『いのちの科学の最前線』チーム・パスカル著/朝日新書/INSIGHT NOW! 編集部
「理系」と呼ばれる分野の取材と執筆を得意ジャンルとするライター集団「パスカル」を率いるINSIGHT NOW!ビジョナリーの竹林 篤実氏が、6月13日に朝日新書から『いのちの科学の最前線 生きていることの不思議に挑む』を出版されました。
以下、竹林 篤実氏からのご紹介です。
改めて「いのち」とは何でしょうか。あるいは人は、なぜ生きているのでしょうか。実はこの問いに対して、生命科学の最前線にいる研究者たちは一様に「まだ何もわかっていない」と語ります。
もちろん、細部については様々な事実が明らかになっています。細胞内でどうやってエネルギーがつくられているのか。細胞内の新陳代謝は、どのように行われているのか。最近の話題なら、新型コロナウイルスに対するワクチン開発が驚くべき速さで進められました。この背景となっているのが、mRNAに関する最新の知見です。ところが生命科学の最前線では、DNAでもmRNAでもなく、ノンコーディングRNAに注目が集まっているのです。
そもそも、人の体にはどれだけの細胞があるのでしょう。以前はざっと100兆個ぐらいといわれていました。それがいつの間にか60兆個とされるようになり、今では37兆2000億個が定説となっています。ただ、その根拠は、2013年に発表された1本の論文「人体の細胞数の推定」だけです。もちろん、実際に人の細胞を一つずつ数えた人など、この世にはいません。そもそも生命がどのように誕生したのかも明らかにはなっていないのです。
要するにわからないことだらけ、というのが生命科学の最前線です。2016年に大隅良典博士が「オートファジーの仕組みの解明」によりノーベル生理学・医学賞を受賞した。本書では第二のオートファジー「GOMED」の存在を明らかにした研究者が紹介されています。オートファジーの研究がノーベル賞に値したのだから、「GOMED」も同じ価値が認められる可能性もあります。
「いのち」についての研究、その最前線でわかっている内容を知れば、現時点でわかっていないテーマが浮き彫りにされます。生命の神秘に興味のある方には、きっと刺激に満ちた一冊となるはずです。
同書の著者チーム・パスカルは、理系ライターの集団です。その代表を務めるのが、以前からINSIGHT NOW!とも関わりのある竹林篤実さん。今回紹介する新書でも、竹林 篤実氏は全10編のうち3編を担当されています。是非読んでみてください。