栃木県は災害が少ないと言われてきましたが近年、多くの大規模災害が発生しています。

今回、災害への備えや災害が起きた時の対応を「地域全体」で行うための事前の計画づくりについてお伝えします。

モデル地区に選ばれた宇都宮市の地区を取材し、地域の命を守る鍵となる防災計画の重要性を考えていきます。

2011年の東日本大震災や2015年の関東・東北豪雨、2019年の東日本台風など近年、相次いで大規模災害が県内を襲い、死者が出たり、広い範囲で家屋が倒壊、浸水したりして被害は甚大化しています。

こうした大規模災害が起きた時に被害を減らすことつながるのが自分の命は自分で守るという「自助行動」に加え地域で手を取り合って共に助け合う「共助行動」です。

これらを行うために事前に備え、そして災害が発生した時に「地域のみんな」で迅速に命を守る行動を取れるよう、県内でも各地で地区防災計画の策定が進められています。

県消防防災課 小野政則さん:「事前に地域のみんなで話し合い災害への備えや発生時に地域のみんなで適切な行動をとるための計画。計画をつくることで自助・共助の意識が高まり被害の軽減や迅速な復旧・復興につながる」

県は2月、地域の防災リーダーや地域を支援する立場の人向けに「地区防災計画策定マニュアル」を作り、まだ策定していない地域へ普及させようとしています。

県消防防災課 小野政則さん:「地域の特性に応じて自由に作れる計画作成後も防災活動や見直しを行い継続した取り組みが重要」

街の東側に鬼怒川が流れおよそ3,800世帯が暮らす宇都宮市瑞穂野地区です。

東日本台風後の2020年8月、県が地区防災計画のマニュアルを策定するためのモデル地区に選ばれました.

この地区の防災会の会長を務める坂本保夫さんです。

地域のいのちを守る防災計画を作成するため、住民らをまとめてきました。

瑞穂野地区防災会 坂本保夫会長:「計画は20年前からあったが台風19号の田川の被害を見て鬼怒川は大丈夫だろうか?その時に県の支援があったのが計画策定のきっかけ」

自治会や消防団、婦人会など地域住民らで構成される防災会が計画の作成に着手したのが2020年の10月。

しかし、コロナ禍の影響で思うように進みませんでした。

瑞穂野地区防災会 坂本保夫会長:「コロナ禍で作成までの期間が伸びてしまった。期間が長くなったことで住民の士気が下がり。それを維持するのが苦労した」

何度も会議や意見交換を重ね本来であれば去年の3月までに完成するはずが、計画が出来上がったのは去年の5月末。

それぞれの班ごとに役割の分担を明確にして時系列の行動イメージをまとめました。

そして、これを基にしたハザードマップや災害の備えなどが分かりやすく記載された水害用の防災マニュアルをすべての世帯に配布。

去年12月には計画の作成後、初めて防災訓練を実施し、意識の共有をはかりました。   

瑞穂野地区防災会 坂本保夫会長:「相手のことを知ることで自分のことが理解できる。できるときにできることをみんなでやることが大切」

いつ起こるか分からない自然災害の被害を最小限に抑えるためには事前の備えと、その後の計画を明確にしておくことが大切なのは言うまでもありません。

それに加えて、住民主体で地域のつながりを強めることが鍵となります。

県消防防災課 小野政則さん:「地域の防災活動について話し合う機会を設けることで地域コミュニティの維持・活性化に繋がり災害に強いまちづくりを目指すことができる。地区防災計画策定マニュアルを使って取り組んでほしい」