は好きなのですが、最近はさらに部屋にグリーンが増えてきています。水やりが大変で忙しいけど、緑に囲まれているのが気持ちいいんです」

最愛の母の死がきっかけで始めたボランティア

そんな戸田さんの元気の素のひとつといえるのが、50代から続けている子どものための映画祭“キネコ国際映画祭”のディレクターとしての活動と、ダウン症の子どもたちのエンターテインメントスクールの支援。始めたきっかけは最愛の母の死だったそう。

「50歳を前に母を亡くしたとき、自分のなかで大きな変化がありました。それは、母子家庭の2人暮らしで昨日まで同じ部屋にいた人がいなくなる喪失感と、間違いなく命には限りがあるという実感。50歳でそう思うのは少し早かったのかもしれないですけど、これからあと何本の舞台に立てるだろう、何冊の本が読めるだろう、どんな仕事ができるだろうってことを考えたら、もう大してできないなと。そう思ったときに、今まで生きてきたなかで得たいろんな知恵を持って、なるべく素敵なことをやっていきたいと思ったんですよね。それで、今までできなかったボランティアを始めました」

●仕事以外にも糧になるものがあれば、生きるよろこびを感じられる

仕事以外の時間を費やしているため、大変なことも多いそうですがそれは戸田さんの生きるよろこびにもなっています。

「15年続けている映画祭もやるたびに“大変だ〜”と思うのですが(笑)、終わると“やっぱりやってよかったな”と感じるんです。ダウン症の子どもたちとも、ドラマで出会って18年くらいになりますが、かわいくてしょうがないんですよね。継続するのはなかなか難しいことなので、自分でもよくここまでやってこれたなと思うこともあります。私自身もそうなのですが、常に仕事以外になにか糧になるものがあると、生きることのよろこびみたいなものを感じられるんじゃないかなと思います」

34年間アンパンマンとして「愛と勇気」を届けてきた戸田恵子さん。これからも公私ともに子どもたちを元気にする活動を続けていきます。

「アンパンマンじゃないけど、よろこんでもらえることがあれば、できる限り力を出していきたいです」

●最新作で大好きなシーンは「アンパンマンがドロリンに寄り添う」場面

そんな戸田さんが声優を務める映画『それいけ! アンパンマン ドロリンとバケ〜るカーニバル』が6月24日に公開。今回の舞台はバケールカーニバル! どんなものにも変身できる、かわいくて愉快なオバケたちの街で開催される最高に楽しいお祭りです。子どもたちは遊園地のようでワクワクするバケールカーニバルを心から楽しみます。

ところが、変身が苦手なオバケの男の子・ドロリン(声:北川景子)だけは楽しむことができず、ひとりぼっちに…。そんなドロリンはクリームパンダと出会い、ときにはぶつかり合いながらも絆を深めていきます。彼らは世界一の変身パワーを秘めたまっくろマントを探しに“おぞましの森”へと向かいますが、そこにばいきんまんが現れてマントの力でバケールカーニバルをめちゃくちゃにしようと大暴れ! アンパンマンたちはばいきんまんから、楽しいカーニバルを守ることができるのでしょうか? みんなが笑顔になる大冒険がはじまります。

「ドロリンがうまく変身できないことに落ち込んで、そこから這い上がっていく姿がとても感動的。アンパンマンがドロリンの隣に寄り添ってお話するところは、とても大好きなシーンです」と戸田さん。

 

【作品情報】

映画『それいけ! アンパンマン ドロリンとバケ〜るカーニバル』6月24日(金)全国ロードショー

監督:矢野博之 脚本:葛原秀治 原作:やなせたかし(フレーベル館刊)
声の出演:アンパンマン/戸田恵子 ばいきんまん/中尾隆聖 ほか
声のゲスト出演:ドロリン/北川景子 町長と側近Aと側近B/ジャングルポケット

公式HP:https://anpan-movie.com/2022/
公式Twitter:@anpanman_movie